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「ちょっと! もう少し計画をきちんと立ててから実行してよ‼︎」
「ええ? ちゃんとしたわよ!」
高速道路をスポーツカーでぶっ飛ばす2人組の美女(※自称)。
後ろからは沢山の黒い車が追いかけてきている。
黒い車から身を乗り出した厳ついにいちゃん達が、映画の舞台でしか滅多にお目にかかれないような黒光りする銃で手厚くもてなしてくれていた。
ガンッガンッという音が車内に響く。
しかし、私達ーー2人組の美女(※自称)ーーが乗っているスポーツカーはフィルムとタイヤ、ガラスを防弾式に改造しているので普通の弾なら効かない。
だけど、防げると言ったって精々数発が限界。
こんなふうに大勢の方からの銃撃は対応していないのである。
つまり、『大ピンチ』というわけだ。
何故こうなったのか、時は3時間ほど前に遡る。
○○○
今回私たちが狙ったのは極道が運営している会社にある機密情報だった。
私と百合は時間差で会社内に潜り込んだ。後は百合が騒ぎを起こし、その内に私が機密情報をいただくという話だったのだが……
ガチャリと扉の開く音がする。1人部屋に閉じ込められていた女性ーー百合ーーはゆっくりと顔をあげた。
「遅いわよ」
ブスッとした表情を浮かべ、入ってきた私を詰る。
「いや~ごめんって。いい演技だったよ? 機密情報のコピーはちゃんとここにあるし!」
サッと誰もいないのを確認した私は、緊張を解いて百合に軽く手を合わせて謝った。ついでに今回のお宝の確保も報告しておいた。
「ならいいわ」
にんまりと唇を吊り上げて得意げに笑みを浮かべてポンポンと私の肩を叩く百合。
どうやらご機嫌は治ったようだ。
「逃走通路に異変は?」
「なし」
アイコンタクトをとり、2人で部屋を抜け出す。
今回の計画は後一歩で成功のところまで来ていた
ーーが、世の中そんなに甘くはなかったらしい。どうやら逃走通路に防犯カメラがあったようで、会社から出た瞬間黒服に囲まれた。
「百合~! 確認してって何度も言ったよね⁉︎」
「はぁ⁉︎ あの暗闇の中できるわけないじゃない!」
怒鳴り合いをしながら黒服達を倒していく。ちなみに百合は空手黒帯。私はボクシング歴5年である。街中での発砲は面倒事を避ける為、ピストルを出してこないのは予想済み。つまり、残るは肉弾戦である。
よって、私達の方が軍配が上がった。
バチッという音と同時に1人の黒服が倒れる。
そう、ちょ~っとだけ電撃を強めに改良した電気ショックを用意していたのだ。
「うふっ」
「へへっ」
にやりと悪い笑みを浮かべる百合と柚李。
警戒してジリジリと広がっていく包囲網を、ここぞとばかりに百合が怯んだ黒服を狙ってブン殴り突破口を作り出す。
急いで近くに止めていた相棒のスポーツカーに飛び乗り、逃げ出したのだった。
○○○
これが冒頭部になるまでの事の顛末である。
ガンッバキッ
周りに一般車はいない、多分極道の連中が根回ししたのだろう。
ははは……と私の口から乾いた笑い声が漏れる。それぐらい今の状況は悪かった。
「ちょっと、どうすんの?」
「東京湾に沈められるんじゃね?」
「あーもう! 柚李、そろそろ私が運転変わるからやっちゃって」
「了解」
ガシャンと手渡される見るからに物騒な銃。特殊加工された機関銃ーーマシンガンーーであった。スポーツカーのスピードがグンっと上がる。
アクセルを踏むだけたなのに、どうして運転する人によって出せるスピードに差が出るのか……納得いかない。そんなことを考えながら私は百合に確認した。
「弾は?」
「特注品」
「なら、よし。バイバーイ」
ヒョイっと銃口を後ろから追っかけてくる黒い車に向けて、ぶちかます。
ドガガガガガガァァァァンッ‼︎
派手な爆発音と共に次々と黒い車達が吹っ飛んでいった。私はその様子を見ながらポツリと呟いた。
「うわぉ、アクション映画顔負けの爆発だねぇ。やっぱ派手な方が達成感がある」
「そんなわけないでしょ‼︎」
画して美少女怪盗(※自称)百合&柚李による一世一代の大仕事は終わったのであったーー
・
・
・
・
・
・
・
ーーはずだったのだが……
「おい、冗談じゃないよ。誰か嘘と言っておくれ……」
気絶したフリをしながらボソリと呟く。
黒い車から逃げ切った直後、私は百合と共に異世界に召喚されていた。
所謂、異世界召喚とやらだ。
目の前にはやたら西洋風のキラキラした美男子が私と百合の目の前に立っている。
今回盗んだお宝売れば、今頃億万長者になれた筈なのに……ぜーんぶ、おじゃんになっちまったじゃないか!
