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第二章 旅人から冒険者へ
43 アラタの決意
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ちょっと怖い思いはしたけれど、珍しい石や鉱物をゲットして、念願の塩も手に入れた。
あの短い間に、しっかり岩塩を採取して収納しているなんてさすがコパンだ。
「えへへへへへ」
かまどの辺りから小さな笑い声が聞こえてきて、俺はああ、また聞こえちゃったんだなって苦笑した。でもすごいのは本当なので、今日はお塩記念日だ!
「アラタ様! かまどに火が入りましたよ」
「うん。じゃあ、収納の中で眠っていた素材も使おう!」
「はーい! って…えぇぇぇぇぇぇ」
久しぶりにコパンの目がグルグル渦巻きになった。
俺が取り出したのは最初の日、コパンが出した『食べられる草』だ。今なら分かる、これはヤブカンゾウという草で、下の方のねぎのような白っぽい部分を食べるらしい。
鑑定もレベルが上がると色々と情報が増えてくる。
そしてキノコ各種。勿論毒性のないものを厳選。これを入れて、ホーンラビットの肉を薄切りにして、塩味を付けて、ジャガイモから作ったなんちゃって片栗粉を使って少しだけとろみをつける。
これだけなのに何となく「俺、料理できるようになってきたな~」って思えるよ。
「溶き卵でもあればいいんだけど、これもまずまずだな。コパンそんな顔をしていないで。コパンが塩を見つけてくれたから出来たんだよ。ほら、イノシシ肉のステーキも焼けるよ。今日は沢山歩いたし、怖い目にもあったからしっかり食べて、早く休もう」
「はい」
俺たちはちょっとしたパーティ気分を味わっていた。キノコと癖のないヤブカンゾウのスープは塩だけでも美味しかったし、やっぱり塩味がきいたステーキは最強だった。なんちゃってクレープも作ってみた。小麦粉を水で伸ばしただけの生地だから俺が食べた事のあるものとは比べようもないけれど、焼き立てのそれにはちみつをかけて食べたら、なんだか涙が出るくらい美味しかった。
片付けは『クリーン』と『プットバック』の魔法でサクッと終わらせて、【アイテム】でサバイバルの本にあったタンポポの根っこを使ったコーヒーを作ってみた。
まぁコーヒーとは違うかな~と思ったけれど、それでも満足だった。
「なぁ、コパン」
「はい」
「あと三、四日でこの道も神気が『中』のエリアになってくるんだよな」
「まぁ、徐々にですが」
「………もう少し、この辺りに留まろうか」
「アラタ様?」
驚いた表情を浮かべたコパンがこちらを見ていた。
「ああ、うん。えっと街には行く。一度はこの世界を見てみる。引きこもるつもりはないよ。だけど今日ハイウルフと遭遇して、今のままじゃ駄目だなって思った。逃げるのも精一杯どころか、コパンのマッピングがなかったらきっと大変な怪我を負っていたか、死んでいたかもしれない」
「そんな事はさせません!」
コパンは今度は怒ったような声を上げてふよふよと俺の前に飛んできた。
「私はアラタ様の『お助け妖精』です。この前は魔力切れを起こして倒れさせてしまいましたが、二度とそんな事をさせません! 私が持っている力でお助けする事が出来るのは、私にとってはとても嬉しく、誇らしい事なのです。でも勿論魔法はこれからも練習をしていただくつもりです。だから、だから、死ぬなんて言わないでください~~」
言いながらブワッと涙を溢れさせて、そのままボロボロと泣き出してしまった『お助け妖精』を俺はそっと抱き寄せて、昔母さんが赤ちゃんだった環にしていたみたいに、背中をトントンと叩いた。
「ごめん、ごめん。コパンの事は頼りにしているよ。本当に。うまく言えなくてごめん。俺もこの世界でこのまま死ぬのは嫌だし。う~ん、神気『中』に入る前に、もう少しここで練習って言うか、この前のキラーマンティスみたいに戦う事に慣れるというか、戦い方を覚えるっていうか、実践訓練? そんな事が出来ないかなって。それで、もう少し自分の自信がつけられたらいいかなって思ったんだ。ぬるい所に居たいっていう甘えとは違うつもりなんだけど、まぁ、これも甘えかもしれないけど……」
俺の言葉をコパンは黙って聞いていた。涙は目の縁に溜めていたけれど、止まっていた。
「わ、分かりました! 戦う訓練をしながら、進んでいきましょう。勿論美味しい素材も探す事も忘れません」
「うん、それはもちろん!」
「では予見で、なんかちょっと出そうな所は挑戦をしていきましょうね!」
フンス! というように拳を握りしめてそう言うコパンに俺は苦笑しながら「お手柔らかにね」と言って、コパンは笑って「おまかせあれ~」って口にした。
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あの短い間に、しっかり岩塩を採取して収納しているなんてさすがコパンだ。
「えへへへへへ」
かまどの辺りから小さな笑い声が聞こえてきて、俺はああ、また聞こえちゃったんだなって苦笑した。でもすごいのは本当なので、今日はお塩記念日だ!
