1 / 54
1 普通の転生者、幸せ計画を話す
しおりを挟む
「幸せになれますか?」なんて後ろ向きな事を言っているようでは幸せは来ないんだよ。
ほら、よく言うでしょ?お金は寂しがりやだから沢山ある方に行っちゃうんだよって。
え? 聞いたことがない?
そうかなぁ。まぁいいや。でもそう思わない?
だからね、それと同じで『幸せ』も、『幸せ』のくせに寂しがりやで甘えん坊だから、きっと沢山の『幸せ』がある方に行っちゃうんだ。だから本気で『幸せ』になりたいならまずは『幸せ』をかき集めなきゃならない。
きっとね「ああ、幸せだな」って思わないと、次の『幸せ』はやってこないんだよ。
「幸せになれるかな?」じゃなくて、「幸せになる!」ああ、いや、「幸せになろう!」かなぁ? うん、それくらいから始めたらいいんじゃないかな。
「だからね、僕は、幸せ計画を立てる事にしたんだ」
ドヤ顔でそう言った、僕、サミュエル・エマーソンの目の前で、幼馴染みのフィリップ・グレンウィードは死んだ魚のような眼をして口をひらいた。
「……お前、バカだろ」
「え? 僕、バカなの?」
僕は即座にそう問い返していた。
心外だ。こんなに真剣に考えて話したのにそんな反応を返されるなんて。
「そんな事ないよ。そりゃフィルに比べたら成績は落ちるし、剣の腕だって魔法量だって劣るかもしれないけどさ、それでもちゃんと中間よりは上にいるし、王城の官吏の試験も受けるつもりだよ?ちゃんと受けてもいいですよっていうラインは超えているんだから」
にっこり笑ってそう言ってやった。そう。官吏の試験は誰でも受けられるんじゃないんだ。受けるには資格がいる。今年に入ってからそれにめでたく通ったから初冬の試験を受ける事が出来るんだ。第一関門突破って奴だね。
「うん。バカだな。やっぱり」
バッサリとそう言い切った幼馴染みに僕は今度こそムッとして口を開いた。
「ひどいよ、フィル! いくら幼馴染みだからってバカなんて言ったらいけないと思う。僕はこう見えても心が広くてフィルのそんな言動には慣れているけど、本当に傷つきやすい繊細な子だったら、その一言ですごく傷ついちゃうからね。フィルは顔はいいけど口が残念」
「お前に残念って言われてもなぁ」
やれやれって肩を竦めるのはやめて。ほんとにムカつくから。
「もういいよ。せっかく話したのに。帰る」
「おい、サミー。剣の稽古を見ていくんじゃなかったのか?」
「いい。見たって剣が上手くなるわけじゃないし。それに俺は文官を目指すわけだから、必要最低限の剣術が出来ればいいしね!」
僕はそう言って学生寮の方に歩き始めた。
「サミー」
「なに?」
「どうでもいいけど、その幸せ家族計画みたいなの他の奴に話すなよ」
「家族計画じゃない! 家族計画になったら違う意味になっちゃうでしょ⁉ 僕は別に家族計画を立てているわけじゃないんだよ。そうじゃなくて幸せになるの!」
「はいはい。分かった、分かった」
「軽くあしらうな。もう。フィルに話した僕が間違いだった」
プンプンと怒って歩き出した僕の後ろでフィルが口を開いた。
「まったく、ほんとに分かってないな。幸せになりたいなんて、そんな事を言っていたら今が幸せじゃないみたいじゃないか。お前は今、幸せじゃないのかよ」
そんなフィルの声は僕には届かなかった。
--------------
普通(だと思っている)子の幸せ探し。
はじまりはじまり
ほら、よく言うでしょ?お金は寂しがりやだから沢山ある方に行っちゃうんだよって。
え? 聞いたことがない?
そうかなぁ。まぁいいや。でもそう思わない?
だからね、それと同じで『幸せ』も、『幸せ』のくせに寂しがりやで甘えん坊だから、きっと沢山の『幸せ』がある方に行っちゃうんだ。だから本気で『幸せ』になりたいならまずは『幸せ』をかき集めなきゃならない。
きっとね「ああ、幸せだな」って思わないと、次の『幸せ』はやってこないんだよ。
「幸せになれるかな?」じゃなくて、「幸せになる!」ああ、いや、「幸せになろう!」かなぁ? うん、それくらいから始めたらいいんじゃないかな。
