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いやぁ⋯⋯強すぎでしょぉ⋯⋯!!!
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「……」
「ええと……初めまして、ではありませんね。 とにかく……異種族通訳者のアリスと申します。 以後お見知り置きを」
じーっと見つめ合いながら無言を貫く勇者さんに向かってとりあえずの挨拶。
握手を求めて手を差し出しました。
「……人間の敵が! 消えろっ!」
「ふぇっ!?」
何やら訳の分からない言葉と共に、勇者さんがいきなり腰の剣を抜き放ちます。
ヤバい!? こんな不意の攻撃避けられませんよっ!?
もうおしまいだぁぁぁ! と。 全てを諦めて目を閉じたその時……私の身体を抱きしめる何かを感じました。
「ふぅ……。 大丈夫かい? アリス?」
「せ……セシリア!? 助かった……」
「全く……なんなんだ一体!?」
風魔法で移動速度を上昇させ、私をお姫様抱っこで救出したセシリアは苛立たしげに呟きます。
その間にも勇者さんは再び剣を構え直していました。
周囲の人達も私たちの姿を見てザワザワと集まり始めました。
「ちょっと待つんだ。 一体どうしたんだい?」
「ふんっ! お前を誰だか知らないが……死にたくなければそこをどくんだな。 その女を処刑するのが俺の使命だっ!」
「……何を訳の分からないことを?」
セシリアは不思議そうに私の方をチラッと一瞥しますが……こんな頭のおかしい人との面識は、この間の魔王さんの時よりも前には一度もありませんよっ!?
「……とにかくだアリス。 ここから逃げて衛兵を呼んできてくれ。 その方が私も戦いやすい」
「……? 大丈夫?」
「ふふっ。 安心してくれ? 魔王くんにすら負けた雑魚に私が負けるはずがない」
たっ……確かに。
あまりにも説得力のあるセシリアの言葉に、私はこっくりと頷いて……次の瞬間一目散に逃亡を開始しました。
「あっ! おいこら! 逃げるんじゃねぇ!」
その私の姿を見た勇者さんが追いかけようとしますが……。
突如として現れた炎の壁がその行先を阻みました。
言うまでもなくセシリアの魔法です。
「おっと? 悪いが君には……もう少し私と遊んでもらおうか?」
「……ふんっ! どうやら死にたいようだな」
「ふふっ。 それはどうかな?」
勇者さんとセシリアの戦いが始まった気配を感じながら……私は衛兵さんの詰所へと走り続けるのでした。
大丈夫だとは思うけど……セシリアが無事であることを祈りながら。
★★★★★
「衛兵さんっ! 早く来てください! こっちです! 友達が変なやつに襲われてるんですっ!」
詰所から衛兵さんを連れ出すことに成功した私は、早く早くと扇動しながら衛兵さん達をリードします。
やがて……相変わらず人の集まりが衰えない先程の場所へと辿り着いた私。
セシリアは無事ですかっ!?
「……ええと。 変なやつっていうのは……あの女の子のことでいいのかな?」
「……ええと。 あっちの男の方です……」
辿り着いた私の視界に飛び込んできたのは、全身に擦り傷やは切り傷やらを受けてみすぼらしい姿で地面に伏せる勇者さんと……。
その上に乗って優雅に愛読書である教科書を読み続けるセシリアなのでした。
「ええと……初めまして、ではありませんね。 とにかく……異種族通訳者のアリスと申します。 以後お見知り置きを」
じーっと見つめ合いながら無言を貫く勇者さんに向かってとりあえずの挨拶。
握手を求めて手を差し出しました。
「……人間の敵が! 消えろっ!」
「ふぇっ!?」
何やら訳の分からない言葉と共に、勇者さんがいきなり腰の剣を抜き放ちます。
ヤバい!? こんな不意の攻撃避けられませんよっ!?
もうおしまいだぁぁぁ! と。 全てを諦めて目を閉じたその時……私の身体を抱きしめる何かを感じました。
「ふぅ……。 大丈夫かい? アリス?」
「せ……セシリア!? 助かった……」
「全く……なんなんだ一体!?」
風魔法で移動速度を上昇させ、私をお姫様抱っこで救出したセシリアは苛立たしげに呟きます。
その間にも勇者さんは再び剣を構え直していました。
周囲の人達も私たちの姿を見てザワザワと集まり始めました。
「ちょっと待つんだ。 一体どうしたんだい?」
「ふんっ! お前を誰だか知らないが……死にたくなければそこをどくんだな。 その女を処刑するのが俺の使命だっ!」
「……何を訳の分からないことを?」
セシリアは不思議そうに私の方をチラッと一瞥しますが……こんな頭のおかしい人との面識は、この間の魔王さんの時よりも前には一度もありませんよっ!?
「……とにかくだアリス。 ここから逃げて衛兵を呼んできてくれ。 その方が私も戦いやすい」
「……? 大丈夫?」
「ふふっ。 安心してくれ? 魔王くんにすら負けた雑魚に私が負けるはずがない」
たっ……確かに。
あまりにも説得力のあるセシリアの言葉に、私はこっくりと頷いて……次の瞬間一目散に逃亡を開始しました。
「あっ! おいこら! 逃げるんじゃねぇ!」
その私の姿を見た勇者さんが追いかけようとしますが……。
突如として現れた炎の壁がその行先を阻みました。
言うまでもなくセシリアの魔法です。
「おっと? 悪いが君には……もう少し私と遊んでもらおうか?」
「……ふんっ! どうやら死にたいようだな」
「ふふっ。 それはどうかな?」
勇者さんとセシリアの戦いが始まった気配を感じながら……私は衛兵さんの詰所へと走り続けるのでした。
大丈夫だとは思うけど……セシリアが無事であることを祈りながら。
★★★★★
「衛兵さんっ! 早く来てください! こっちです! 友達が変なやつに襲われてるんですっ!」
詰所から衛兵さんを連れ出すことに成功した私は、早く早くと扇動しながら衛兵さん達をリードします。
やがて……相変わらず人の集まりが衰えない先程の場所へと辿り着いた私。
セシリアは無事ですかっ!?
「……ええと。 変なやつっていうのは……あの女の子のことでいいのかな?」
「……ええと。 あっちの男の方です……」
辿り着いた私の視界に飛び込んできたのは、全身に擦り傷やは切り傷やらを受けてみすぼらしい姿で地面に伏せる勇者さんと……。
その上に乗って優雅に愛読書である教科書を読み続けるセシリアなのでした。
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