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第二章 旅人から冒険者へ
38 予想外の敵
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花畑で蜜をとっているのだろう蜂。もとい、ハニービーという魔物。
花畑を大きく迂回して、オリーブの木が群生している辺りに行きたい俺。
でもどうやっても花畑の端っこは通らないとそこには行かれない。そして見たくはないけど、よく見ればハニービーという蜂の魔物の大きさはおかしいどころの騒ぎではなかった。だって! 手のひらくらいあるんだよ! あれでどうやって普通サイズの花から蜜を集められるのか不思議だけど、俺は絶対にじっくりと虫の観察なんかしない!!
「あ~! 蜜取りの邪魔なんかしないからこっちに来ないでくれぇー!」
勿論彼等に俺の言葉が通じる筈もなく、蜂たちは俺の近くでも自由に蜜を集め続ける。でかすぎる蜂が近くを飛んでいる現実に、俺のHPがガリガリと削られていく。
「コ、コパン! 諦めてもいいかな? 油、諦めてもいいよね!」
そうだよ。油がなくても暮らしていけるよ。だからもうここから離れたいんだ。ハッ! そうだ! コパンに一つだけオリーブの実と菜の花の種を取ってきてもらえばいいんじゃないかな。そうしたら『補充』で増やせないかな? 『補充』は俺が直接とったものじゃないと出来ないのかな? 試した事がないから分からないな。
そんな事をグルグルと考えていた途端、「ヴヴ!」という不吉な音がして、蜂、もとい、ハニービーが一斉に花から離れた。
「え?」
待って、これって威嚇の音? 俺もしかして敵認定された? マジ?
「コパン!」
「アラタ様!」
俺が声を上げた瞬間、コパンも俺を呼んだ。さすがコパン! 撤退って通じたんだな!
「気をつけて下さい! キラーマンティスです!」
…………………は?
え? 撤退じゃなくて気をつけるの? 待って、ちょっと待って、ハニービー達が塊みたいになって一箇所に向かって飛んで行く。ものすごい警戒音は耳を塞ぎたくなるくらいだ。
だけどその先に見えたものに俺は固まった。本気で固まった。
「この辺りで出るなんて珍しいと思います。はぐれかなぁ」
そう言いながらコパンが俺の上に肩に帰ってきた。
「……コパン、あれは」
おかしいな、俺、目がおかしくなったのかな。
ハニービーも信じられないくらいデカかったけど、ハニービーが威嚇をしている奴は俺の常識の範囲を逸脱していた。成人男性程の背丈もあるカマキリに見えるんだ。
え? 何これ。特撮? 特撮なの!? 虫 対 虫。俺への嫌がらせ?
「ヴヴヴヴヴ!!」
ハニービーが威嚇音を上げながら集団でカマキリじゃなくて、キラーマンティスに突っ込んでいった。けれどキラーマンティスはものすごいでかいカマでハニービーたちを切りつける。
「うわぁぁぁぁ……」
数はハニービーの方が多いけど、これじゃあまりにも一方的過ぎないか? おそらくハニービーたちは数で押して相手が疲れるのを待つという戦法なんだろうけど、なんていうか、こう……犠牲が大きすぎるっていうか、いたたまれないっていうか……
「コパン、俺、どうしたらいい? これは自然界の摂理だから俺が関わったらいけないのかな。でもこのままだとハニービーが全滅しちゃうよ。あいつは一体何がしたくてここにきたんだろう。縄張り争いなのかな。でもカマキリって確か肉食だよね。蜂も食べちゃうのかな。だけどそれにしてもやり過ぎだよね」
「こういうのはあまり関わってはいけないのですが、この辺りに出てくる魔物ではないと思います。この森の生態系が変わってしまう恐れもあります」
そうなんだ。弱い魔物たちの場所にワンランク上の奴がきちゃったらまずいよね。
でも俺、俺よりも大きいカマキリと戦うのはちょっと……。あのカマとか、脚とか、目を見るだけでもアウトだよ。THE虫って感じだもん。
「ああ、巣の方から応援が来ましたね」
「……更に被害が大きくなる予感だな」
どうしよう。どうしたらいいのかな。知らんぷりして逃げる? でもそのうちにあれが俺たちを襲ってきたら……
「いや、もう、無理無理無理無理」
声を上げた瞬間、キラーマンティスがこちらを見た。
目が大きすぎて、どれが目玉なのかよく分からないけど、なんとなく、そうなんとなく……
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
飛んでくる! あんなにでかいのに飛んでくるよぉぉぉぉ! ロックオンされた!
「アラタ様、こちらに向かってくるのならば戦いましょう」
「どどどどどどどどうやって!」
「『ファイヤーボール』でちょっと脅かして、この前の『ウォーターカッター』で仕留めましょう。大丈夫です。アラタ様なら出来ます。私も間でウィンドカッターを出しますから。以前のように魔力切れなんて絶対にさせません!」
迫ってくるでかい虫。この前みたいに逃げながら当てずっぽうに技を出しても当たる確率はイノシシ以上に悪いだろう。あのカマを振り下ろされたらおしまいだ。絶対にスパッと半分になる。
「それにアラタ様、キラーマンティスの羽と鎌は確か高く売れる筈ですよ♪」
コパン、何だか嬉しそうに聞こえるんだけど(涙)
--------------
花畑を大きく迂回して、オリーブの木が群生している辺りに行きたい俺。
でもどうやっても花畑の端っこは通らないとそこには行かれない。そして見たくはないけど、よく見ればハニービーという蜂の魔物の大きさはおかしいどころの騒ぎではなかった。だって! 手のひらくらいあるんだよ! あれでどうやって普通サイズの花から蜜を集められるのか不思議だけど、俺は絶対にじっくりと虫の観察なんかしない!!
