88 / 335
第7章 厄災
205. ハリーの夢 ---騒がしい妖精---
しおりを挟む
学園が始まった。
皆からは色々な話が届き始めている。
スティーブ君は早速オックス領に聞きに行ってくれたらしい。どんな風にうまく言ったのかは分からないけれど、その話は子供の頃に聞いた事があるとお祖父様がおっしゃっていたらしく、また改めて聞きに行くとの事だった。
やはり結構記憶に残っている人がいるんだな。
ミッチェル君は最初にお父様に話をしてしまったそう。それで改めて書庫とか調べられる所は調べていいと許可をもらったとか。うん。とてもミッチェル君らしい。魔法に詳しいお年寄りにも聞いてみるって言っていたけど、なんとなくすごい人のような気がするな。だって、ミッチェル君だから。
トーマス君は元ハーヴィンに知り合いがいて、トーマス君の領に移ってきているので聞いてみるって。魔物が一番多く出て一番荒れて、砂漠化している土地だから何だか気になるって言っていた。
レナード君の所はフィンレーと同じくらい古い家なので、王国とか近隣の歴史のようなものを調べているって。レナード君の領は西の国との境の領だから何かこちらでは伝わっていないようなものがあるかもしれないな。
同じくもう少し南寄りの西の国の境に領があるエリック君も歴史関連や地図、それから古くからある伝承話のようなものを調べるって連絡が来た。
ユージーン君は交易の関係者から西と東の英雄譚を集めてみるって言っていた。
そして、数日分のノートも送ってくれた。なんでも西の国の魔道具で紙に書かれたものを写し取るというようなものがあるらしい。すごいなぁ。その魔道具を見てみたいな。
そして、クラウス君は曾祖父様とお話をしたそうで、王家が代々守っている所は複数あるという事を確認したらしい。でも詳しい事は言えないとか。う~~~~ん。なんとかもう少し粘ってみるような事が書かれていたけれどクラウス君ってあんまり交渉みたいなことは得意じゃないんだよね。が、頑張ってもらいたい。
それぞれがそれぞれに持ち帰ったものを元に動き出してくれているのがとても嬉しいと思う。
「僕も負けないようにがんばろう」
あえて口に出してそう言って、僕は部屋を出てルーカスに書庫へ行くことを伝えた。そして階段を降りると。
「エディ兄様、少しお話をしてもよろしいでしょうか」
ハロルドが居た。
-*-*-*-*-*-
再び部屋に戻ってマリーにお茶を頼む。
持ってきてくれたのは手でもつまめるような小さなお菓子と紅茶だった。
マリーが出て行ったのを見て僕は遮音の魔法をかけた。
「一応念のためにね」
「はい」
僕がそう言うとハリーはコクリと頷いた。
それにしてもいつもはほとんど温室での作業とか、お祖父様と外での魔法の勉強とかだったからあんまり意識をしていなかったけど、ハリーって随分大きくなったな。
剣術をメインにしているウィルの方が体格がいいから気がつかなかったけど、ハリーも結構大きい。
「あのさ、なんか全然関係ないけど、ハリーって今身長いくつなの?」
「身長ですか? そうですね。150ティンくらいですね」
「そ、そうなんだ。この前十歳になったんだよね?」
「ええ、7の月に十歳になりました」
うん、そうだよね。だって十歳の誕生日おめでとうってプレゼントを渡したもん。
「何だかサロンで水まき魔法を見せてもらったのがついこの間のようだよ。はぁ……」
「エディ兄様?」
「ううん。何でもない。何だか周りがどんどん大きくなるから、ちょっと悲しくなっただけ」
「ふふふ、そうですね。でも大丈夫ですよ。エディ兄様はいつまでもエディ兄様で居て下さい」
「ええ? もう少し伸びるよ。ハリーに負けないように頑張らなきゃ」
「はい」
ハリーは楽しそうに笑った。
「さて、ごめんね話を逸らして。ええっと、ハリーの話を聞かせて? もしかして夢を見た?」
僕がそう言うと笑みを引っ込めてハリーはコクリと頷いた。
「そうか。どんな夢?」
「それが、兄様の所に行ったけど話せなかったって」
「え? 僕の? 妖精が僕の夢に来ようとしていたの?」