ケッと心の中で毒づきながら何か他にないのかと慎重に辺りを見回す。が、イケメン以外に生物は存在していなかった。
「んん……ここは?」
ここで、やっと意識が戻ったらしい百合が、ゆっくりと目を擦りながら起き上がる。それに伴って私も今さっき意識が戻ったかのように演技をしつつ起き上がった。
「おお! 2人とも目を覚まされましたか、聖女様方‼︎」
目の前に立っていた神官風の若い男性がにっこりと笑顔を浮かべて近寄ってくる。
「あの……? ここはどこなんでしょう? 私達は仕事から帰る途中だったのですが……」
百合がゆっくりと神官風の若い男性に問う。お得意の演技で、か弱い雰囲気を出していた。
「私はグーハと申します。ここはあなた方のいた世界とは全く別の世界です。私達はこの国を魔王の災厄から守って頂こうとあなた方をお呼びしました」
スッと真剣な顔になり、説明してくれる神官風の男性グーハさん。しかし、私はその雰囲気をどこかで感じたことがあった。
あー、結構前にお金騙し取ってやった……あのいけすかない詐欺師の野郎と同じ雰囲気だわ。
つまり信用ならないという事。
私がグーハ及び、この世界に対する警戒を強めたのに対し、百合は情報を引き出すのが得策と考えたようでふるふると震えながらグーハの服をギュッと握る。それはまるで道に迷った幼児のようで、わざとだと分かっている私でも、守ってあげたくなるような、そんな雰囲気が出ていた。
「そんな……聖女? 私達にはそんな力は無いです」
うるうると涙目でグーハを見つめる百合。庇護欲を誘う。そして百合の思惑通り、か弱いオーラに当てられたグーハは慌てた様子で弁解を始めた。
「ああ、そんなに怯えないでください。大丈夫です。別世界から来た人々は皆、私たちの世界には存在しないエネルギーを体内に内包しているのですよ。でなければここに来る前に死んでいます」
「「え?」」
え? もしエネルギー無かったら私達死んじゃってたの? マジで?
グーハの説明な中には無視できない単語が出てきており、私は一瞬ヒヤッとする。それは百合も同じだったようで、少し顔を青褪めさせていた。
「やはり衝撃が強すぎたようですね。あなた方に酷なことを言っているのは自覚しております。とりあえず、今日はお休みください」
私達の様子を見たグーハはますます慌てた様子で私達2人を別の部屋へ案内した。
「ではごゆっくり」
バタンと重厚な作りの扉が閉められていく音を聞きながら私は呆然と突っ立っていた。
「なにこの状況」
真っ先に口を開いたのは百合である。先程の弱々しさは全くない。ドサっと近くにあったやたら豪奢なベットに寝転んでいる。
「私が思うに、誤魔化してるわね」
「同意。知られたくないことがあるか……」
「確か、私たちにはこの国には無いエネルギーがあるって言ってたわよね?」
「戦力増強? 人間兵器的な?」
「否定は出来ないわ」
そこまで話して百合と顔を見合わせてニヤリと笑った。
「「ここ、お宝沢山ありそうね」」
ここの国の人には申し訳ないが、私達は聖女などと言う面倒なことはやるつもりはなかった。
「ふっ、私達の一世一代の命を賭けた大仕事をゼロにしてくれたんだもの。ちゃーんと慰謝料払ってもらう必要があると思わない?」
ビキビキと額に青筋を浮かべて笑う百合。それを見て私はこう思った。
"うん、百合を敵に回すのだけは避けよう"
ーーと。
「ええ? ちゃんとしたわよ!」
高速道路をスポーツカーでぶっ飛ばす2人組の美女(※自称)。
後ろからは沢山の黒い車が追いかけてきている。
黒い車から身を乗り出した厳ついにいちゃん達が、映画の舞台でしか滅多にお目にかかれないような黒光りする銃で手厚くもてなしてくれていた。
ガンッガンッという音が車内に響く。
しかし、私達ーー2人組の美女(※自称)ーーが乗っているスポーツカーはフィルムとタイヤ、ガラスを防弾式に改造しているので普通の弾なら効かない。
だけど、防げると言ったって精々数発が限界。
