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第1章 幼少期
【エピソード】-魔法使いとうさぎ
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冬祭りで沢山の大きな雪の像を見た僕は、どうやったらこんなに大きな雪の像を作れるのだろうって兄様に聞いてみたんだ。だって雪は空から降ってきて、地面の上に積もっていくのに、どうやってこんな大きなものにするんだろう?
兄様は「雪を集めて固めて作るんだよ」って教えてくれた。
「雪をかためるのですか?」
「そう」
僕は手のひらで雪を集めてぎゅっと握ってみたけど、手の中の雪はすぐにバラバラになっちゃったんだ。
「バラバラです……それにつめたいです……」
「ああ、ほら、しもやけになるから拭いてもらおう」
一緒に来ていたマリーがすぐに僕の手をハンカチで手を拭いてくれたよ。
するとそれを見ていたマーティン君が「見ててごらん」って手の平を広げて何かを呟いた。
「ふぇ?……雪…手の上に雪がふってます! ええええ!」
大変だよ! マーティン君の手の上に雪が降ってきたよ! 僕はさっきすごく冷たかったのを思い出して慌ててしまった。
「マママママーティン様! つめ、つめたいですよ!」
「大丈夫だよ。ほら、これをこうして…」
マーティン君は笑ってまた何かを呟いた。すると雪はくるくる回ってどんどんどんどんマーティン君の手の上で固まっていったんだ。そしてマーティン君がぎゅっと手を閉じて開くと四角い雪の箱が出来ていた。
「どどどどどうやって、どうやったのですか? つめたくないですか?」
僕がびっくりしながら尋ねるとマーティン君は楽しそうに笑った。
「う~ん、ちょっと冷たいかな。でもほら、雪が固まったでしょう? そうしたらこうして、こうして、こうすると……」
マーティン君の指が雪の箱の上でクルクルって動いた途端、四角い箱だった雪がむくむくと動き出した。
「わわわわわ! うご、動きました! え!? うさ、うさぎ?」
四角い雪の箱が真っ白な雪のうさぎになっちゃったよ!
「はこからうさぎがうまれました!」
「目が零れそうだよエディ?」
兄様がそう言うので、僕は慌てて手で目を押さえた。でもそうするとうさぎが見えなくなっちゃった。
「アル兄さま、うさぎが見えません……」
「普通に見れば大丈夫だよ」
「そ、そうですね。こぼれないようにみればだいじょーぶ」
僕はそっと手を外してマーティン君の手の平の上にいる雪のうさぎを見つめた。
するとうさぎの周りでくるくると光が回り始めた。
「わわわわ! ひか、光ってます! マーティン様、すごいです!」
「触っても大丈夫だよ」
「さわりたいです!」
そっと両手を差し出すと、マーティン君は僕の手の平に雪のうさぎを乗せてくれた。
「冷たい…でもかわいい………あ、溶けちゃう…」
僕がそう言うと、マーティン君はクスリと笑ってまた何かを呟いた。
すると冷たかった雪のうさぎが、もう一度キラキラと輝いて、ガラスの箱の中に入ったんだ。
「ええええ! うさぎが! ガラスのおうちに入りました!」
「保存魔法をかけたから、溶けないし、飾っておけるよ。あげる」
「ふぇ? 」
え? あげる? このうさぎをもらってもいいの?