「はい。何度か試したけどダメだったって」
「そ、そうか。それで、何を言いたかったんだろう?」
ハリーは普通にしていても妖精と話は出来るけれど、夢の中の方が姿も声もはっきりするんだって。
それで大事な事とか、ちゃんと伝えたい事があると夢に出てくるんだね。
「何だか最初はいつも美味しいのをもらうから話してみたかっただけみたいな感じだったんですが」
「う、うん」
「そのうちに何かお知らせをしたくなったとか」
「ええ! 何のお知らせだろう」
「それが、僕では今一つ要領を得なくて」
うう~ん、それは困った。
僕の部屋は沢山の結界があるし、妖精王の愛し子でもないからなかなか来て話をするというのは難しいんだろうな。だって、ハリーが来ているっていう時も、光さえ感じないし。
そう言うのはやっぱり加護の力なんだろうな。
「4.5人で入れ代わり立ち代わり喋るから余計分からないんですけど、何か伝えたい気持ちはあるみたいなんです。順番にっていうと順番を争う方に気持ちが行っちゃうみたいで」
「ふふふふふ、何だか可愛い」
僕は思わず笑ってしまった。妖精かぁ。本当に話せたらいいのにな。
「夢で伝えるのはどうしても難しいから、僕が言われた事を伝えるからって言って。今この辺に居るんです。僕にもう少し力があれば妖精の言葉をもっとちゃんと兄様に伝える事が出来るんですけど」
「大丈夫だよ。ハリー。今までにも妖精さんには色々とお世話になっているからね。また何かを教えてくれるっていうのはとても嬉しい。ああ、そうだ、ちょっと待っていて?」
僕はマリーを呼んで、小さなミルクピッチャーと蜂蜜を持ってきてもらう。
「これね、この前王都で見つけたの。蜂蜜の専門店なんてあるんだよ。はい。よかったらどうぞ」
僕は見えないけれどピッチャーに少しずついれた蜂蜜を5つ、ハリーの隣に出してみた。
「わぁ! 大喜びだ!」
「そう。それなら良かった」
妖精は見えないけれどピッチャーが揺れたり転がったりするから何だか楽しい。
「では、そろそろお話をいいですか?」
僕がそう言うと転がっていたピッチャーがピタリと止まった。そして
『……ねー、き……あ……ねー」
うん? なんだろう?
「兄様、今凄く頑張って話しています。聞く気持ちになってみて下さい。僕的にはものすごい大音量です」
ハリーが耳を押さえるようにしてそう言った。ええ? 聞く気持ち? う~~~~ん……耳を澄ます感じでいいのかな? 聞こえろ、聞こえろ、聞こえろ……
「あの、ねー、きこ……る? 」
「!! き、聞こえた!」
途端に子供のような、少し違う様な不思議な声がキャッキャッと笑った。
「……大喜びですね」
「みたいだね」
「きちんと聞こえない所は僕が補います」
「うん。では、お話したいことを教えてください」
すると微かな声が、けれど確かに聞こえてきた。
『あのねー、かんがえてるの、しってるー」
「しってるのー、ばらんすー」
「はいったらいけないのにやくそくやぶったー」
「いけないーやくそくやぶるの」
「くずれるー」
「ちがうよ、くずれそうなのー」
「ちがうー、ふさいであったのに、くずしたから、ちがうところとつながってこわれるんだよ」
「たすけるちからーうまくつかえないとなおらないの」
「こわれたらもうなおせないのー」
「たいへんなのー」
僕は聞こえてくる小さな声に、顔が引きつっていくような気がした。
「ま、待って、教えて。どこに入ったらいけなかったの?」
「いけないところー」
「どこかな?いけない所はどこにあるの?」
「しらないー、いくとだめなところー」
「そ、それはいくつあるの?行ったらいけない所はいくつあるのかな」
「……しらないー」
「知っている人は誰かいるかな?」
「おおきいひとはしってる。でもいないー」
「どこに行ったら会えるかな」
「しらないー、もうおしえてあげないー」
「兄様、この子達が話したいから来ているんです。この子達に聞かないとダメですよ。まって、まって、ハリーに言って」
それからは子供のような声は聞こえなくなって、ハリーの声だけが聞こえていた。
