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第一章 転生

18 よく分からないけれど

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「そうなんだ。ああ、それで実る時期ではない実が熟していたりするのか」

 俺がそう言うとコパンはコクリと頷いた。

「はい。女神様の世界は時間というものがないので、森もその影響を受けていて、一つの木に色々な時間のものがあるのです」
「色々な時間?」
「はい。お気づきになりませんでしたか? 同じ木に実が熟しているものもあればまだ花のものもあるし、実になったばかりのものもある。陽の当たり具合とかではなく、それぞれがそれぞれの成長をしているのです。だから一年中収穫が出来ると聞いています」

 ああ、そう言われてみるとそうだった。季節の違うものが実っているなとは思っていたけれど、鑑定と収穫で気持ちがいっぱいいっぱいだったから、一つの木で違う成長のものが存在しているのは、単純に《まだ収穫できないもの》でスルーしていた。

「ほんと余裕なさすぎだな」
「アラタ様?」
「何でもないよ。でもそれなら岩塩も期待できるかもしれないな。ちなみにこの辺りに山みたいになっている所はあるかな」
「…………う~ん、すみません。良く分かりません」
「そうだよね。コパンだってこの世界は初めてなんだもんな。でも今日は沢山食べるものが採れたし、道沿いに戻りながら今日の泊まる場所を探そうか。それで元気があったら魔法の練習を少しだけしてみるっていうのはどう?」
「賛成です! では、こちらです!」

 椅子とテーブルを片付けて俺たちは進んでいた道の方に戻る事にした。もしかしたらこのまま森の中を進んだ方がもっと色々な食材に出会えるかもしれないけれど、この世界に来てまだ二日だ。
 どこの国に行くのもひと月はかかるというのであれば、しっかり対策を立てて、もう少しこの森に慣れてから奥へ進む事を選んでもいい。
 ここはもう石橋を叩いて、もう一度叩いて、ヒビが入っていないかも確認をして渡る方がいいだろう。
 備えあれば患いなしって言うしね、なんかちょっと違う気もするけど。

 それからしばらくすると道に出た。コパンは当たり前のように俺の肩に座り、俺もそれが当たり前のようになってきた。歩きながらの話題は今日の収穫物。せっかくだからムカゴを茹でてみようって事になった。イモ類は腹に溜まるからね。後は茹でるだけなら山菜もいいかもしれないな。あ、でもあく抜きが必要だったかも。よく分からないけど。
 いつか油が手に入るようなら炒め物とかも出来るようになるかもしれない。
 まぁ、それまでには何か味がつけられるものを見つけたいな。


 ◆ ◆ ◆


 そうして歩く事一時間。まだ日が傾き始める十六時前位に、道から少し入ったところに大きな木のある割合開けた場所が見えて、本日はそこに泊まる事を決めた。

 インベントリからテントを出して、昨日と同じように組み立てる。なのにやっぱり手引書が必要。だって一度でやり方が全部覚えられたら苦労はしないよ。多分毎日やっていればそのうち手際も良くなるさ。

「う~ん、このロープとペグの打ち込みがなぁ……なんかこうピシッといかないんだよね。そういえばキャンプの本にテントの張り方のコツみたいなページがあったな」

 俺は『初めてのキャンプ。ソロもファミリーもこれでおまかせ!』を取り出してテントのページを開いた。そうそう、このペグとロープがさ……と思った時だった。またしてもピカ―ッと本が光ったのだ。そして……

「う、嘘だろう?」

 目の前には本のように美しく出来上がったテントがあった。モタモタしていたロープとペグも完璧だ。
 ピロンと鳴るスマホ。

「もしかして……」

 俺は慌ててスマホを開いた。
 特殊アイテムがレベル2になっている! しかも今まではなかった文面がある!

 【特殊アイテム】 Lv2
 『初めてのキャンプ。ソロもファミリーもこれでおまかせ!』
  *P42 テントの張り方取得
 『サバイバル読本 これであなたも生き残る』
  *P102 食べられる植物と実、広範囲鑑定取得
 『自給自足をはじめよう』
 『美味しいキャンプ飯』

「うわぁ~! アラタ様。昨日よりものすごく早く出来ましたね! では今日はお鍋を使うのでかまどを作りましょう。細枝と丸太はもう準備出来ています!」

 コパンがものすごく感動したようにそう言ったけれど、俺はそれどころではなかった。
 えっと、アイテムって、魔法を取得するアイテムなの? ここに書かれている知識の?
 
「もしも本当にそうだったら、これはすごい事なんじゃないか?」

 持っている本は四冊。しかも結構どれもページ数のあるものだ。しかも図解付きや写真付きで分かりやすくなっているものを選んできた。

「コパン、俺、ちょっと試したい事があるんだ」
「試したい事ですか? 何でしょう」
「うん。焚火兼かまどなんだけど……」

 そう言って俺は再び『サバイバル読本 これであなたも生き残る』を取り出して焚火のページを開いた。


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