「あり、ありがとうございます! マーティン様! 大事にします!」
「さすがだな」ってジェイムズ君が笑った。それに「まぁね。これくらいならね」ってマーティン君も笑っている。
僕はガラスの箱に入った雪のうさぎを両手でそっとそっと持ち上げた。お日様の光に当たってキラキラして、今にもぴょんと跳ねそうだよ。すごいな。マーティン君は本物の魔法使いみたいだった。
「アル兄さま、いただきました。うれしいです!」
「うん。大事にしようね」
「はい。母様にも見せてあげます」
その夜、僕は雪のうさぎとキラキラの光の中で踊っている夢をみた。
一緒にぴょんぴょん跳ねて、くるくる回って、うれしくて笑ったら、うさぎも笑ってくれたんだ。
朝、その話を兄様たちにしたら、マーティン君が「じゃあ、今度踊って見せて?」と言ったので、僕は仲良くなるためならやらなきゃだめなのかしらと思いながら「れ、れんしゅう、します」と小さく答えた。
--------
書籍化に合わせて少し改稿しました。
兄様は「雪を集めて固めて作るんだよ」って教えてくれた。
「雪をかためるのですか?」
「そう」
僕は手のひらで雪を集めてぎゅっと握ってみたけど、手の中の雪はすぐにバラバラになっちゃったんだ。
「バラバラです……それにつめたいです……」
「ああ、ほら、しもやけになるから拭いてもらおう」
一緒に来ていたマリーがすぐに僕の手をハンカチで手を拭いてくれたよ。
するとそれを見ていたマーティン君が「見ててごらん」って手の平を広げて何かを呟いた。
「ふぇ?……雪…手の上に雪がふってます! ええええ!」
大変だよ! マーティン君の手の上に雪が降ってきたよ! 僕はさっきすごく冷たかったのを思い出して慌ててしまった。
「マママママーティン様! つめ、つめたいですよ!」
「大丈夫だよ。ほら、これをこうして…」
マーティン君は笑ってまた何かを呟いた。すると雪はくるくる回ってどんどんどんどんマーティン君の手の上で固まっていったんだ。そしてマーティン君がぎゅっと手を閉じて開くと四角い雪の箱が出来ていた。
「どどどどどうやって、どうやったのですか? つめたくないですか?」
僕がびっくりしながら尋ねるとマーティン君は楽しそうに笑った。
「う~ん、ちょっと冷たいかな。でもほら、雪が固まったでしょう? そうしたらこうして、こうして、こうすると……」
マーティン君の指が雪の箱の上でクルクルって動いた途端、四角い箱だった雪がむくむくと動き出した。
「わわわわわ! うご、動きました! え!? うさ、うさぎ?」
四角い雪の箱が真っ白な雪のうさぎになっちゃったよ!
「はこからうさぎがうまれました!」
「目が零れそうだよエディ?」
兄様がそう言うので、僕は慌てて手で目を押さえた。でもそうするとうさぎが見えなくなっちゃった。
「アル兄さま、うさぎが見えません……」
「普通に見れば大丈夫だよ」
「そ、そうですね。こぼれないようにみればだいじょーぶ」
僕はそっと手を外してマーティン君の手の平の上にいる雪のうさぎを見つめた。
するとうさぎの周りでくるくると光が回り始めた。
「わわわわ! ひか、光ってます! マーティン様、すごいです!」
「触っても大丈夫だよ」
「さわりたいです!」
そっと両手を差し出すと、マーティン君は僕の手の平に雪のうさぎを乗せてくれた。
「冷たい…でもかわいい………あ、溶けちゃう…」
僕がそう言うと、マーティン君はクスリと笑ってまた何かを呟いた。
すると冷たかった雪のうさぎが、もう一度キラキラと輝いて、ガラスの箱の中に入ったんだ。
「ええええ! うさぎが! ガラスのおうちに入りました!」
「保存魔法をかけたから、溶けないし、飾っておけるよ。あげる」
「ふぇ? 」
え? あげる? このうさぎをもらってもいいの?
「あり、ありがとうございます! マーティン様! 大事にします!」
「さすがだな」ってジェイムズ君が笑った。それに「まぁね。これくらいならね」ってマーティン君も笑っている。
僕はガラスの箱に入った雪のうさぎを両手でそっとそっと持ち上げた。お日様の光に当たってキラキラして、今にもぴょんと跳ねそうだよ。すごいな。マーティン君は本物の魔法使いみたいだった。
「アル兄さま、いただきました。うれしいです!」
「うん。大事にしようね」
「はい。母様にも見せてあげます」
その夜、僕は雪のうさぎとキラキラの光の中で踊っている夢をみた。
一緒にぴょんぴょん跳ねて、くるくる回って、うれしくて笑ったら、うさぎも笑ってくれたんだ。
朝、その話を兄様たちにしたら、マーティン君が「じゃあ、今度踊って見せて?」と言ったので、僕は仲良くなるためならやらなきゃだめなのかしらと思いながら「れ、れんしゅう、します」と小さく答えた。
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書籍化に合わせて少し改稿しました。
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