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情報操作
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「えーっと⋯⋯川瀬さん? その⋯⋯エターナル=ナイトメアとは?」
「貴方の真名よ、平沼琴雪。 覚えていないのかもしれないけど、私と貴方は神話の時代で共に戦い⋯⋯朽ちた盟友なのよ。」
なかなかに豊かな胸を張りながら得意気な顔で宣言する川瀬を見つめる。 ⋯⋯顔は100点満点なんだけどなぁ。
「まぁいいや。 とりあえずよろしく頼む! 川瀬⋯⋯さん?」
とりあえず、任務のためにもクラスの奴らと仲良くなる必要があるからな。 顔は本当に良いからあわよくば⋯⋯ということも考慮できるし。
「ふむ⋯⋯そうね。 私のことは亜莉朱と呼んで貰って構わないわよ。」
「おぉ、分かった。それじゃあ俺のことも琴雪で構わねぇ。」
「はーい。 一時間目始めるわよ!」
アリスと再び固い握手を結んだその時、チャイムが鳴り響き瞬春が大きく叫んだ。 どうやら、彼女が授業をするようだ。 一時間目は⋯⋯英語だったな。
「それじゃあ今日は昨日の復習から! いくよー!」
俺は瞬春の肢体を眺めながら、真っ白な新品のノートを開くのであった。
―――
どこからか喧しいサイレンの音が聞こえる。
そんな俺の目の前ではメラメラと炎が立ち上っていた。ハッと振り向くと後ろにもその炎は迫っている。
俺の横にいる一組の男女は、俺を間に挟みながら何かを叫んでいた。
メキリ、と。 何かが壊れる音が聞こえる。 その音は少しずつ大きくなっていき、俺の心の焦燥感を掻き立てる。 そしてバキリ、と。 そんな音がして上から天井が落ちてきた。 不思議とそれはゆっくりと、異常なほどゆっくりと俺に近づいて行った。
(あぁ。 俺、死ぬんだな。)
無限にも思える長い時間で、とっくに察しがついている。 横にいた一組の男女は頭から血をダラダラと流しながら、とっくに地に伏していた。 もう天井は、俺の
頭スレスレまで落ちてきている。
⋯⋯すべてを諦めてゆっくりと目を瞑ったところで。
「うわぁぁぁぁ!」
俺の意識は完全に覚醒した。
叫び声に反応した周囲の人々の俺を見る視線が痛い。
(あれ? ここは⋯⋯教室? ⋯⋯そうか、夢だったのか。)
自分の周囲に炎が立ち上っていないことを確認して胸を撫で下ろす。
「大丈夫か? 琴雪? 古の時の夢でも見ていたのか?」
俺のことを心配そうに見つめる美少女のことを微笑ましく思う。台詞は非常に残念だが。とりあえず、本当に夢で良かった。 さてさて⋯⋯ 心地よい安堵感でなんだか眠くなってきたな。
俺は机の上に突っ伏そうとして⋯⋯その頭を掴まれた。
「おいおい? 転校やらで疲れていると思ったから一度は見逃してやるつもりだったが⋯⋯二度は流石に許せないなぁ。」
「あ⋯⋯。」
現実とは小説のようにすべて上手くいくものではなく、いつの間にか背後に回っていた瞬春さんに捕まってしまった。
うん⋯⋯普通に怖い。 いや、表情は笑っているのだが目が笑ってない。
どれくらい怖いか、と言うとあのアリスだって俯いて黙り込んでしまう程、といえば理解して貰えるだろう。
「まぁ。 ⋯⋯ひとつチャンスをあげようか?」
「は?」
瞬春さんの思わぬ発言に、間の抜けた声をあげてしまった。 チャンス、だと?
