お助け妖精コパンと目指す 異世界サバイバルじゃなくて、スローライフ!

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第二章 旅人から冒険者へ

47 お約束

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 そこにいたのは、なんだろう。ええっと昔何かの絵本で見たような、二足歩行の半魚人? え? 何これ
 そう考えると『鑑定』が今更ながら危険生物のポップアップを出してきた。

『サハギン』 
 海に棲む魚人の魔物だが、稀に川や湖等にも出る。縄張りに入ると非常に好戦的。

 いやいやいやいや、なんでここで稀なケースに当たるんだよ! 海限定にしてくれよ! と思っても出てきてしまったものは仕方がない。

「コ、コパン、どうする?」

 情けないけどここはやっぱり『お助け妖精』の指示を仰がないとね!

「気配はこの一体です。この領域に出るような魔物では無いですからね。群れで来られたら厄介ですが、ここは戦うしかないでしょう!」

 あ、うん。戦うんだね。このもりを持っている魚人と。

「お魚の為に!」

 食べたいんだね、魚。
 でも、ちょっと待てよ、あのもりって結構使えそうじゃないか? 俺って何も武器がないからさ、剣はあっても扱えそうもないけど、もりならなんとかなる時もあるんじゃない?

「コパン! あのもりも欲しい!」
「分かりました! サハギンは光に弱いので、私が大きなライトを出します。アラタ様は動けなくなったあいつにファイヤーボールをお願いします! 周りは川ですから多少逸れても問題ありません!」
「おう!」

 ごちゃごちゃと話をしている俺たちに向かってサハギンがもりを構えて向かってきた。

「いきます! ライト!」

 コパンは勢いよく、目くらましになるライトを飛ばした。

「ギエェェェェ!」

 サハギンの苦し気な声が聞こえる。だけど、でも……

「うわぁぁぁ! 目が、目が、コパン!」

 やり過ぎだよ! 俺の視界まで真っ白というか、赤というか、黒というか! 

「今ですよ! 真っ直ぐ撃って下さい! アラタ様!」
「クッ……フ、ファイヤーボールー!!」

 ありえないけれど俺はそのままファイヤーボールを撃った。川があるんだ。どうにかなる。というかコパン、どうにかしてくれ!

「やったー! 当たりました! さすが、あれ? アラタ様?」

 当たったのか…………。
 コパンの声を聞きながら、俺はその場にガクリと膝をついた。


 ◆◆◆


「すみませんでした。大丈夫ですか?」
「うん、もう大丈夫。いや俺も気をつけていればよかったんだよ」

 しょんぼりとするコパンに苦笑して、俺はその小さな肩をポンポンとした。
 とにかく現れたサハギンが一体だけで本当に良かった!
 そしてやけくそで撃ったファイヤーボールが、動けずにそのまま固まっていたサハギンに当って良かったよ。

 ファイヤーボールで致命傷を与えられたサハギンを、『ウィンドーカッター』でスパッとトドメをさしてから、コパンは慌てて俺のところに来て、すぐに『ウォーターヒール』という回復魔法をかけてくれた。
 おかげで普通に目が見えるようになったけれど、コパンは「少し休んでいてください」と言ってサハギンの魔石ともりを回収。更に風魔法で泳いでいた川魚を浮き上がらせて草の上に放置。
「頭付きのまま焼いている写真がありましたよね?」とウキウキしながら収納に入るようになったものを入れていた。うん。本当に魚が食べたかったんだな。

「コパン、そういえば、魚人はどうしたの?」
「風で細切れにして埋めました。そのままにしてアンデッドになると困りますから」

 そうなんだ。異世界って奥が深いな~……



 マッピングで今日の拠点に戻ってから、俺は本を広げて【アイテム】でピカッと煮魚用の下処理と焼き魚用の下処理をした。そして考えた末、ヤマメの塩焼きが夕飯になった。
 コパンが採っていたのはヤマメ、イワナ、アユ、ニジマス、そして捨てられそうになっていたウナギもいた。もちろん俺が回収したよ。
 これはもうなんと言っても米が欲しい!

「美味しいです!」

 嬉しそうな『お助け妖精』は本当に可愛らしい。

「蜂蜜はあるけど、そのうち砂糖が手に入ったら煮つけを作ろう」

 キャンプ料理に煮つけはなかったけれど、なんとサバイバルの方にさばき方だけでなく、煮つけも載っていたんだ。どういうチョイスなんだか分からないけれど助かった。

「楽しみです!」

 うん。補充したご褒美ボックスの煮つけはいつ開くか分からないから、作れるようになっている方がいいもんね。
 そう思いつつ、俺は久しぶりの焼き魚にかぶりついた。
  


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お魚のために!✨️
 

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