お助け妖精コパンと目指す 異世界サバイバルじゃなくて、スローライフ!

tamura-k

文字の大きさ
上 下
22 / 123
第一章 転生

お気に入り123突破ありがとう😊SS

しおりを挟む
 私はお助け妖精の『コパン』。
 『コパン』っていうのはアラタ様がつけてくれた私の名前だ。
 仲間って言う意味があるんだって。

 多分アラタ様は知らないのだろうけど、妖精にとっての名前は特別だ。
 名前を認める事で私はアラタ様と一緒に生きる事になる。アラタ様がいなくなったら私は深い眠りに入る。そうして再び巡り会えるのを待つんだ。でもそれでいいと思った。
 だって、私とアラタ様は仲間だから。
 こんなに素敵な方のお助け妖精になって、私は世界一の幸せ者だって思ったよ。
 「コパン」って呼ばれるたびに、胸の中がホカホカと温かくなって、嬉しい気持ちが湧き出してくるんだ。
 アラタ様のお助け妖精になれて良かった。私はそう思いながら出会った時の事を思い出していた。


 ◆ ◆ ◆


 私はこの世界の女神様から『お助け妖精』となるために呼び起こされた小さな妖精だった。

「お前、この者のお助け妖精になって仕えなさい」
「はい……え……あの、女神様。この方は赤ちゃんには見えませんが」

 そう。お助け妖精は、違う世界から生まれ変わった者たちが、この世界に自然に馴染めるように助けると同時に、この世界の秩序を乱さないよう、驚異となる存在にならないように監視をする役目も持っている。
 お助け妖精として呼び起こされた妖精はどんなに小さくても、きちんとそれを理解しているんだ。
 だから新しい命として生まれ落ちたその時から、ずっとずっと、仕える者に寄り添って自分も力を上げていく。
 だけど……

「この者は前世で手違いがあって巻き込まれた。ああ、違う。あれは『不幸な事故』だったのです。その為、元の世界からはじき出されて戻れなくなってしまいました」
「そんな事が!」
「時おりそのような存在があります。はじき出された魂は新たに生まれ変わりが出来ません。なのでこの器を元にして私が創り、こちらへ転生をさせました」

 難しい事はよく分からなかったけれど、とにかくこの方も転生をした方で、お助け妖精が必要な人なのです。しかも手違い……ではなくて、『不幸な事故』に巻き込まれて赤ちゃんから始める事が出来なかった。

「分かりました。この方のお助け妖精として精一杯努めます」
「よく言ってくれました。ではこの者への説明もお願いしますね。本来であれば気づいたこの者と話をし、何かの加護を与えるのですが、普通の転生と異なる為か目を覚まさない。そこでこの者が持っていたこれらで特別な力とスキルを授けました。ただ」
「ただ?」
「よく分からないものが多かったので、これが持っていたもう一つの本に近い世界に転生をさせる事にしました」

 そう。女神様はいくつかの異なる世界を持っていらっしゃるんだ。その中の一つにこの方を下ろすと決めているらしい。

「初めから成人しており、色々と苦労をかけると思いますが、よろしくお願いしますね。私は不幸な事故の後始末……いえ、この後の予定がつまって……んんん、やらなければならない事があるので頼みましたよ。互いに信頼出来るような良きお助け妖精となりなさい」
「はい。頑張ります」

 私はこうしてヤゴウチアラタ様のお助け妖精になった。
どうやらアラタ様は普通の転生と違う事と、成人をしている事でなかなかお助け妖精が決まらなかったのだと後から分かった。不幸な事故があったのはアラタ様のせいではないのにかわいそうだ。

 「はずれをひかされた」と揶揄う仲間たちに「そんな事はありません!」と言って私は女神様の元を飛び立ちました。すでにアラタ様は女神様の世界にある『深層の森』に下りているのです。急がなければなりません。

「誰か返事を、返事をしてくれ!」

 泣き出しそうな声が聞こえてきて、私はアラタ様の前で大きな声で「はーい!」と返事をしました。お助け妖精はどの方に仕えるのか、初めて会ってもちゃんと分るのです。赤ちゃんではないけれど、この方が私のお仕えする方です。

 びっくりしてキョロキョロしているアラタ様に私はもう一度返事をしました。

「はーい! ここです! やっと追いつきました!」

 しっかりと向けられた顔。うん。赤ちゃんじゃなくても最初から顔を合わせてお話が出来るなんて素敵だよね。

「ヤゴウチアラタ様ですね? はじめまして! お助け妖精です!」

 これが私とアラタ様のファーストコンタクトのお話。


-------------
コパンサイドのお話でした。
楽しんでいただけると嬉しいです。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。

みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい! だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

処理中です...