「今から書く英文を完全に訳すことができれば、授業中、好きにしてもらって構わないよ? 訳せなかったら受けてもらうけどね。」
ニヤリと笑いながら瞬間移動した、瞬春さんが黒板に英文を書き始める。
⋯⋯なるほどな。 俺は瞬春さんの思惑が理解出来た。
彼女は、俺のために一役かってくれてるのだろう。 俺が幼い頃から温斗に勉強を教えて貰っていたことは組織内の人間⋯⋯と言っても四人だが、は全員知っている。 こんな高校生での内容など、10歳の頃にはマスターしていた。
先程注意したのは、恐らく教師としての面目を保つためで本心は任務さえやってもらえばどうでもいいと考えているのだろう。
「よーし! これを訳してみたまえ!」
バンと黒板を叩きながら、ニヤリと得意気な顔で僕にチョークを向けた。
(⋯⋯おいおい。 これを和訳するのかよ。)
正直、これを普通の高校生に訳すのはまず不可能である。 普通に習っていない用法で書かれているからである。 もっとも、俺なら簡単にできるのだが。
それでもあまり、和訳したくない。 それはその内容があまりにも酷いものであるからだ。 しかし⋯⋯自由を得るためだ!
本当は亜莉朱がいない所で訳したいのだが⋯⋯瞬春さんは以外にもイジワルなんだな。
チラッと横目で見るとアリスは英文を見てニヤニヤしていた。 もしかしてこれを理解しているのか?
⋯⋯まさかな。
グズっても仕方ないので、必要経費だと割り切って俺は口を開くのであった。
「俺の名は平沼琴雪。 人呼んで『エターナル=ナイトメア』だ。『カタストロフ=ミラージャー』、この世では川瀬亜莉朱として生活している、神話の時代からの盟友とここで再会した。 ⋯⋯です。」
「ぷッ⋯⋯ププッ! アハハハハハハ! 正解、正解! 大正解だよ! 好きにしていいぞ! ⋯⋯ププッ!」
俺の答えを聞いて笑っている瞬春さん。 それを冷ややかな目線で見つめる生徒が半分、同じように笑っている生徒が半分程だった。 そして⋯⋯
「ふっ⋯⋯やはり思い出したのね。 琴雪よ。」
「うるせぇ。 明らかな情報操作だろ。」
「信じていたわ! さぁ新たな時代の幕開けよ!」
「話を聞け!」
アリスはとても生き生きとしていた。
授業は、もはや収集がつかなくなっている。
ともあれ、俺は授業中を自由に過ごせる権利を手に入れた。 ⋯⋯失ったものも膨大であるが。
前途は多難である。
「貴方の真名よ、平沼琴雪。 覚えていないのかもしれないけど、私と貴方は神話の時代で共に戦い⋯⋯朽ちた盟友なのよ。」
なかなかに豊かな胸を張りながら得意気な顔で宣言する川瀬を見つめる。 ⋯⋯顔は100点満点なんだけどなぁ。
「まぁいいや。 とりあえずよろしく頼む! 川瀬⋯⋯さん?」
とりあえず、任務のためにもクラスの奴らと仲良くなる必要があるからな。 顔は本当に良いからあわよくば⋯⋯ということも考慮できるし。
「ふむ⋯⋯そうね。 私のことは亜莉朱と呼んで貰って構わないわよ。」
「おぉ、分かった。それじゃあ俺のことも琴雪で構わねぇ。」
「はーい。 一時間目始めるわよ!」
アリスと再び固い握手を結んだその時、チャイムが鳴り響き瞬春が大きく叫んだ。 どうやら、彼女が授業をするようだ。 一時間目は⋯⋯英語だったな。
「それじゃあ今日は昨日の復習から! いくよー!」
俺は瞬春の肢体を眺めながら、真っ白な新品のノートを開くのであった。
―――
どこからか喧しいサイレンの音が聞こえる。
そんな俺の目の前ではメラメラと炎が立ち上っていた。ハッと振り向くと後ろにもその炎は迫っている。
俺の横にいる一組の男女は、俺を間に挟みながら何かを叫んでいた。
メキリ、と。 何かが壊れる音が聞こえる。 その音は少しずつ大きくなっていき、俺の心の焦燥感を掻き立てる。 そしてバキリ、と。 そんな音がして上から天井が落ちてきた。 不思議とそれはゆっくりと、異常なほどゆっくりと俺に近づいて行った。
(あぁ。 俺、死ぬんだな。)