僕はそれを悲しく思いながら、先ほどの転がったミルクピッチャーを戻して再び蜂蜜をそこに入れた。
「無理に聞こうとしてごめんね。でもバランスの事はとても気になっていたから教えてくれてありがとう。入ったらいけない約束を破った事を調べてみるね。あと、塞いであった所と、崩れそうになっている所も探して、直すように考えてみるよ。助ける力の事もちゃんと考える。嫌な気持ちにさせてごめんね。教えてくれて嬉しかった。ありがとう。また温室にも遊びにきてね。あ、僕の事はエディってよんでね」
すると少ししてから再びピッチャーが動き始めた。
「お話出来て嬉しかった。ありがとう」
「えでぃー、またきていい?」
「!! もちろん。メロンがもうじき採れるから食べに来て?」
小さく弾けるような声が聞こえた気がした。
「こわいのは、こられないのー」
「やくそくやぶったらだめなのー」
「うん。わかった。こわいのが来られないのは嬉しい。あと、約束は破らないようにいけない所を頑張って見つけるね」
「わかるひと、こんどつれてくるー」
「! ありがとう。じゃあ、今度は美味しいクッキーを焼いておくよ」
「はーちーみーつー」
「蜂蜜も用意をしておこうね」
しばらく歓声が聞こえて、はしゃいだ気配がふっと消えた。
「帰ったみたいです。ご機嫌が直ってよかった」
「ありがとう。ハリー。でもまさか僕にまで声が聞こえるなんて思ってもいなかった」
「エディ兄様の温室を気に入っていたのと、妖精たちが話をしたいと思っていたのと、あと、多分兄様の加護のお陰もあると思います。妖精と精霊は異なる存在ですが、兄様にはグランディス様の加護がありますから。それのお陰かもしれません」
「うん。でも気になる事が沢山あった。教えてもらった話はすぐに繋げていかないとね。僕が聞いた以外でハリーが聞こえた事があったら教えて?」
「はい」
そうして僕は今度は父様と兄様に魔導書簡を送った。
--------------
皆からは色々な話が届き始めている。
スティーブ君は早速オックス領に聞きに行ってくれたらしい。どんな風にうまく言ったのかは分からないけれど、その話は子供の頃に聞いた事があるとお祖父様がおっしゃっていたらしく、また改めて聞きに行くとの事だった。
やはり結構記憶に残っている人がいるんだな。
ミッチェル君は最初にお父様に話をしてしまったそう。それで改めて書庫とか調べられる所は調べていいと許可をもらったとか。うん。とてもミッチェル君らしい。魔法に詳しいお年寄りにも聞いてみるって言っていたけど、なんとなくすごい人のような気がするな。だって、ミッチェル君だから。
トーマス君は元ハーヴィンに知り合いがいて、トーマス君の領に移ってきているので聞いてみるって。魔物が一番多く出て一番荒れて、砂漠化している土地だから何だか気になるって言っていた。
レナード君の所はフィンレーと同じくらい古い家なので、王国とか近隣の歴史のようなものを調べているって。レナード君の領は西の国との境の領だから何かこちらでは伝わっていないようなものがあるかもしれないな。
同じくもう少し南寄りの西の国の境に領があるエリック君も歴史関連や地図、それから古くからある伝承話のようなものを調べるって連絡が来た。
ユージーン君は交易の関係者から西と東の英雄譚を集めてみるって言っていた。
そして、数日分のノートも送ってくれた。なんでも西の国の魔道具で紙に書かれたものを写し取るというようなものがあるらしい。すごいなぁ。その魔道具を見てみたいな。
そして、クラウス君は曾祖父様とお話をしたそうで、王家が代々守っている所は複数あるという事を確認したらしい。でも詳しい事は言えないとか。う~~~~ん。なんとかもう少し粘ってみるような事が書かれていたけれどクラウス君ってあんまり交渉みたいなことは得意じゃないんだよね。が、頑張ってもらいたい。
それぞれがそれぞれに持ち帰ったものを元に動き出してくれているのがとても嬉しいと思う。
「僕も負けないようにがんばろう」