「アラタ様! かまどに火が入りましたよ」
「うん。じゃあ、収納の中で眠っていた素材も使おう!」
「はーい! って…えぇぇぇぇぇぇ」
久しぶりにコパンの目がグルグル渦巻きになった。
俺が取り出したのは最初の日、コパンが出した『食べられる草』だ。今なら分かる、これはヤブカンゾウという草で、下の方のねぎのような白っぽい部分を食べるらしい。
鑑定もレベルが上がると色々と情報が増えてくる。
そしてキノコ各種。勿論毒性のないものを厳選。これを入れて、ホーンラビットの肉を薄切りにして、塩味を付けて、ジャガイモから作ったなんちゃって片栗粉を使って少しだけとろみをつける。
これだけなのに何となく「俺、料理できるようになってきたな~」って思えるよ。
「溶き卵でもあればいいんだけど、これもまずまずだな。コパンそんな顔をしていないで。コパンが塩を見つけてくれたから出来たんだよ。ほら、イノシシ肉のステーキも焼けるよ。今日は沢山歩いたし、怖い目にもあったからしっかり食べて、早く休もう」
「はい」
俺たちはちょっとしたパーティ気分を味わっていた。キノコと癖のないヤブカンゾウのスープは塩だけでも美味しかったし、やっぱり塩味がきいたステーキは最強だった。なんちゃってクレープも作ってみた。小麦粉を水で伸ばしただけの生地だから俺が食べた事のあるものとは比べようもないけれど、焼き立てのそれにはちみつをかけて食べたら、なんだか涙が出るくらい美味しかった。
片付けは『クリーン』と『プットバック』の魔法でサクッと終わらせて、【アイテム】でサバイバルの本にあったタンポポの根っこを使ったコーヒーを作ってみた。
まぁコーヒーとは違うかな~と思ったけれど、それでも満足だった。
「なぁ、コパン」
「はい」
「あと三、四日でこの道も神気が『中』のエリアになってくるんだよな」
「まぁ、徐々にですが」
「………もう少し、この辺りに留まろうか」
「アラタ様?」
驚いた表情を浮かべたコパンがこちらを見ていた。
「ああ、うん。えっと街には行く。一度はこの世界を見てみる。引きこもるつもりはないよ。だけど今日ハイウルフと遭遇して、今のままじゃ駄目だなって思った。逃げるのも精一杯どころか、コパンのマッピングがなかったらきっと大変な怪我を負っていたか、死んでいたかもしれない」
「そんな事はさせません!」
コパンは今度は怒ったような声を上げてふよふよと俺の前に飛んできた。
「私はアラタ様の『お助け妖精』です。この前は魔力切れを起こして倒れさせてしまいましたが、二度とそんな事をさせません! 私が持っている力でお助けする事が出来るのは、私にとってはとても嬉しく、誇らしい事なのです。でも勿論魔法はこれからも練習をしていただくつもりです。だから、だから、死ぬなんて言わないでください~~」
言いながらブワッと涙を溢れさせて、そのままボロボロと泣き出してしまった『お助け妖精』を俺はそっと抱き寄せて、昔母さんが赤ちゃんだった環にしていたみたいに、背中をトントンと叩いた。
「ごめん、ごめん。コパンの事は頼りにしているよ。本当に。うまく言えなくてごめん。俺もこの世界でこのまま死ぬのは嫌だし。う~ん、神気『中』に入る前に、もう少しここで練習って言うか、この前のキラーマンティスみたいに戦う事に慣れるというか、戦い方を覚えるっていうか、実践訓練? そんな事が出来ないかなって。それで、もう少し自分の自信がつけられたらいいかなって思ったんだ。ぬるい所に居たいっていう甘えとは違うつもりなんだけど、まぁ、これも甘えかもしれないけど……」
俺の言葉をコパンは黙って聞いていた。涙は目の縁に溜めていたけれど、止まっていた。
「わ、分かりました! 戦う訓練をしながら、進んでいきましょう。勿論美味しい素材も探す事も忘れません」
「うん、それはもちろん!」
「では予見で、なんかちょっと出そうな所は挑戦をしていきましょうね!」
フンス! というように拳を握りしめてそう言うコパンに俺は苦笑しながら「お手柔らかにね」と言って、コパンは笑って「おまかせあれ~」って口にした。
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