こんなふうに大勢の方からの銃撃は対応していないのである。
つまり、『大ピンチ』というわけだ。
何故こうなったのか、時は3時間ほど前に遡る。
○○○
今回私たちが狙ったのは極道が運営している会社にある機密情報だった。
私と百合は時間差で会社内に潜り込んだ。後は百合が騒ぎを起こし、その内に私が機密情報をいただくという話だったのだが……
ガチャリと扉の開く音がする。1人部屋に閉じ込められていた女性ーー百合ーーはゆっくりと顔をあげた。
「遅いわよ」
ブスッとした表情を浮かべ、入ってきた私を詰る。
「いや~ごめんって。いい演技だったよ? 機密情報のコピーはちゃんとここにあるし!」
サッと誰もいないのを確認した私は、緊張を解いて百合に軽く手を合わせて謝った。ついでに今回のお宝の確保も報告しておいた。
「ならいいわ」
にんまりと唇を吊り上げて得意げに笑みを浮かべてポンポンと私の肩を叩く百合。
どうやらご機嫌は治ったようだ。
「逃走通路に異変は?」
「なし」
アイコンタクトをとり、2人で部屋を抜け出す。
今回の計画は後一歩で成功のところまで来ていた
ーーが、世の中そんなに甘くはなかったらしい。どうやら逃走通路に防犯カメラがあったようで、会社から出た瞬間黒服に囲まれた。
「百合~! 確認してって何度も言ったよね⁉︎」
「はぁ⁉︎ あの暗闇の中できるわけないじゃない!」
怒鳴り合いをしながら黒服達を倒していく。ちなみに百合は空手黒帯。私はボクシング歴5年である。街中での発砲は面倒事を避ける為、ピストルを出してこないのは予想済み。つまり、残るは肉弾戦である。
よって、私達の方が軍配が上がった。
バチッという音と同時に1人の黒服が倒れる。
そう、ちょ~っとだけ電撃を強めに改良した電気ショックを用意していたのだ。
「うふっ」
「へへっ」
にやりと悪い笑みを浮かべる百合と柚李。
警戒してジリジリと広がっていく包囲網を、ここぞとばかりに百合が怯んだ黒服を狙ってブン殴り突破口を作り出す。
急いで近くに止めていた相棒のスポーツカーに飛び乗り、逃げ出したのだった。
○○○
これが冒頭部になるまでの事の顛末である。
ガンッバキッ
周りに一般車はいない、多分極道の連中が根回ししたのだろう。
ははは……と私の口から乾いた笑い声が漏れる。それぐらい今の状況は悪かった。
「ちょっと、どうすんの?」
「東京湾に沈められるんじゃね?」
「あーもう! 柚李、そろそろ私が運転変わるからやっちゃって」
「了解」
ガシャンと手渡される見るからに物騒な銃。特殊加工された機関銃ーーマシンガンーーであった。スポーツカーのスピードがグンっと上がる。
アクセルを踏むだけたなのに、どうして運転する人によって出せるスピードに差が出るのか……納得いかない。そんなことを考えながら私は百合に確認した。
「弾は?」
「特注品」
「なら、よし。バイバーイ」
ヒョイっと銃口を後ろから追っかけてくる黒い車に向けて、ぶちかます。
ドガガガガガガァァァァンッ‼︎
派手な爆発音と共に次々と黒い車達が吹っ飛んでいった。私はその様子を見ながらポツリと呟いた。
「うわぉ、アクション映画顔負けの爆発だねぇ。やっぱ派手な方が達成感がある」
「そんなわけないでしょ‼︎」
画して美少女怪盗(※自称)百合&柚李による一世一代の大仕事は終わったのであったーー
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ーーはずだったのだが……
「おい、冗談じゃないよ。誰か嘘と言っておくれ……」
気絶したフリをしながらボソリと呟く。
黒い車から逃げ切った直後、私は百合と共に異世界に召喚されていた。
所謂、異世界召喚とやらだ。
目の前にはやたら西洋風のキラキラした美男子が私と百合の目の前に立っている。
今回盗んだお宝売れば、今頃億万長者になれた筈なのに……ぜーんぶ、おじゃんになっちまったじゃないか!