無限にも思える長い時間で、とっくに察しがついている。 横にいた一組の男女は頭から血をダラダラと流しながら、とっくに地に伏していた。 もう天井は、俺の
頭スレスレまで落ちてきている。
⋯⋯すべてを諦めてゆっくりと目を瞑ったところで。
「うわぁぁぁぁ!」
俺の意識は完全に覚醒した。
叫び声に反応した周囲の人々の俺を見る視線が痛い。
(あれ? ここは⋯⋯教室? ⋯⋯そうか、夢だったのか。)
自分の周囲に炎が立ち上っていないことを確認して胸を撫で下ろす。
「大丈夫か? 琴雪? 古の時の夢でも見ていたのか?」
俺のことを心配そうに見つめる美少女のことを微笑ましく思う。台詞は非常に残念だが。とりあえず、本当に夢で良かった。 さてさて⋯⋯ 心地よい安堵感でなんだか眠くなってきたな。
俺は机の上に突っ伏そうとして⋯⋯その頭を掴まれた。
「おいおい? 転校やらで疲れていると思ったから一度は見逃してやるつもりだったが⋯⋯二度は流石に許せないなぁ。」
「あ⋯⋯。」
現実とは小説のようにすべて上手くいくものではなく、いつの間にか背後に回っていた瞬春さんに捕まってしまった。
うん⋯⋯普通に怖い。 いや、表情は笑っているのだが目が笑ってない。
どれくらい怖いか、と言うとあのアリスだって俯いて黙り込んでしまう程、といえば理解して貰えるだろう。
「まぁ。 ⋯⋯ひとつチャンスをあげようか?」
「は?」
瞬春さんの思わぬ発言に、間の抜けた声をあげてしまった。 チャンス、だと?
「今から書く英文を完全に訳すことができれば、授業中、好きにしてもらって構わないよ? 訳せなかったら受けてもらうけどね。」
ニヤリと笑いながら瞬間移動した、瞬春さんが黒板に英文を書き始める。
⋯⋯なるほどな。 俺は瞬春さんの思惑が理解出来た。
彼女は、俺のために一役かってくれてるのだろう。 俺が幼い頃から温斗に勉強を教えて貰っていたことは組織内の人間⋯⋯と言っても四人だが、は全員知っている。 こんな高校生での内容など、10歳の頃にはマスターしていた。
先程注意したのは、恐らく教師としての面目を保つためで本心は任務さえやってもらえばどうでもいいと考えているのだろう。
「よーし! これを訳してみたまえ!」
バンと黒板を叩きながら、ニヤリと得意気な顔で僕にチョークを向けた。
(⋯⋯おいおい。 これを和訳するのかよ。)
正直、これを普通の高校生に訳すのはまず不可能である。 普通に習っていない用法で書かれているからである。 もっとも、俺なら簡単にできるのだが。
それでもあまり、和訳したくない。 それはその内容があまりにも酷いものであるからだ。 しかし⋯⋯自由を得るためだ!
本当は亜莉朱がいない所で訳したいのだが⋯⋯瞬春さんは以外にもイジワルなんだな。
チラッと横目で見るとアリスは英文を見てニヤニヤしていた。 もしかしてこれを理解しているのか?
⋯⋯まさかな。
グズっても仕方ないので、必要経費だと割り切って俺は口を開くのであった。
「俺の名は平沼琴雪。 人呼んで『エターナル=ナイトメア』だ。『カタストロフ=ミラージャー』、この世では川瀬亜莉朱として生活している、神話の時代からの盟友とここで再会した。 ⋯⋯です。」
「ぷッ⋯⋯ププッ! アハハハハハハ! 正解、正解! 大正解だよ! 好きにしていいぞ! ⋯⋯ププッ!」
俺の答えを聞いて笑っている瞬春さん。 それを冷ややかな目線で見つめる生徒が半分、同じように笑っている生徒が半分程だった。 そして⋯⋯
「ふっ⋯⋯やはり思い出したのね。 琴雪よ。」
「うるせぇ。 明らかな情報操作だろ。」
「信じていたわ! さぁ新たな時代の幕開けよ!」
「話を聞け!」
アリスはとても生き生きとしていた。
授業は、もはや収集がつかなくなっている。
ともあれ、俺は授業中を自由に過ごせる権利を手に入れた。 ⋯⋯失ったものも膨大であるが。
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