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第四章 森の終わり
109 カオスな『予見』
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聞こえてきた声に俺とコパンは顔を見合わせた。この森に俺の他に人間がいるんだろうか? ああ、でもこの世界は人間だけが喋るわけじゃない。コパンだって、あの水の精霊リヴィエールだって、なんだったらコッコやラタトクスのように会話が可能な魔物だっている。
「こちらのようです! でも注意をしてください」
「分かっているよ。コパンもね」
「はい!」
コパンを肩に載せたまま俺は森の中を声がした方に走った。するともう一度「助けて! いやぁぁぁぁ!」という声が聞こえた。
何が起きているのか分からないまま声を出してこちらの存在を明かしてしまうのは悪手だ。まずはどんな状況になっているのかを把握して、どうすればいいのか考えなければいけない。
「そろそろです。私もアラタ様も現在気配を消すようにスキルはありませんので、ゆっくりと近づいて確認して対応という形になります」
「うん。分かった」
「うわ~~~~~~ん! 誰か~~」
声が近い、少し先にあるあの木の後ろに転移をしてみようか。そう考えたらコパンがコクリと頷いた。ああ、考えた事が伝わるというのがこういう風に使えるのはいいな。
『では行きます』
コパンの方が細かい転移が長けているので今回はコパンにお願いをした。肩の上のコパンが魔力を出すと、パッと視界が変わる。
大きめの木の後ろ。ここから助けを求めている誰かの姿が見えるだろうか。
そう考えた途端。
「そ、そこの者‼ 助けてほしいのです~~~~!」
え? 見えているの? 木の後ろにいる俺達が? っていうか誰が助けてほしいって言っているんだ?
「ア、アラタ様、あそこです! ええっと……ええっと……」
コパンが口ごもる。うん。俺にも見えたよ。シマエナガみたいな鳥が蜘蛛の巣にかかっているのが。でもあれは多分、シマエナガではないよね。
俺の心の声にコパンが「おそらく精霊だと思います」と答えた。
またか、またなのか! 精霊っていうのは何かを助けてほしい時に現れるものなのか!
「なんでもいいから助けてほしいのです~~~~~~~!」
俺たちは周りを見回しながらゆっくりと木の後ろから出て、そのままシマエナガもどきが絡まっている蜘蛛の巣に近づいた。普通の蜘蛛の巣ならいくら小さいとはいえ鳥がバタバタしたら巣は壊れると思う。でもこの巣がこんなにもしっかりと小鳥を捕えているならそれなりに大きな蜘蛛か魔物の可能性が高い。
「コパン、風魔法で切れる?」
「いえ、どうやら魔法を吸収する糸みたいです」
「そうよ! そうなの! だから逃げられないのよ」
「じゃあ物理的に切るしかないのか。だけど蜘蛛だって獲物を捕らえるために一生懸命巣を作ったのにな」
「そういう問題じゃないの! こんなところで衰弱してシルバースパイダーに食べられるなんて嫌なのよ~~」
なるほどこの銀色の糸を張ったのはシルバースパイダーっていう魔物なんだな。そう考えたらコパンがシルバースパイダーは以前糸を獲ったタランチュラとはまた違う種類の蜘蛛の魔物で、魔力を通さない銀色の糸で巣を作り、獲物が衰弱をしてから食べるのだと教えてくれた。
近くに見当たらないで良かった。獲物のシマエナガ(仮)を食べようと出てきていたら俺の方が叫んでいたかもしれない。
周囲に注意をしながら、俺はミスリルで作った模倣剣でフツリと蜘蛛の糸を切った。でもせっかく巣を作って罹った獲物がいたのに巣も壊されて、獲物も取られてしまうのは可哀想な気がしたので、落ちていた木の枝で適当に繋げた巣の中に、フォレストウルフの肉片を置いてみた。
「まぁ、食べなければ食べないでも仕方ないけど。なんとなくね……」
本当はコカトリスの肉片にしようかと思ったんだけど、コパンが小さく「からあげ……」って呟いたからやめたんだ。うん。今日はからあげにしようかな……。
◆◆◆
「助けてくれてありがとう」
シマエナガ(仮)は糸が切れると、ふわりと風の魔法を使って身体に貼り付いていた蜘蛛の糸を取り払った。そうしてそのまま鳥の姿からいつかの水の精霊リヴィエールのような翼のある人型の姿になった。シマエナガと同じ白い翼だったからなんとなく小さい天使みたいに思えた。
「…………やっぱりアラタ様は羽のある姿が良いのですね。大丈夫です。私ももう少しレベルが上がったら羽をはやしますから」
「コパンはコパンのままでいいんだよ。俺は別に羽のある妖精が好きなわけじゃないんだ」
「あら、私は精霊よ。妖精と一緒にしないでほしいわ」
「………………アラタ様、あの精霊、もう一度蜘蛛の巣に置いてきてもいいですか?」
「ちょっと! 何てこと言うのよ!」
ああ、カオスだ。今日の『予見』ってトラブルの『予見』だったのかな。
-----
「こちらのようです! でも注意をしてください」
「分かっているよ。コパンもね」
「はい!」
コパンを肩に載せたまま俺は森の中を声がした方に走った。するともう一度「助けて! いやぁぁぁぁ!」という声が聞こえた。
何が起きているのか分からないまま声を出してこちらの存在を明かしてしまうのは悪手だ。まずはどんな状況になっているのかを把握して、どうすればいいのか考えなければいけない。
「そろそろです。私もアラタ様も現在気配を消すようにスキルはありませんので、ゆっくりと近づいて確認して対応という形になります」
「うん。分かった」
「うわ~~~~~~ん! 誰か~~」
声が近い、少し先にあるあの木の後ろに転移をしてみようか。そう考えたらコパンがコクリと頷いた。ああ、考えた事が伝わるというのがこういう風に使えるのはいいな。
『では行きます』
コパンの方が細かい転移が長けているので今回はコパンにお願いをした。肩の上のコパンが魔力を出すと、パッと視界が変わる。
大きめの木の後ろ。ここから助けを求めている誰かの姿が見えるだろうか。
そう考えた途端。
「そ、そこの者‼ 助けてほしいのです~~~~!」
え? 見えているの? 木の後ろにいる俺達が? っていうか誰が助けてほしいって言っているんだ?
「ア、アラタ様、あそこです! ええっと……ええっと……」
コパンが口ごもる。うん。俺にも見えたよ。シマエナガみたいな鳥が蜘蛛の巣にかかっているのが。でもあれは多分、シマエナガではないよね。
俺の心の声にコパンが「おそらく精霊だと思います」と答えた。
またか、またなのか! 精霊っていうのは何かを助けてほしい時に現れるものなのか!
「なんでもいいから助けてほしいのです~~~~~~~!」
俺たちは周りを見回しながらゆっくりと木の後ろから出て、そのままシマエナガもどきが絡まっている蜘蛛の巣に近づいた。普通の蜘蛛の巣ならいくら小さいとはいえ鳥がバタバタしたら巣は壊れると思う。でもこの巣がこんなにもしっかりと小鳥を捕えているならそれなりに大きな蜘蛛か魔物の可能性が高い。
「コパン、風魔法で切れる?」
「いえ、どうやら魔法を吸収する糸みたいです」
「そうよ! そうなの! だから逃げられないのよ」
「じゃあ物理的に切るしかないのか。だけど蜘蛛だって獲物を捕らえるために一生懸命巣を作ったのにな」
「そういう問題じゃないの! こんなところで衰弱してシルバースパイダーに食べられるなんて嫌なのよ~~」
なるほどこの銀色の糸を張ったのはシルバースパイダーっていう魔物なんだな。そう考えたらコパンがシルバースパイダーは以前糸を獲ったタランチュラとはまた違う種類の蜘蛛の魔物で、魔力を通さない銀色の糸で巣を作り、獲物が衰弱をしてから食べるのだと教えてくれた。
近くに見当たらないで良かった。獲物のシマエナガ(仮)を食べようと出てきていたら俺の方が叫んでいたかもしれない。
周囲に注意をしながら、俺はミスリルで作った模倣剣でフツリと蜘蛛の糸を切った。でもせっかく巣を作って罹った獲物がいたのに巣も壊されて、獲物も取られてしまうのは可哀想な気がしたので、落ちていた木の枝で適当に繋げた巣の中に、フォレストウルフの肉片を置いてみた。
「まぁ、食べなければ食べないでも仕方ないけど。なんとなくね……」
本当はコカトリスの肉片にしようかと思ったんだけど、コパンが小さく「からあげ……」って呟いたからやめたんだ。うん。今日はからあげにしようかな……。
◆◆◆
「助けてくれてありがとう」
シマエナガ(仮)は糸が切れると、ふわりと風の魔法を使って身体に貼り付いていた蜘蛛の糸を取り払った。そうしてそのまま鳥の姿からいつかの水の精霊リヴィエールのような翼のある人型の姿になった。シマエナガと同じ白い翼だったからなんとなく小さい天使みたいに思えた。
「…………やっぱりアラタ様は羽のある姿が良いのですね。大丈夫です。私ももう少しレベルが上がったら羽をはやしますから」
「コパンはコパンのままでいいんだよ。俺は別に羽のある妖精が好きなわけじゃないんだ」
「あら、私は精霊よ。妖精と一緒にしないでほしいわ」
「………………アラタ様、あの精霊、もう一度蜘蛛の巣に置いてきてもいいですか?」
「ちょっと! 何てこと言うのよ!」
ああ、カオスだ。今日の『予見』ってトラブルの『予見』だったのかな。
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