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「おい、どこだよ聖結界ってのは? ここが魔の森の最深部なんじゃなかったのか?」
王子様のような金髪ヘアの美男子が聖結界の前で唸っている。
「いえ、ここのはずなんですが……おかしいですね」
紺色の長髪を綺麗にくくった美男子も唸っていた。
「あーお腹すいた~!」
そして、その2人を眺めながらイジイジと土いじりをしている小柄な人物が1人。赤褐色の髪がぴょんぴょんとあちこちにはねている。
あー、コレは放っておいてもいいかも? そう呑気に思ったリン。
ーーと、バチリと赤褐色の人物と目が合った。
「あれえ? 君、なんでここにいるのぉ?」
「て、偵察かなぁ?」
ジリジリと後ずさったリン。しかし、時すでに遅く周りは紺色と金色、赤褐の髪色の人物に囲まれていた。
「偵察だとしても、ここは魔の森の最深部です。あなたのようなか弱い人物がここまで来れるなんてあり得ません。理由をお聞きしても?」
「て、偵察というか交渉というか……」
チラリとマーサ達の方を見れば聖結界の中から、"あーあやらかしましたね……"みたいな顔をして眺めていた。
「? そこに何があるんです? 木しかないですよね?」
紺色が不思議そうに聖結界を眺めている。どうやら中身が見えないらしい。幻覚作用もついているのだろう。
ガレア王国の聖結界はそんな事なかったのにな~なんて呑気に考えながらリンは転移魔法を発動してカラフル頭3人組から離れる。
「なっ⁉︎」
「ふぅ~ん」
「……」
不思議そうにリンを眺めるカラフル3人組の目に緊張が走った。
あ、コレはヤバい。
「あの、帰っていただけませんかね?」
ド直球でお願いする。
横目でマーサを見ると、頭を抱えていた。どうやら私はセリフを間違えたみたいだ。
「へぇ~、僕たちに命令するの?」
「貴方は何か知っているようですね。ならば強引にでも聞き出すまで」
「おいおい、ナメてんのかぁ?」
めっちゃキレるじゃん⁉︎
次々と襲いかかってくるカラフル達をいなし、捕らえていく。
数十秒と経たずにリンの周囲には、カラフル頭達が伸びていた。
「リン様! やらかしましたね?」
昔のようにギロリと睨みつけてくるオリビアを懐かしく思いながら、うんと頷く。グリグリと頭にゲンコツをもらった。
「コイツらはどうしましょうか?」
グルからの問いに、少し考え込んで指示を出した。
「この前建てた高級旅館に縛って放り込んどいて」
「え? 牢じゃなくて?」
「そ、高級旅館よ」
「分かりました」
不満げなオリビアとグルはカラフル3人組を軽々と持ち上げて聖結界内に運んでいくのだった。
○○○
「な、なんだここはぁーーーーーーーーーー!?」
「すっげえぇぇぇぇーーーーーーーーーー‼︎」
「す、素晴らしい‼︎」
高級旅館内に大音量で響く声。カラフル3人組は神聖水のお風呂に浸かり、ここでしか味わえない料理に舌鼓を打っていた。
もごもごと口いっぱいになんちゃって海鮮丼を頬張り、キラキラと目を輝かせている3人組にリンはニヤリとほくそ笑んで口を開いた。
「どうです? もし、黙ってくれていたらこのサービスを永遠に受けることができますよ? 勿論、お金はいただきますけれど。ですが……」
途中で不自然に止められた話に怪訝そうにリンを見る3人。
「話を止めんな。全部言え」
よっしゃ、待ってましたその言葉ぁ‼︎
「ですが、情報をいただけるのでしたらお安くしておきますよ?」
「……それはガレア王国の、という事ですか?」
紺色の長髪をサラリと揺らして問いかけてくるルルブにニコリと微笑む。
「……なるほど、分かりました。ダヤラ、どうしますか?」
「んなもん決まってんだろ? ガレア王国よりこっちにつく。その方が面白そうだ」
あっさりと決まったその答えに、リンは内心狂喜乱舞していた。
オリビアありがとうーーーーーーーーーー!
