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三章 進め進め
72 克服したね!
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拠点に帰ってきて、さっそく【解体】をした。アイテム魔法の【解体】は有能で不要な部分は消えているんだ。と言っても今回はちょっとびびってしまったよ。だって……
「こ、これって…………」
「アラタ様の【鑑定】にも出ていたと思いますが、オークの睾丸はとても貴重な素材です!」
「ああ……そう……で、これはこのまましまっておくのかな?」
睾丸……睾丸だよ? どんなにすりつぶしても、加工しても、睾丸だよ! それを精力剤として服用するなんてこの世界の貴族ってすごい。うん。高いからね、貴族向けの素材なんだって。貴族こわい。
「何か箱みたいなものに入れておくのはどうかな。でもコパンの収納にお願い」
「箱……箱ですか……ええっと箱……」
コパンはキョロキョロと周りを見回した。うん。そうだよね。箱なんてないよね。どこかにないかな箱。だって十二体分の睾丸なんだもん。もちろん収納は別空間って分かっていても、食材と一緒になるような気がするのはなんだか抵抗があるよね!
「作るか……」
俺は焚き火用の丸太を取り出してパラパラとアイテムの本をめくった。そして……
「お、これなんかどうだろう」
俺が見つけたのは釣りをしているページに写っていた釣り用の道具箱。これを【模倣】出来ないかな。レベルが上がったから、本の中の物でも素材がちょっと違っても、形を真似るくらいならいけるかな。いけるといいな。あ、でも写っていた石窯はアイテム魔法で作れたんだからこれも【アイテム】でいけるのかな。だって、睾丸が…………
「これと同じような箱をこの木で作りたい。【模倣】!」
本は光らなかった。けれど、素材となる木は光って消えた。いくか? いけるのか? また無理がってメッセージが来ちゃうかな? でも麹とかよりは木箱を作る方がずっと簡単だと思うんだ。
そう思った途端、俺の目の前にとてもシンプルな木箱が現れた。しかも釣りの道具箱よりも大きくて、きちんと留め具がついている。これは<おまけ>だな。うん。収納の中でもしっかり箱の中に入っていてほしいもんね。
「やった! コパン、これに入れて、ここの板切れを縦にするとちゃんと閉まるからしっかり入れておいてくれるかな」
「おまかせあれ~!」
コパンは風の魔法でさぁ~っと睾丸を箱にしまって、木箱を閉めて収納してくれた。
良かった。あとは色々と使えるらしい革と、魔石と、お肉とお肉とお肉…………だ。これは手分けをして俺のインベントリにも入れた。はい。おしまい。
「アラタ様! オークのお肉は今日食べますか?」
キラキラとした目でそう尋ねてくる『お助け妖精』はとても可愛い。
「うん。そうだね。ええっと……確かこれに……」
俺は今度は『男飯』の本をめくる。
「あった、あった、これこれ」
豚の角煮のページはすぐに見つかった。砂糖もあるけど蜂蜜を少し入れてもいいかもしれない。照りが出るよね。なんだかちょっと料理が出来る人になったような感じだな!
とりあえず材料だけ揃えて後は【アイテム】におまかせだ!
「豚の角煮! じゃなくて、オークの角煮!」
今度こそ、ピカッと本が光った。
◆ ◆ ◆
「いただきます!……美味しいですぅぅぅぅぅ!」
挨拶の数秒後に聞こえてきた声に噴き出しそうになるのを堪えながら、俺は「良かったね」と言った。
オークの角煮は本当に豚の角煮だった。というか、高級豚? なんとかポークって名前がついているような肉。なんというか魔物って……すごいな。あんな戦いがあったから苦手というか、色々思うところもあったんだけど、初めから「この世界の高級な豚肉です」って言われたら、もうそうとしか思えない。
なんだか水族館の友人に近づいてきている自分に苦笑をしつつ、多分次にオークが出たらまた狩っちゃうんだろうなって思ったよ。
そしてもち麦も炊いてみた。
飯盒でのコメの炊き方と同じで、少しだけ水につける時間を長くして後はやっぱり【アイテム】任せだ。米のご飯とは違うけれど、麦飯と角煮の相性は最高だった。
「この麦ごはんももちもちしていて美味しいです!」
あはははは、コパンがどんどんグルメになっていく。でも確かに角煮と麦飯と味噌汁は最強だね。ちなみに豚汁も考えたけど、今日は玉ねぎの味噌汁。甘みが出てうまい。
ちなみに木箱を作った後、ピロンとスマホが鳴ったから開いてみたら模倣のところに「これ位の無理は大丈夫です」と注釈があって、新しく【工芸】というスキルが加わっていた。
お礼にアルミテーブルにお供えした角煮と麦飯と味噌汁はいつものように消えていて、俺はなんだかとても幸せな気持ちになった。
よし、オークも克服だ。もう大丈夫。
きっとこの先、他のランクのオークを見ても、俺もコパンも、もうお肉にしか見えないなって思うくらいにね。
---------
【アイテム】いいなぁ。私も使いたい。一瞬で出来る角煮…………
「こ、これって…………」
「アラタ様の【鑑定】にも出ていたと思いますが、オークの睾丸はとても貴重な素材です!」
「ああ……そう……で、これはこのまましまっておくのかな?」
睾丸……睾丸だよ? どんなにすりつぶしても、加工しても、睾丸だよ! それを精力剤として服用するなんてこの世界の貴族ってすごい。うん。高いからね、貴族向けの素材なんだって。貴族こわい。
「何か箱みたいなものに入れておくのはどうかな。でもコパンの収納にお願い」
「箱……箱ですか……ええっと箱……」
コパンはキョロキョロと周りを見回した。うん。そうだよね。箱なんてないよね。どこかにないかな箱。だって十二体分の睾丸なんだもん。もちろん収納は別空間って分かっていても、食材と一緒になるような気がするのはなんだか抵抗があるよね!