「だからね、僕は、幸せ計画を立てる事にしたんだ」
ドヤ顔でそう言った、僕、サミュエル・エマーソンの目の前で、幼馴染みのフィリップ・グレンウィードは死んだ魚のような眼をして口をひらいた。
「……お前、バカだろ」
「え? 僕、バカなの?」
僕は即座にそう問い返していた。
心外だ。こんなに真剣に考えて話したのにそんな反応を返されるなんて。
「そんな事ないよ。そりゃフィルに比べたら成績は落ちるし、剣の腕だって魔法量だって劣るかもしれないけどさ、それでもちゃんと中間よりは上にいるし、王城の官吏の試験も受けるつもりだよ?ちゃんと受けてもいいですよっていうラインは超えているんだから」
にっこり笑ってそう言ってやった。そう。官吏の試験は誰でも受けられるんじゃないんだ。受けるには資格がいる。今年に入ってからそれにめでたく通ったから初冬の試験を受ける事が出来るんだ。第一関門突破って奴だね。
「うん。バカだな。やっぱり」
バッサリとそう言い切った幼馴染みに僕は今度こそムッとして口を開いた。
「ひどいよ、フィル! いくら幼馴染みだからってバカなんて言ったらいけないと思う。僕はこう見えても心が広くてフィルのそんな言動には慣れているけど、本当に傷つきやすい繊細な子だったら、その一言ですごく傷ついちゃうからね。フィルは顔はいいけど口が残念」
「お前に残念って言われてもなぁ」
やれやれって肩を竦めるのはやめて。ほんとにムカつくから。
「もういいよ。せっかく話したのに。帰る」
「おい、サミー。剣の稽古を見ていくんじゃなかったのか?」
「いい。見たって剣が上手くなるわけじゃないし。それに俺は文官を目指すわけだから、必要最低限の剣術が出来ればいいしね!」
僕はそう言って学生寮の方に歩き始めた。
「サミー」
「なに?」
「どうでもいいけど、その幸せ家族計画みたいなの他の奴に話すなよ」
「家族計画じゃない! 家族計画になったら違う意味になっちゃうでしょ⁉ 僕は別に家族計画を立てているわけじゃないんだよ。そうじゃなくて幸せになるの!」
「はいはい。分かった、分かった」
「軽くあしらうな。もう。フィルに話した僕が間違いだった」
プンプンと怒って歩き出した僕の後ろでフィルが口を開いた。
「まったく、ほんとに分かってないな。幸せになりたいなんて、そんな事を言っていたら今が幸せじゃないみたいじゃないか。お前は今、幸せじゃないのかよ」
そんなフィルの声は僕には届かなかった。
--------------
普通(だと思っている)子の幸せ探し。
はじまりはじまり
52
お気に入りに追加
970
あなたにおすすめの小説

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。
下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。
ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。
小説家になろう様でも投稿しています。


私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

結婚式後に「爵位を継いだら直ぐに離婚する。お前とは寝室は共にしない!」と宣言されました
山葵
恋愛
結婚式が終わり、披露宴が始まる前に夫になったブランドから「これで父上の命令は守った。だが、これからは俺の好きにさせて貰う。お前とは寝室を共にする事はない。俺には愛する女がいるんだ。父上から早く爵位を譲って貰い、お前とは離婚する。お前もそのつもりでいてくれ」
確かに私達の結婚は政略結婚。
2人の間に恋愛感情は無いけれど、ブランド様に嫁ぐいじょう夫婦として寄り添い共に頑張って行ければと思っていたが…その必要も無い様だ。
ならば私も好きにさせて貰おう!!

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる