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三章 進め進め
67 因縁の対決
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右側の道は少し進むと山道のようになった。ゴツゴツとしたそこは見覚えがあるような気がしたけれど、俺とコパンはそのまま進んだ。
緩かに上る道の途中には鉱石が転がっている。
「あの道を思い出すね」
「そうですね、でも鉄や銅、鉛、それに金や銀を含んでいるものが転がっているので、しっかり増やしておきましょう」
「うん。『補充』出来ない物もあるからね」
そうなんだ、鉄、銅、鉛を含む鉱石は『補充』が出来たんだけど、何故か金や銀は出来なかった。まぁ、それだけ『補充』し続けたら財産になるもんね。補充じゃなくて錬金術みたいになってしまうという事なのかな。
もっとも鑑定に引っかかってくる、水晶やアメジスト、エメラルド、ルビー、ラピスラズリ、そしてダイヤモンド等はあくまでも石という事なのか、『補充』は可能だ。
この世界の価値は分からないけれど、とりあえず集めておく。俺のインベントリもコパンの収納もいっぱいになる感じはしないからね。
「ねぇ、コパン。また見晴らし台みたいな場所とかあるのかなぁ」
「どうでしょう。『予見』ではそこまでは分かりません』
「そうかぁ」
俺たちは鉱石を集めつつ歩き続けて、あの日と同じように視界が開けた場所に辿り着いた。
「ああ、あれ、あの山みたいな何かの遺跡みたいな不思議な形のものがずいぶん遠くに見えるな。すごいね、コパン。俺達結構歩いてきたね! だけど方向もあるだろうけど、この森の終わりは見えないなぁ」
「そうですねぇ、でもまた『神気(中)』から『神気(低)』の以降区域と思われるので、見るのは難しいかもしれませんね」
う~ん、確か最初はこの森をぬけるまでは一か月以上って話だったような気がするんだけど。進む速度もあると思うけど、倍以上で三分の二いくか行かないか、か……
「まぁ、急ぎ旅じゃないしね。ちゃんとどこかの街に辿り着けるようにお互いにレベルを上げていこう」
「はい。おまかせあれ~! ああ、アラタ様、言っている傍からやってきたようですよ」
「え? もしかして?」
「はい。もしかしてです」
その途端聞こえてきた唸り声に俺たちは見晴らしの良い場所から少し森の中へ戻った。
森の中の方がお互いに動きが制限されるところがあるからね。
それに見晴らしがいいという事は片側が崖のようになっているので、そこから落ちる事は絶対に避けたい。
もっともこのままマッピング転移で道まで戻ればいいけれど、今回は俺たちのリベンジ戦だ。
「来ました! ハイウルフの群れです!」
肩の上でコパンが声を上げた。それを合図に俺は群れの中心に大きめのファイヤーボールを撃ちこんだ。
キャウンという犬のような鳴き声を上げて吹き飛ばされたのは二頭。
ハイウルフの群れは一瞬だけたじろいで、迷う事なく森の中に飛び込んできた。
「よし、コパン。二手に分かれよう。まずいようなら転移で逃げる」
「分かりました! でも多分大丈夫です」
肩から下りて飛びながらコパンが立て続けにウィンドカッターを放つ。俺も跳びかかってくるハイウルフ達の前に水の壁を展開して、その動きを止め、そのままそれをウルフ達の身体にまとわりつかせる。ウォーターウォールとウォーターボールの合わせ技だ。
「アラタ様! その魔法面白いです!」
戦いながら嬉しそうにコパンが声を上げた。
「うん。ほら、魔法は想像力だから」
「はい!」
前回よりも多い、二十頭ほどいたハイウルフはあっという間に四分の一ほどになった。
森のあちこちに倒れる同胞たちを見て、残りの数頭が引き上げていく。俺たちはそれを追いかける事はあえてしなかった。戦う意志のなくなったものまで命を奪う事はしなくてもいい。
甘いかもしれないけれど、多分この森の中の山道のようなところに迷い込まなければ二度と会う事もないだろう。拠点に彼らが入る事は出来ない。鉱石も沢山採れたし、以前は逃げる事しか出来なかったそれらに勝った。それで十分だった。
「逃げずに倒せたな」
「はい!」
俺たちは倒したハイウルフ達を収納して元の道に戻った。収納をしたウルフ達の解体もあるけれど、解体は【アイテム】のスキルで出来るし、日が傾くまでは進む事にした。
歩きながらの話題は今日使った俺の魔法だ。
「それにしても今日のアラタ様の魔法はすごかったです! 二つの魔法を合わせるなんて!」
「う~ん。出来るかなって思っていたんだよ。ほら前にコパンがウォーターボールで顔を覆っていた事があっただろう? それでちょっと試してみようかなって」
「なるほど! ウォーターウォールで出した水でそのまま包み込むなら効率がいいですからね。さすがアラタ様です! それだと他には何が組み合わす事が効率がいいのかなぁ」
「土壁を崩したらそのまま埋まっちゃうもんねぇ」
「そうですねぇ……」
こうして日が傾き始めたころ、俺たちは久しぶりにセーフティーゾーンを発見した。
新しい拠点となったそこで、サクッとハイウルフ達を【解体】した途端、俺のレベルが上がった。
因縁の対決は拠点だけでなく、レベルアップまでついてきて、大勝利となった。
