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第四章 森の終わり
113 ふわふわ卵のオムライスは幸せを呼ぶ?
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降って湧いた……わけではないんだけど、いきなり色々な情報が入ると人間ってかえって動けなくなるものなんだな。頭の中では読んでいたラノベの主人公みたいに「考えろ、考えろ、考えろ」とか繰り返しているのに、実際は考えても考えても何か浮かぶ事はなく、出るのはため息だ。
ついついこのまま森に住むのでもいいのかもなんて後ろ向きな事まで浮かんでくる。
でも…………
「ふわふわオムライス、美味しいです! ちゃんと<コパン>って書いてくれて嬉しいです!」
お約束のように口の端にケチャップをつけたコパンが嬉しそうに言う。ああ、やっぱり癒しって大事だな。
ちなみにケチャップは玉ねぎが見つかった時にトマトと玉ねぎとお酢とニンニクのチューブを並べて【模倣】した。作るじゃなくて【模倣】がなんとも俺らしいけど、いつも使っていた某社の製品と同じ味がして感動したんだ。
「それなら良かった! コパンが美味しいって言ってくれて嬉しい」
「アラタ様の作るごはんはどれもみんな美味しいです! でもそれはアイテムの魔法で作るからではなくて、アラタ様が作るから美味しいのです。私はアラタ様の作るご飯が大好きです!」
キラキラとした目で真っ直ぐに見つめてくる俺の『お助け妖精』。
ああ、そうだよ。俺はこの世界でコパンと一緒に楽しい事を沢山するって決めたんだ。女神は俺に幸せになれって言っていたという。それならばやっぱりこの世界を知らなければならない。ううん。知らなければじゃなくて知りたいんだ。
俺が生まれ変わったこの世界がどんな世界なのか。そして、この森ので何が起こっているのか、どうしてこの世界で『勇者』が疎まれているのかも知りたいって思う。
「コッコ達も、ラタトクスも可愛くて好きだなって思うけどね」
「アラタ様?」
「でもビーフの魔物も、サンダーシープも見たいよね」
「! はい!」
東へ向かっているこの道。
どれくらいかかるのかは分からないけれど、道はいつが外周へと辿り着くだろう。
大きな国の方が紛れ込めるのか、ダンジョンが二つある中くらいの国の方が姿を隠しやすいのか。いや、別に俺は何も悪い事をしたわけじゃないんだけどさ。そこでふと思った。
「ねぇ、コパン。俺も女神と話す事は出来ないかな」
「アラタ様?」
「ほら、俺ってば全然起きなくて女神と一度も会った事ないだろう? だから森を出る前に一度会って今回の事もコパンと一緒に聞けたらいいかなって思ったんだ。その場で疑問に思う事もあるかもしれないし」
「なるほど……」
「どうやって森を出るのかも一緒に相談出来たらなって。まぁ、魔法も色々と使えるようになっているお礼も言いたいかな」
「分かりました。女神様の世界に下りてから女神様にお会いした人はいないと思いますが、アラタ様は女神様にお会いしていないので、お願いしてみましょう。きっと一緒にお話を聞いたら、もっと色々と聞きたい事が出てくるかもしれません。それでまた一緒に考えられたいいと思います」
「そうだね。沢山聞いてくれたら、お礼にまたお供えもしようかな」
「それがいいと思います! ふわふわ卵のオムライスに<女神様>って書いてあげたらきっと喜ばれると思います!」
「そ……そうかな」
「はい! あとミルクのプリンもいいかもしれません!」
ああ、ミルクプリンのページを見たんだね、コパン。それで食べたいんだね。うんうん、やっぱり酪農をしている国も調べよう。憂鬱になっていたけれど、なんだかちょっと楽しくなってきたかもしれないな。さすが俺の『お助け妖精』だ。
「やっぱりコパンがいてくれて良かった」
「! 私も! 私もアラタ様と一緒にいられて良かったです。アラタ様の『お助け妖精』なれて良かったです!」
ふわふわ卵のオムライスは美味しくて、でもそれを食べて幸せそうにしているコパンを見ているともっともっと幸せな気持ちになれた。
多分、大丈夫。きっとうまくいく。だって俺はこの世界で幸せになるために生まれ変わったんだから。
そして傍にはコパンがいるしね。
夕食後にいつものようにコーヒーを飲んで、クリーンをしてからテントに潜った。カフェインとると眠れない人もいるけど俺はそうでもないんだよ。むしろ落ち着く。
「明日はもう少し先に進めるといいなぁ」
今日はちょっとイレギュラーが多すぎた。
ああ、そうだ。女神に会えたらあとどれくらいで森の終わりが見えるのかも聞かなくちゃ。でもそれだとどこに行くのか決めないと分からないのかなぁ。
でも出来ればもう少し国の情報も欲しいかも……
「…………やる事はやっぱり結構あるなぁ……」
ゆっくりと、でも確実に押し寄せてくる眠気。