ケッと心の中で毒づきながら何か他にないのかと慎重に辺りを見回す。が、イケメン以外に生物は存在していなかった。
「んん……ここは?」
ここで、やっと意識が戻ったらしい百合が、ゆっくりと目を擦りながら起き上がる。それに伴って私も今さっき意識が戻ったかのように演技をしつつ起き上がった。
「おお! 2人とも目を覚まされましたか、聖女様方‼︎」
目の前に立っていた神官風の若い男性がにっこりと笑顔を浮かべて近寄ってくる。
「あの……? ここはどこなんでしょう? 私達は仕事から帰る途中だったのですが……」
百合がゆっくりと神官風の若い男性に問う。お得意の演技で、か弱い雰囲気を出していた。
「私はグーハと申します。ここはあなた方のいた世界とは全く別の世界です。私達はこの国を魔王の災厄から守って頂こうとあなた方をお呼びしました」
スッと真剣な顔になり、説明してくれる神官風の男性グーハさん。しかし、私はその雰囲気をどこかで感じたことがあった。
あー、結構前にお金騙し取ってやった……あのいけすかない詐欺師の野郎と同じ雰囲気だわ。
つまり信用ならないという事。
私がグーハ及び、この世界に対する警戒を強めたのに対し、百合は情報を引き出すのが得策と考えたようでふるふると震えながらグーハの服をギュッと握る。それはまるで道に迷った幼児のようで、わざとだと分かっている私でも、守ってあげたくなるような、そんな雰囲気が出ていた。
「そんな……聖女? 私達にはそんな力は無いです」
うるうると涙目でグーハを見つめる百合。庇護欲を誘う。そして百合の思惑通り、か弱いオーラに当てられたグーハは慌てた様子で弁解を始めた。
「ああ、そんなに怯えないでください。大丈夫です。別世界から来た人々は皆、私たちの世界には存在しないエネルギーを体内に内包しているのですよ。でなければここに来る前に死んでいます」
「「え?」」
え? もしエネルギー無かったら私達死んじゃってたの? マジで?
グーハの説明な中には無視できない単語が出てきており、私は一瞬ヒヤッとする。それは百合も同じだったようで、少し顔を青褪めさせていた。
「やはり衝撃が強すぎたようですね。あなた方に酷なことを言っているのは自覚しております。とりあえず、今日はお休みください」
私達の様子を見たグーハはますます慌てた様子で私達2人を別の部屋へ案内した。
「ではごゆっくり」
バタンと重厚な作りの扉が閉められていく音を聞きながら私は呆然と突っ立っていた。
「なにこの状況」
真っ先に口を開いたのは百合である。先程の弱々しさは全くない。ドサっと近くにあったやたら豪奢なベットに寝転んでいる。
「私が思うに、誤魔化してるわね」
「同意。知られたくないことがあるか……」
「確か、私たちにはこの国には無いエネルギーがあるって言ってたわよね?」
「戦力増強? 人間兵器的な?」
「否定は出来ないわ」
そこまで話して百合と顔を見合わせてニヤリと笑った。
「「ここ、お宝沢山ありそうね」」
ここの国の人には申し訳ないが、私達は聖女などと言う面倒なことはやるつもりはなかった。
「ふっ、私達の一世一代の命を賭けた大仕事をゼロにしてくれたんだもの。ちゃーんと慰謝料払ってもらう必要があると思わない?」
ビキビキと額に青筋を浮かべて笑う百合。それを見て私はこう思った。
"うん、百合を敵に回すのだけは避けよう"
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