---------------
遅くなりました~~~(;^ω^)
緩かに上る道の途中には鉱石が転がっている。
「あの道を思い出すね」
「そうですね、でも鉄や銅、鉛、それに金や銀を含んでいるものが転がっているので、しっかり増やしておきましょう」
「うん。『補充』出来ない物もあるからね」
そうなんだ、鉄、銅、鉛を含む鉱石は『補充』が出来たんだけど、何故か金や銀は出来なかった。まぁ、それだけ『補充』し続けたら財産になるもんね。補充じゃなくて錬金術みたいになってしまうという事なのかな。
もっとも鑑定に引っかかってくる、水晶やアメジスト、エメラルド、ルビー、ラピスラズリ、そしてダイヤモンド等はあくまでも石という事なのか、『補充』は可能だ。
この世界の価値は分からないけれど、とりあえず集めておく。俺のインベントリもコパンの収納もいっぱいになる感じはしないからね。
「ねぇ、コパン。また見晴らし台みたいな場所とかあるのかなぁ」
「どうでしょう。『予見』ではそこまでは分かりません』
「そうかぁ」
俺たちは鉱石を集めつつ歩き続けて、あの日と同じように視界が開けた場所に辿り着いた。
「ああ、あれ、あの山みたいな何かの遺跡みたいな不思議な形のものがずいぶん遠くに見えるな。すごいね、コパン。俺達結構歩いてきたね! だけど方向もあるだろうけど、この森の終わりは見えないなぁ」
「そうですねぇ、でもまた『神気(中)』から『神気(低)』の以降区域と思われるので、見るのは難しいかもしれませんね」
う~ん、確か最初はこの森をぬけるまでは一か月以上って話だったような気がするんだけど。進む速度もあると思うけど、倍以上で三分の二いくか行かないか、か……
「まぁ、急ぎ旅じゃないしね。ちゃんとどこかの街に辿り着けるようにお互いにレベルを上げていこう」
「はい。おまかせあれ~! ああ、アラタ様、言っている傍からやってきたようですよ」
「え? もしかして?」
「はい。もしかしてです」
その途端聞こえてきた唸り声に俺たちは見晴らしの良い場所から少し森の中へ戻った。
森の中の方がお互いに動きが制限されるところがあるからね。
それに見晴らしがいいという事は片側が崖のようになっているので、そこから落ちる事は絶対に避けたい。
もっともこのままマッピング転移で道まで戻ればいいけれど、今回は俺たちのリベンジ戦だ。
「来ました! ハイウルフの群れです!」
肩の上でコパンが声を上げた。それを合図に俺は群れの中心に大きめのファイヤーボールを撃ちこんだ。
キャウンという犬のような鳴き声を上げて吹き飛ばされたのは二頭。
ハイウルフの群れは一瞬だけたじろいで、迷う事なく森の中に飛び込んできた。
「よし、コパン。二手に分かれよう。まずいようなら転移で逃げる」
「分かりました! でも多分大丈夫です」
肩から下りて飛びながらコパンが立て続けにウィンドカッターを放つ。俺も跳びかかってくるハイウルフ達の前に水の壁を展開して、その動きを止め、そのままそれをウルフ達の身体にまとわりつかせる。ウォーターウォールとウォーターボールの合わせ技だ。
「アラタ様! その魔法面白いです!」
戦いながら嬉しそうにコパンが声を上げた。
「うん。ほら、魔法は想像力だから」
「はい!」
前回よりも多い、二十頭ほどいたハイウルフはあっという間に四分の一ほどになった。
森のあちこちに倒れる同胞たちを見て、残りの数頭が引き上げていく。俺たちはそれを追いかける事はあえてしなかった。戦う意志のなくなったものまで命を奪う事はしなくてもいい。
甘いかもしれないけれど、多分この森の中の山道のようなところに迷い込まなければ二度と会う事もないだろう。拠点に彼らが入る事は出来ない。鉱石も沢山採れたし、以前は逃げる事しか出来なかったそれらに勝った。それで十分だった。
「逃げずに倒せたな」
「はい!」
俺たちは倒したハイウルフ達を収納して元の道に戻った。収納をしたウルフ達の解体もあるけれど、解体は【アイテム】のスキルで出来るし、日が傾くまでは進む事にした。
歩きながらの話題は今日使った俺の魔法だ。
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「う~ん。出来るかなって思っていたんだよ。ほら前にコパンがウォーターボールで顔を覆っていた事があっただろう? それでちょっと試してみようかなって」
「なるほど! ウォーターウォールで出した水でそのまま包み込むなら効率がいいですからね。さすがアラタ様です! それだと他には何が組み合わす事が効率がいいのかなぁ」
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「そうですねぇ……」
こうして日が傾き始めたころ、俺たちは久しぶりにセーフティーゾーンを発見した。
新しい拠点となったそこで、サクッとハイウルフ達を【解体】した途端、俺のレベルが上がった。
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遅くなりました~~~(;^ω^)
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