あえて口に出してそう言って、僕は部屋を出てルーカスに書庫へ行くことを伝えた。そして階段を降りると。
「エディ兄様、少しお話をしてもよろしいでしょうか」
ハロルドが居た。
-*-*-*-*-*-
再び部屋に戻ってマリーにお茶を頼む。
持ってきてくれたのは手でもつまめるような小さなお菓子と紅茶だった。
マリーが出て行ったのを見て僕は遮音の魔法をかけた。
「一応念のためにね」
「はい」
僕がそう言うとハリーはコクリと頷いた。
それにしてもいつもはほとんど温室での作業とか、お祖父様と外での魔法の勉強とかだったからあんまり意識をしていなかったけど、ハリーって随分大きくなったな。
剣術をメインにしているウィルの方が体格がいいから気がつかなかったけど、ハリーも結構大きい。
「あのさ、なんか全然関係ないけど、ハリーって今身長いくつなの?」
「身長ですか? そうですね。150ティンくらいですね」
「そ、そうなんだ。この前十歳になったんだよね?」
「ええ、7の月に十歳になりました」
うん、そうだよね。だって十歳の誕生日おめでとうってプレゼントを渡したもん。
「何だかサロンで水まき魔法を見せてもらったのがついこの間のようだよ。はぁ……」
「エディ兄様?」
「ううん。何でもない。何だか周りがどんどん大きくなるから、ちょっと悲しくなっただけ」
「ふふふ、そうですね。でも大丈夫ですよ。エディ兄様はいつまでもエディ兄様で居て下さい」
「ええ? もう少し伸びるよ。ハリーに負けないように頑張らなきゃ」
「はい」
ハリーは楽しそうに笑った。
「さて、ごめんね話を逸らして。ええっと、ハリーの話を聞かせて? もしかして夢を見た?」
僕がそう言うと笑みを引っ込めてハリーはコクリと頷いた。
「そうか。どんな夢?」
「それが、兄様の所に行ったけど話せなかったって」
「え? 僕の? 妖精が僕の夢に来ようとしていたの?」
「はい。何度か試したけどダメだったって」
「そ、そうか。それで、何を言いたかったんだろう?」
ハリーは普通にしていても妖精と話は出来るけれど、夢の中の方が姿も声もはっきりするんだって。
それで大事な事とか、ちゃんと伝えたい事があると夢に出てくるんだね。
「何だか最初はいつも美味しいのをもらうから話してみたかっただけみたいな感じだったんですが」
「う、うん」
「そのうちに何かお知らせをしたくなったとか」
「ええ! 何のお知らせだろう」
「それが、僕では今一つ要領を得なくて」
うう~ん、それは困った。
僕の部屋は沢山の結界があるし、妖精王の愛し子でもないからなかなか来て話をするというのは難しいんだろうな。だって、ハリーが来ているっていう時も、光さえ感じないし。
そう言うのはやっぱり加護の力なんだろうな。
「4.5人で入れ代わり立ち代わり喋るから余計分からないんですけど、何か伝えたい気持ちはあるみたいなんです。順番にっていうと順番を争う方に気持ちが行っちゃうみたいで」
「ふふふふふ、何だか可愛い」
僕は思わず笑ってしまった。妖精かぁ。本当に話せたらいいのにな。
「夢で伝えるのはどうしても難しいから、僕が言われた事を伝えるからって言って。今この辺に居るんです。僕にもう少し力があれば妖精の言葉をもっとちゃんと兄様に伝える事が出来るんですけど」
「大丈夫だよ。ハリー。今までにも妖精さんには色々とお世話になっているからね。また何かを教えてくれるっていうのはとても嬉しい。ああ、そうだ、ちょっと待っていて?」
僕はマリーを呼んで、小さなミルクピッチャーと蜂蜜を持ってきてもらう。
「これね、この前王都で見つけたの。蜂蜜の専門店なんてあるんだよ。はい。よかったらどうぞ」
僕は見えないけれどピッチャーに少しずついれた蜂蜜を5つ、ハリーの隣に出してみた。
「わぁ! 大喜びだ!」
「そう。それなら良かった」
妖精は見えないけれどピッチャーが揺れたり転がったりするから何だか楽しい。
「では、そろそろお話をいいですか?」
僕がそう言うと転がっていたピッチャーがピタリと止まった。そして
『……ねー、き……あ……ねー」
うん? なんだろう?