実は、3人組を運び入れ後、コッテリと絞られたのである。
『いいですか? 全てを話さない事! リン様は顔はいいんですからにっこり微笑んでおけばいいのです! 飴と鞭を与えればコイツらは言いなりになりますので! そもそも単細胞なのでリン様が心配するような事態にはなりません!』
今思い返せば、相当失礼な事を言っていたように思う。
「んで、情報が欲しいんだろ?」
金髪王子風のダヤラの問いかけに、一瞬現実逃避していたリンはハッと我に帰り頷く。
「いいぜ? ルルブ」
「はい、現在のガレア王国はーー」
サラリと髪を揺らして答えてくれたルルブは想像以上に情報を知っていた。
「やっぱり魔石が欲しいんだね。それから聖教会の聖結界が感知できる魔道具も邪魔だねぇ」
なんとかならないものか……うーんと唸るリンにそっと寄り添うオリビア。
「消せば良いのです。消せば」
「あ、それ私も思った」
ぼそっと呟かれた言葉に同意するリン。
「じゃあ、消そっか」
今ならなんかいける気がする! そうグルグル肩を回すリンを慌てて止めたのはルルブであった。
「ちょ、ちょっと待ってください! 聖教会を消されると戦争になります。あなた方の国はいいでしょうが、周辺の小さな国々はひとたまりもありません」
「そう言われても……もう、聖教会から軍隊きてるの」
正確にはガレア王国の裏でコソコソしてるんだけど……
「は?」
意味がわからないというような顔をして私たちを見るルルブに、告げる。
「だーかーらー、あなたの国の王様は貴方達が帰ってくるのが遅すぎて聖教会に協力を申し出たそうよ。それから、今回は王様も出てきているみたい」
そして、魔の森に進軍中。コレは今現在、偵察に出ているグルが教えてくれた。
グルは隠密スキルも持っており、とても優秀であった。
「てなわけで、私達は国を守る為にガレア王国と戦争します」
嗚呼、やっと私の復讐が叶う。今届いた情報によれば、元お父様もいらっしゃるようーー
「なんてイイ日なの!」
ポカンとしている3人組に視線を戻し、私は指示を出した。
「じゃあ、王様達を油断させてね」
「は?」
「え?」
「はい?」
ポカンとする3人組を強制転移させ、進軍中のガレア王国軍の近くに落とす。コレで舞台は整った。
「じゃあ、準備しよっか。オリビア」
「はい」
・
・
・
・
・
・
・
・
この日、魔の森に巨大な亜人国家が誕生する。どこの領地でもなかった為、各国は渋々受け入れるしかなかった。
一方で、ガレア王国は抗議の為、聖教会と協定を結び連合軍を送り込んだーー
王子様のような金髪ヘアの美男子が聖結界の前で唸っている。
「いえ、ここのはずなんですが……おかしいですね」
紺色の長髪を綺麗にくくった美男子も唸っていた。
「あーお腹すいた~!」
そして、その2人を眺めながらイジイジと土いじりをしている小柄な人物が1人。赤褐色の髪がぴょんぴょんとあちこちにはねている。
あー、コレは放っておいてもいいかも? そう呑気に思ったリン。
ーーと、バチリと赤褐色の人物と目が合った。
「あれえ? 君、なんでここにいるのぉ?」
「て、偵察かなぁ?」
ジリジリと後ずさったリン。しかし、時すでに遅く周りは紺色と金色、赤褐の髪色の人物に囲まれていた。
「偵察だとしても、ここは魔の森の最深部です。あなたのようなか弱い人物がここまで来れるなんてあり得ません。理由をお聞きしても?」
「て、偵察というか交渉というか……」
チラリとマーサ達の方を見れば聖結界の中から、"あーあやらかしましたね……"みたいな顔をして眺めていた。
「? そこに何があるんです? 木しかないですよね?」
紺色が不思議そうに聖結界を眺めている。どうやら中身が見えないらしい。幻覚作用もついているのだろう。
ガレア王国の聖結界はそんな事なかったのにな~なんて呑気に考えながらリンは転移魔法を発動してカラフル頭3人組から離れる。
「なっ⁉︎」
「ふぅ~ん」
「……」
不思議そうにリンを眺めるカラフル3人組の目に緊張が走った。
あ、コレはヤバい。
「あの、帰っていただけませんかね?」
ド直球でお願いする。
横目でマーサを見ると、頭を抱えていた。どうやら私はセリフを間違えたみたいだ。
「へぇ~、僕たちに命令するの?」
「貴方は何か知っているようですね。ならば強引にでも聞き出すまで」
「おいおい、ナメてんのかぁ?」
めっちゃキレるじゃん⁉︎
次々と襲いかかってくるカラフル達をいなし、捕らえていく。
数十秒と経たずにリンの周囲には、カラフル頭達が伸びていた。