コパンと一緒に外に出る。それはもう決定事項だ。でもここはまだ女神の森の中。彼女の庇護下だ。もう少し力をつけて、やれる事をやって、そして俺は…………
ぼんやりとそんな事を思いながら、俺はそのまま眠りに落ちた。
---------------
ついついこのまま森に住むのでもいいのかもなんて後ろ向きな事まで浮かんでくる。
でも…………
「ふわふわオムライス、美味しいです! ちゃんと<コパン>って書いてくれて嬉しいです!」
お約束のように口の端にケチャップをつけたコパンが嬉しそうに言う。ああ、やっぱり癒しって大事だな。
ちなみにケチャップは玉ねぎが見つかった時にトマトと玉ねぎとお酢とニンニクのチューブを並べて【模倣】した。作るじゃなくて【模倣】がなんとも俺らしいけど、いつも使っていた某社の製品と同じ味がして感動したんだ。
「それなら良かった! コパンが美味しいって言ってくれて嬉しい」
「アラタ様の作るごはんはどれもみんな美味しいです! でもそれはアイテムの魔法で作るからではなくて、アラタ様が作るから美味しいのです。私はアラタ様の作るご飯が大好きです!」
キラキラとした目で真っ直ぐに見つめてくる俺の『お助け妖精』。
ああ、そうだよ。俺はこの世界でコパンと一緒に楽しい事を沢山するって決めたんだ。女神は俺に幸せになれって言っていたという。それならばやっぱりこの世界を知らなければならない。ううん。知らなければじゃなくて知りたいんだ。
俺が生まれ変わったこの世界がどんな世界なのか。そして、この森ので何が起こっているのか、どうしてこの世界で『勇者』が疎まれているのかも知りたいって思う。
「コッコ達も、ラタトクスも可愛くて好きだなって思うけどね」
「アラタ様?」
「でもビーフの魔物も、サンダーシープも見たいよね」
「! はい!」
東へ向かっているこの道。
どれくらいかかるのかは分からないけれど、道はいつが外周へと辿り着くだろう。
大きな国の方が紛れ込めるのか、ダンジョンが二つある中くらいの国の方が姿を隠しやすいのか。いや、別に俺は何も悪い事をしたわけじゃないんだけどさ。そこでふと思った。
「ねぇ、コパン。俺も女神と話す事は出来ないかな」
「アラタ様?」
「ほら、俺ってば全然起きなくて女神と一度も会った事ないだろう? だから森を出る前に一度会って今回の事もコパンと一緒に聞けたらいいかなって思ったんだ。その場で疑問に思う事もあるかもしれないし」
「なるほど……」
「どうやって森を出るのかも一緒に相談出来たらなって。まぁ、魔法も色々と使えるようになっているお礼も言いたいかな」
「分かりました。女神様の世界に下りてから女神様にお会いした人はいないと思いますが、アラタ様は女神様にお会いしていないので、お願いしてみましょう。きっと一緒にお話を聞いたら、もっと色々と聞きたい事が出てくるかもしれません。それでまた一緒に考えられたいいと思います」
「そうだね。沢山聞いてくれたら、お礼にまたお供えもしようかな」
「それがいいと思います! ふわふわ卵のオムライスに<女神様>って書いてあげたらきっと喜ばれると思います!」
「そ……そうかな」
「はい! あとミルクのプリンもいいかもしれません!」
ああ、ミルクプリンのページを見たんだね、コパン。それで食べたいんだね。うんうん、やっぱり酪農をしている国も調べよう。憂鬱になっていたけれど、なんだかちょっと楽しくなってきたかもしれないな。さすが俺の『お助け妖精』だ。
「やっぱりコパンがいてくれて良かった」
「! 私も! 私もアラタ様と一緒にいられて良かったです。アラタ様の『お助け妖精』なれて良かったです!」
ふわふわ卵のオムライスは美味しくて、でもそれを食べて幸せそうにしているコパンを見ているともっともっと幸せな気持ちになれた。
多分、大丈夫。きっとうまくいく。だって俺はこの世界で幸せになるために生まれ変わったんだから。
そして傍にはコパンがいるしね。
夕食後にいつものようにコーヒーを飲んで、クリーンをしてからテントに潜った。カフェインとると眠れない人もいるけど俺はそうでもないんだよ。むしろ落ち着く。
「明日はもう少し先に進めるといいなぁ」
今日はちょっとイレギュラーが多すぎた。
ああ、そうだ。女神に会えたらあとどれくらいで森の終わりが見えるのかも聞かなくちゃ。でもそれだとどこに行くのか決めないと分からないのかなぁ。
でも出来ればもう少し国の情報も欲しいかも……
「…………やる事はやっぱり結構あるなぁ……」
ゆっくりと、でも確実に押し寄せてくる眠気。
コパンと一緒に外に出る。それはもう決定事項だ。でもここはまだ女神の森の中。彼女の庇護下だ。もう少し力をつけて、やれる事をやって、そして俺は…………
ぼんやりとそんな事を思いながら、俺はそのまま眠りに落ちた。
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