「作るか……」
俺は焚き火用の丸太を取り出してパラパラとアイテムの本をめくった。そして……
「お、これなんかどうだろう」
俺が見つけたのは釣りをしているページに写っていた釣り用の道具箱。これを【模倣】出来ないかな。レベルが上がったから、本の中の物でも素材がちょっと違っても、形を真似るくらいならいけるかな。いけるといいな。あ、でも写っていた石窯はアイテム魔法で作れたんだからこれも【アイテム】でいけるのかな。だって、睾丸が…………
「これと同じような箱をこの木で作りたい。【模倣】!」
本は光らなかった。けれど、素材となる木は光って消えた。いくか? いけるのか? また無理がってメッセージが来ちゃうかな? でも麹とかよりは木箱を作る方がずっと簡単だと思うんだ。
そう思った途端、俺の目の前にとてもシンプルな木箱が現れた。しかも釣りの道具箱よりも大きくて、きちんと留め具がついている。これは<おまけ>だな。うん。収納の中でもしっかり箱の中に入っていてほしいもんね。
「やった! コパン、これに入れて、ここの板切れを縦にするとちゃんと閉まるからしっかり入れておいてくれるかな」
「おまかせあれ~!」
コパンは風の魔法でさぁ~っと睾丸を箱にしまって、木箱を閉めて収納してくれた。
良かった。あとは色々と使えるらしい革と、魔石と、お肉とお肉とお肉…………だ。これは手分けをして俺のインベントリにも入れた。はい。おしまい。
「アラタ様! オークのお肉は今日食べますか?」
キラキラとした目でそう尋ねてくる『お助け妖精』はとても可愛い。
「うん。そうだね。ええっと……確かこれに……」
俺は今度は『男飯』の本をめくる。
「あった、あった、これこれ」
豚の角煮のページはすぐに見つかった。砂糖もあるけど蜂蜜を少し入れてもいいかもしれない。照りが出るよね。なんだかちょっと料理が出来る人になったような感じだな!
とりあえず材料だけ揃えて後は【アイテム】におまかせだ!
「豚の角煮! じゃなくて、オークの角煮!」
今度こそ、ピカッと本が光った。
◆ ◆ ◆
「いただきます!……美味しいですぅぅぅぅぅ!」
挨拶の数秒後に聞こえてきた声に噴き出しそうになるのを堪えながら、俺は「良かったね」と言った。
オークの角煮は本当に豚の角煮だった。というか、高級豚? なんとかポークって名前がついているような肉。なんというか魔物って……すごいな。あんな戦いがあったから苦手というか、色々思うところもあったんだけど、初めから「この世界の高級な豚肉です」って言われたら、もうそうとしか思えない。
なんだか水族館の友人に近づいてきている自分に苦笑をしつつ、多分次にオークが出たらまた狩っちゃうんだろうなって思ったよ。
そしてもち麦も炊いてみた。
飯盒でのコメの炊き方と同じで、少しだけ水につける時間を長くして後はやっぱり【アイテム】任せだ。米のご飯とは違うけれど、麦飯と角煮の相性は最高だった。
「この麦ごはんももちもちしていて美味しいです!」
あはははは、コパンがどんどんグルメになっていく。でも確かに角煮と麦飯と味噌汁は最強だね。ちなみに豚汁も考えたけど、今日は玉ねぎの味噌汁。甘みが出てうまい。
ちなみに木箱を作った後、ピロンとスマホが鳴ったから開いてみたら模倣のところに「これ位の無理は大丈夫です」と注釈があって、新しく【工芸】というスキルが加わっていた。
お礼にアルミテーブルにお供えした角煮と麦飯と味噌汁はいつものように消えていて、俺はなんだかとても幸せな気持ちになった。
よし、オークも克服だ。もう大丈夫。
きっとこの先、他のランクのオークを見ても、俺もコパンも、もうお肉にしか見えないなって思うくらいにね。
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【アイテム】いいなぁ。私も使いたい。一瞬で出来る角煮…………
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