「リン様! やらかしましたね?」
昔のようにギロリと睨みつけてくるオリビアを懐かしく思いながら、うんと頷く。グリグリと頭にゲンコツをもらった。
「コイツらはどうしましょうか?」
グルからの問いに、少し考え込んで指示を出した。
「この前建てた高級旅館に縛って放り込んどいて」
「え? 牢じゃなくて?」
「そ、高級旅館よ」
「分かりました」
不満げなオリビアとグルはカラフル3人組を軽々と持ち上げて聖結界内に運んでいくのだった。
○○○
「な、なんだここはぁーーーーーーーーーー!?」
「すっげえぇぇぇぇーーーーーーーーーー‼︎」
「す、素晴らしい‼︎」
高級旅館内に大音量で響く声。カラフル3人組は神聖水のお風呂に浸かり、ここでしか味わえない料理に舌鼓を打っていた。
もごもごと口いっぱいになんちゃって海鮮丼を頬張り、キラキラと目を輝かせている3人組にリンはニヤリとほくそ笑んで口を開いた。
「どうです? もし、黙ってくれていたらこのサービスを永遠に受けることができますよ? 勿論、お金はいただきますけれど。ですが……」
途中で不自然に止められた話に怪訝そうにリンを見る3人。
「話を止めんな。全部言え」
よっしゃ、待ってましたその言葉ぁ‼︎
「ですが、情報をいただけるのでしたらお安くしておきますよ?」
「……それはガレア王国の、という事ですか?」
紺色の長髪をサラリと揺らして問いかけてくるルルブにニコリと微笑む。
「……なるほど、分かりました。ダヤラ、どうしますか?」
「んなもん決まってんだろ? ガレア王国よりこっちにつく。その方が面白そうだ」
あっさりと決まったその答えに、リンは内心狂喜乱舞していた。
オリビアありがとうーーーーーーーーーー!
実は、3人組を運び入れ後、コッテリと絞られたのである。
『いいですか? 全てを話さない事! リン様は顔はいいんですからにっこり微笑んでおけばいいのです! 飴と鞭を与えればコイツらは言いなりになりますので! そもそも単細胞なのでリン様が心配するような事態にはなりません!』
今思い返せば、相当失礼な事を言っていたように思う。
「んで、情報が欲しいんだろ?」
金髪王子風のダヤラの問いかけに、一瞬現実逃避していたリンはハッと我に帰り頷く。
「いいぜ? ルルブ」
「はい、現在のガレア王国はーー」
サラリと髪を揺らして答えてくれたルルブは想像以上に情報を知っていた。
「やっぱり魔石が欲しいんだね。それから聖教会の聖結界が感知できる魔道具も邪魔だねぇ」
なんとかならないものか……うーんと唸るリンにそっと寄り添うオリビア。
「消せば良いのです。消せば」
「あ、それ私も思った」
ぼそっと呟かれた言葉に同意するリン。
「じゃあ、消そっか」
今ならなんかいける気がする! そうグルグル肩を回すリンを慌てて止めたのはルルブであった。
「ちょ、ちょっと待ってください! 聖教会を消されると戦争になります。あなた方の国はいいでしょうが、周辺の小さな国々はひとたまりもありません」
「そう言われても……もう、聖教会から軍隊きてるの」
正確にはガレア王国の裏でコソコソしてるんだけど……
「は?」
意味がわからないというような顔をして私たちを見るルルブに、告げる。
「だーかーらー、あなたの国の王様は貴方達が帰ってくるのが遅すぎて聖教会に協力を申し出たそうよ。それから、今回は王様も出てきているみたい」
そして、魔の森に進軍中。コレは今現在、偵察に出ているグルが教えてくれた。
グルは隠密スキルも持っており、とても優秀であった。
「てなわけで、私達は国を守る為にガレア王国と戦争します」
嗚呼、やっと私の復讐が叶う。今届いた情報によれば、元お父様もいらっしゃるようーー
「なんてイイ日なの!」
ポカンとしている3人組に視線を戻し、私は指示を出した。
「じゃあ、王様達を油断させてね」
「は?」
「え?」
「はい?」
ポカンとする3人組を強制転移させ、進軍中のガレア王国軍の近くに落とす。コレで舞台は整った。
「じゃあ、準備しよっか。オリビア」
「はい」
・
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・
・
この日、魔の森に巨大な亜人国家が誕生する。どこの領地でもなかった為、各国は渋々受け入れるしかなかった。
一方で、ガレア王国は抗議の為、聖教会と協定を結び連合軍を送り込んだーー
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