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第7章  厄災

202. 夏のお茶会

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結局もう少しで学園の夏季休暇が終了となるのに、僕はそのままフィンレーに居る事になった。
皆に連絡をしたらフィンレーに訪ねて行ってもいいかという連絡があった。
そう言えばこの休みの間にお茶会をなんて言っていた事を思い出す。
何だか王国内の粛清で父様も兄様も忙しそうで、僕だけがのんびりお茶会を開くというのも出来なくて、そうしているうちにルシルはまた元ハーヴィンに行ってしまったし、ダリウス叔父様からのお手紙とか、英雄譚の本とかもう色々でそれどころではなくなってしまって、言い出せなくなってしまったんだ。

でもこれからしばらくの間は皆に会えなくなってしまったし、せっかくだからシェフのミルクレープも食べてほしいし、それに……

「だって、もしかしたら違う視点も出てくるかもしれないでしょう?」

そう。お茶会を開いてもいいかという確認と一緒に、僕は父様に皆に本の事を話してもいいかと訊いてみた。
皆は僕の加護の事は知っているけど、その本当の力がどんなものなのかは知らない。
緑の手という力はきっと判っていると思う。特に一緒に講義を受けていたトーマス君とスティーブ君は言わなくても僕の魔法が普通の「土属性の魔法」ではない事は判っている。でも知っていても何も変わらない。それを含めて僕だって思ってくれているのが判る。

だから話をするのは全てではなくて、西の国の叔父から聞いた英雄譚で似た話がルフェリットにもあったと聞いて集めてみた。すると気になる事が幾つか出てきた。これに対してどう思うだろうか。
勿論記憶の事も、小説の中に書かれていた世界のバランスの崩壊という事も出さない。

父様からの返事は二つの約束事が記されていた。
一つはルシルは呼ばない。
これは王室へそのまま繋がってしまう可能性があるからだ。今はまだその時期ではないと父様は判断をしている。
そしてもう一つは話を他に広げさせない。

勿論この話は僕の友人だけでなく、その親にも繋がる可能性はある。
父様からは伝えても領主までとしておくように言われている。
万が一にでも、それが何かの悪い方へ向かってしまうきっかけにはしてはいけない。それは十分注意をしなくてはいけない。

一人が考える力には限界がある。
もしも、僕の大切な友達がそれを聞いて、何か別の視点が生まれたら。
学園に行かれない中で、僕はそれを色々まとめてみたいと思った。だからお茶会の招待状をみんなに送った。



「久しぶり、エディ。今日はお招きをありがとう」
「うん。久しぶり。言っていたお茶会を開くのが遅くなってごめんね」
「ううん。今日は楽しみにしていたよ」
「ふふふ、ちゃんとミルクレープも用意をさせているからね」

ミッチェル君はにっこりと笑った。
それにしてもみんなちょっと会わない間にまた少し大きくなったんじゃない?

「ねぇ、みんなまた背が伸びたんじゃない?」

小サロンに用意をしたテーブルと椅子。そこにそれぞれ座った途端僕はそう言った。

「ああ、そうだな。また伸びたかも」

最初にそう言ったのはクラウス君だ。

「また伸びたの? っていうかまだ伸びるの?」
「いやいや、ミッチェルだって伸びただろう?」
「僕はまだ180を超えたくらいだもの。クラウスは一体どれくらいあるの?」
「あ~、もう少しで200行くかも。うちの家系元々大きいんだよ。父も祖父も200はある」
「はぁ、それはすごいね。まぁ騎士科でかなり鍛えているっていうしね」
驚いたようにそう言うエリック君に、クラウス君はニヤリと笑った。
「ああ、剣が強くなるのは嬉しい。強い相手と手合わせを出来るのも」

そう言ったクラウス君は初めて会った時とは比べ物にならないくらい大きくて、もう大人の男の人みたいだ。

「……トム、一人で大きくならないでね」
思わずそう言ってしまった僕にトーマス君は「う、うん。一緒に大きくなろうね」と頷いてくれた。
もう170ないのは僕とトーマス君だけだ。
どうしてか、笑いを堪えているようなユージーン君に、トーマス君が赤い顔をして怒っている。
うん、まぁいいか。とりあえず食事をしよう。
そうして久しぶりに顔を合わせた僕たちは今日はコース料理のように一皿ずつ出てくるやり方で食事をしながら休みの間の事を話した。

「へぇ、トムはジーンの所に遊びに行ったの?」
「うん、海を見た事がないって言ったらじゃあ遊びに来る?って誘ってもらったんだよ。それでクラーケンを見たんだ」
「え! クラーケン!? それは僕も見たかった!」

ミッチェル君がすぐに食いついた。

「ああ、ごめんね。あの、討伐された後、何艘もの船に引かれてきて、港に引き上げられているのを見たんだ。凄く大きかったよ」
「ううう、死んだのでも全体が見られるなら見てみたかった。ジーン、クラーケンは割と頻繁に上がるの?」
「そんなには。月に1回とか2回あるかな……くらいかな。トムは運が良かったよ」
「えへへ、市場でクラーケンを買ってお土産にしたんだ。エディにもらったポーチですごく助かった。ありがとう」
「使ってくれて嬉しい。こちらこそありがとう」
「海かぁ、でも夏の海は暑いでしょう?」
「そうでもなかったよ。日陰に入ると結構涼しい。でもじりじりはしたから少し日焼けをした。もっとも僕の領自体が南よりだからそんなに気にはならなかったけど」
「そうかぁ、やっぱり暑いか~」

ミッチェル君は頭の中で夏の暑さとクラーケンを天秤にかけているみたいだった。
そうだね。月に一度位だと、なかなかうまくは見られないよね。

「フィンレーに来るとやっぱり避暑地だなって感じるよ」
「そう? でも何だかそう言われると嬉しいな。さぁ、じゃあミッチェルがお待ちかねのを出してもらおう」

食事が片付けられて、代わりに幾つものデザートが出てきた。これは好きなものをとってもらうスタイル。

それぞれがそれぞれに気になるものを取って味わっている所に僕は小さく口を開いた。

「あのね、今日皆に集まってもらったのは、勿論お茶会もしたかったし、これからしばらく皆に会えないかもしれないから会いたいなと思ったからなんだけど、一つ聞いてほしい話があるからなんだ。

「話?」

レナード君が少しだけ緊張したような顔をした。僕がこんな事を言った事が今までになかったからだ。

「うん。実はね。西の国にいる叔父上からちょっと気になる話を聞いて、その中で英雄譚の事をきいて取り寄せてもらったんだ。そしてそれと似た話がルフェリットにもあるって聞いて集めてみた。僕はその話がとても気になる点が沢山あって、学園を休む間に色々と考えてみようって思っているんだ。それで、色々な視点とか何か意見があったら聞かせてもらいたいと思ったんだ。読んでもらえるかな」

僕の言葉に、皆が一斉に頷いてくれた。



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チームエディ始動!
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