「兄様、今凄く頑張って話しています。聞く気持ちになってみて下さい。僕的にはものすごい大音量です」
ハリーが耳を押さえるようにしてそう言った。ええ? 聞く気持ち? う~~~~ん……耳を澄ます感じでいいのかな? 聞こえろ、聞こえろ、聞こえろ……
「あの、ねー、きこ……る? 」
「!! き、聞こえた!」
途端に子供のような、少し違う様な不思議な声がキャッキャッと笑った。
「……大喜びですね」
「みたいだね」
「きちんと聞こえない所は僕が補います」
「うん。では、お話したいことを教えてください」
すると微かな声が、けれど確かに聞こえてきた。
『あのねー、かんがえてるの、しってるー」
「しってるのー、ばらんすー」
「はいったらいけないのにやくそくやぶったー」
「いけないーやくそくやぶるの」
「くずれるー」
「ちがうよ、くずれそうなのー」
「ちがうー、ふさいであったのに、くずしたから、ちがうところとつながってこわれるんだよ」
「たすけるちからーうまくつかえないとなおらないの」
「こわれたらもうなおせないのー」
「たいへんなのー」
僕は聞こえてくる小さな声に、顔が引きつっていくような気がした。
「ま、待って、教えて。どこに入ったらいけなかったの?」
「いけないところー」
「どこかな?いけない所はどこにあるの?」
「しらないー、いくとだめなところー」
「そ、それはいくつあるの?行ったらいけない所はいくつあるのかな」
「……しらないー」
「知っている人は誰かいるかな?」
「おおきいひとはしってる。でもいないー」
「どこに行ったら会えるかな」
「しらないー、もうおしえてあげないー」
「兄様、この子達が話したいから来ているんです。この子達に聞かないとダメですよ。まって、まって、ハリーに言って」
それからは子供のような声は聞こえなくなって、ハリーの声だけが聞こえていた。
僕はそれを悲しく思いながら、先ほどの転がったミルクピッチャーを戻して再び蜂蜜をそこに入れた。
「無理に聞こうとしてごめんね。でもバランスの事はとても気になっていたから教えてくれてありがとう。入ったらいけない約束を破った事を調べてみるね。あと、塞いであった所と、崩れそうになっている所も探して、直すように考えてみるよ。助ける力の事もちゃんと考える。嫌な気持ちにさせてごめんね。教えてくれて嬉しかった。ありがとう。また温室にも遊びにきてね。あ、僕の事はエディってよんでね」
すると少ししてから再びピッチャーが動き始めた。
「お話出来て嬉しかった。ありがとう」
「えでぃー、またきていい?」
「!! もちろん。メロンがもうじき採れるから食べに来て?」
小さく弾けるような声が聞こえた気がした。
「こわいのは、こられないのー」
「やくそくやぶったらだめなのー」
「うん。わかった。こわいのが来られないのは嬉しい。あと、約束は破らないようにいけない所を頑張って見つけるね」
「わかるひと、こんどつれてくるー」
「! ありがとう。じゃあ、今度は美味しいクッキーを焼いておくよ」
「はーちーみーつー」
「蜂蜜も用意をしておこうね」
しばらく歓声が聞こえて、はしゃいだ気配がふっと消えた。
「帰ったみたいです。ご機嫌が直ってよかった」
「ありがとう。ハリー。でもまさか僕にまで声が聞こえるなんて思ってもいなかった」
「エディ兄様の温室を気に入っていたのと、妖精たちが話をしたいと思っていたのと、あと、多分兄様の加護のお陰もあると思います。妖精と精霊は異なる存在ですが、兄様にはグランディス様の加護がありますから。それのお陰かもしれません」
「うん。でも気になる事が沢山あった。教えてもらった話はすぐに繋げていかないとね。僕が聞いた以外でハリーが聞こえた事があったら教えて?」
「はい」
そうして僕は今度は父様と兄様に魔導書簡を送った。
--------------
379
お気に入りに追加
10,824
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
アルファポリス恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
連載希望のコメントをいただきましたので、
連載に向け準備中です。
*他サイトでも公開中
なろう日間総合ランキング2位に入りました!
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。