「あ~! 蜜取りの邪魔なんかしないからこっちに来ないでくれぇー!」
勿論彼等に俺の言葉が通じる筈もなく、蜂たちは俺の近くでも自由に蜜を集め続ける。でかすぎる蜂が近くを飛んでいる現実に、俺のHPがガリガリと削られていく。
「コ、コパン! 諦めてもいいかな? 油、諦めてもいいよね!」
そうだよ。油がなくても暮らしていけるよ。だからもうここから離れたいんだ。ハッ! そうだ! コパンに一つだけオリーブの実と菜の花の種を取ってきてもらえばいいんじゃないかな。そうしたら『補充』で増やせないかな? 『補充』は俺が直接とったものじゃないと出来ないのかな? 試した事がないから分からないな。
そんな事をグルグルと考えていた途端、「ヴヴ!」という不吉な音がして、蜂、もとい、ハニービーが一斉に花から離れた。
「え?」
待って、これって威嚇の音? 俺もしかして敵認定された? マジ?
「コパン!」
「アラタ様!」
俺が声を上げた瞬間、コパンも俺を呼んだ。さすがコパン! 撤退って通じたんだな!
「気をつけて下さい! キラーマンティスです!」
…………………は?
え? 撤退じゃなくて気をつけるの? 待って、ちょっと待って、ハニービー達が塊みたいになって一箇所に向かって飛んで行く。ものすごい警戒音は耳を塞ぎたくなるくらいだ。
だけどその先に見えたものに俺は固まった。本気で固まった。
「この辺りで出るなんて珍しいと思います。はぐれかなぁ」
そう言いながらコパンが俺の上に肩に帰ってきた。
「……コパン、あれは」
おかしいな、俺、目がおかしくなったのかな。
ハニービーも信じられないくらいデカかったけど、ハニービーが威嚇をしている奴は俺の常識の範囲を逸脱していた。成人男性程の背丈もあるカマキリに見えるんだ。
え? 何これ。特撮? 特撮なの!? 虫 対 虫。俺への嫌がらせ?
「ヴヴヴヴヴ!!」
ハニービーが威嚇音を上げながら集団でカマキリじゃなくて、キラーマンティスに突っ込んでいった。けれどキラーマンティスはものすごいでかいカマでハニービーたちを切りつける。
「うわぁぁぁぁ……」
数はハニービーの方が多いけど、これじゃあまりにも一方的過ぎないか? おそらくハニービーたちは数で押して相手が疲れるのを待つという戦法なんだろうけど、なんていうか、こう……犠牲が大きすぎるっていうか、いたたまれないっていうか……
「コパン、俺、どうしたらいい? これは自然界の摂理だから俺が関わったらいけないのかな。でもこのままだとハニービーが全滅しちゃうよ。あいつは一体何がしたくてここにきたんだろう。縄張り争いなのかな。でもカマキリって確か肉食だよね。蜂も食べちゃうのかな。だけどそれにしてもやり過ぎだよね」
「こういうのはあまり関わってはいけないのですが、この辺りに出てくる魔物ではないと思います。この森の生態系が変わってしまう恐れもあります」
そうなんだ。弱い魔物たちの場所にワンランク上の奴がきちゃったらまずいよね。
でも俺、俺よりも大きいカマキリと戦うのはちょっと……。あのカマとか、脚とか、目を見るだけでもアウトだよ。THE虫って感じだもん。
「ああ、巣の方から応援が来ましたね」
「……更に被害が大きくなる予感だな」
どうしよう。どうしたらいいのかな。知らんぷりして逃げる? でもそのうちにあれが俺たちを襲ってきたら……
「いや、もう、無理無理無理無理」
声を上げた瞬間、キラーマンティスがこちらを見た。
目が大きすぎて、どれが目玉なのかよく分からないけど、なんとなく、そうなんとなく……
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
飛んでくる! あんなにでかいのに飛んでくるよぉぉぉぉ! ロックオンされた!
「アラタ様、こちらに向かってくるのならば戦いましょう」
「どどどどどどどどうやって!」
「『ファイヤーボール』でちょっと脅かして、この前の『ウォーターカッター』で仕留めましょう。大丈夫です。アラタ様なら出来ます。私も間でウィンドカッターを出しますから。以前のように魔力切れなんて絶対にさせません!」
迫ってくるでかい虫。この前みたいに逃げながら当てずっぽうに技を出しても当たる確率はイノシシ以上に悪いだろう。あのカマを振り下ろされたらおしまいだ。絶対にスパッと半分になる。
「それにアラタ様、キラーマンティスの羽と鎌は確か高く売れる筈ですよ♪」
コパン、何だか嬉しそうに聞こえるんだけど(涙)
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