どうも初めまして! 異種族通訳者のアリスと申します!

わさびもち

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成功⋯⋯ですね!

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「いやぁ……今帰ったよ。 ちょうどいい運動だった」
「「「「……」」」」

 さも当然のように、会議室にいきなり戻ってきたセシリア。
 どうやったのでしょうか……。 何か魔法が発動したような気配は察知しましたが……。

「ねぇセシリア。 一体どうやって帰ってきたの?」
「……? どうやってと言われても……行きと同じさ。 魔王城の魔法陣を弄って、ここの座標に到達するように設定した」
「……????」

 セシリアの言葉に余計混乱が深まった私でした。
 座標ってなんですか座標って!? そんなもの魔法大学で習いませんでしたよ……!?

『え……ええと。 とにかくセシリア。 彼女が魔王さんから言質をとってくれたので……この案を採用ということでよろしいでしょうか?』
『『『は……はい』』』

 セシリアに呆気に取られて微妙な空気が会議室に蔓延します……。
 それはそうとして、セシリアが魔王さんからとった言質によって、私たちの会議はとてもスムーズに進んでいきました。

 もう少しで話が完全にまとまる……。
 そう思った矢先のことでした。

『……少しいいかい? 君たちの案はとても素晴らしいと思うのだが……ひとつ問題がある。 君たちの現在のイメージを加味すると、なかなかに客足が伸びないと予想されるんだ』

 セシリアがあまり得意でないと主張している魔族の言語でそう口にしたのです。 普通に聞き取りやすい発音で上手だったのですが……まぁ完璧超人のセシリアから考えたら「得意でない」の位置づけになるのでしょうね。 
 ……くそぅ。

『むむむ……確かに。 セシリア殿の仰る通りです』
『うーん。 実績さえあれば問題ないと思うんですけどね……』
『そうだろう? そして……実は私にはひとつ。 この状況を打開するに足る名案が浮かんでいてね』
『『『……名案?』』』

 私たちの言葉に自信ありげに頷いてみせるセシリア。
 おぉ……頼もしい。

『セシリア殿。 その案を伺っても?』
『いや何。 別に難しいことでもないさ。 オークくん達一同。 君たちの元に一人の人間がいるだろう? あの雌豚さ』
『くくっ……あぁ失敬。……くくく!』

 唐突に出てきた「雌豚」という単語に思わず笑い声を漏らしてしまう私。
 そんな私と同様に何人かのオークさんも笑い声を我慢できておりませんでした。

『あの雌豚を君たちが徹底的に鍛え上げる。 それを実例として連れて行くのさ』
『……なるほど。 しかし……それを証明する方法が……』

 あ。 確かにそうですね。
 鍛えた後の雌豚さんを連れていった所で、ビフォーアフターが分からないと意味がありませんか。

『でしたら……先にお店を作ってそこで雌豚さんをトレーニングしていく様子を公開したらどうでしょうか?』
『『『それだっ!』』』

 オークさん達が一斉に声を上げました。
 セシリアも満足気に頷いた後「これで話はまとまったね?」と言い残して足早に会議室を去っていきました。

「ちょっ……ちょっと待ってセシリア! ……あ」

 私もその背中を追おうと立ち上がって……料金のことを思い出しました。

『あ。 料金に関してですが……。 そうですね……オークさん達がお店を作った後、時期を見て向かいますので。 その時で結構です』
『そんなお心遣いまで……ありがとうございます。 必ずや。 我らのイメージアップを完遂してみせます!』
『ふふっ。 頑張ってくださいね?』

 最後にがっしりと。
 固い握手を交わして私はオークさん達の村を後にするのでした。
 二件目のお仕事……完了ですっ!

 ★★★★★

 オークさん達とのやり取りがあってから約一ヶ月が経過して。
 何やら王都で新しいボディビル店が話題になっているという事なので。 私とセシリアはそのお店の辺りへとやって来ました。

「うーん。 ……あっ! あった!」
「ほぅ……。 なかなかに悪くない外観じゃないか」

 これから話題のショーがあるらしく。
 近くには私たち以外の人影も数多く散見されました。

「レディース&ジェントルメン! キョウモワレラガショーヲタノシンデイッテクレ……ダサイ」
「「「「「わぁぁぁぁ!」」」」」
「ホンジツモショーノシュヤクヲツトメテモラウ……ワレラガメスブタノサンジョウ!」

 通訳役のオークさんのカタコトながらも愛らしいアナウンスに連れられて。 煙幕の中から出てきたのは一人の女性でした。
 タプンタプンと大きなお腹を揺らしてメスオーク……おっと失礼。 我らが雌豚さんが現れました。
 心做しか、以前あった時よりも筋肉質になって少し美しくなっているような……いやいやまさか。

「ねぇセシリア。 ちょっと雌豚さん美人になってない?」
「ふふっ。 実はね、彼女は私の古い知り合いなのさ。 ……と言っても私もつい先日まで忘れているくらい希薄な縁であったんだけどね。 幼い頃の彼女は割と可愛らしかったから……それは気のせいではないかもね」
「へぇ……ってえぇ!? セシリアって雌豚さんと知り合いだったの? なんで教えてくれなかったの!?」
「私も先日思い出したって言っただろう? 少なくともあの時はまだ忘れていたからね」
「……ふーん。 まぁいいや! 早くお金を貰いに行こっか!」

 なーんか怪しいセシリアの事はとりあえず置いておいて。
 私は意気揚々とお店へと突入していくのでした。

 ……その日。
 私が手に入れた金額は金貨八枚。
 私たちが購入した家の半分を賄える料金を軽くて渡されたのです。 戦慄を感じると共に……「このまま通訳として雇ってもらうのもありでは!?」と思ったのはナイショです。
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