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「ただいまーーーー!」
「リン様‼︎」
「リンさまー!」

 転移魔法でついたのは、洞窟のすぐ近く。グルとギアが既に待機していた。

「なんでここが分かったの?」

 ポツリと疑問を漏らす私に、グルとギアが澄まし顔で答える。

「気配で」
「気配です」

 なんとも不思議な解答だった。

 そんな2人とオリビア、トワを連れてみんなのいる所へ向かう。

 ログハウスと、建設中の家々が立ち並ぶ光景が目に入る筈だったのだが、予想外の光景に私は目を瞬かせた。

「あれ? なんか京都の伝統的な家々が目の前に……」

 
「一部を残して完成しました」
「え?」

 珍しくドヤ顔のギアが言うには、私の記憶を頼りに作ったらこうなったと言う事だ。名をつけた時点で、イメージ伝達などは可能になっていた。だがーー

「流石にこれは……」

 目の前にそびえ立つ重厚感ある屋敷にドン引きする。トワ達が1番先に建ててくれた日本風の古民家は、何故か改造されていた。

 屋敷の広さは2倍になり、洋風の部屋まで完備されている。お風呂もあった。

「あ、ちなみに上下水道も完備しました。お風呂も個々の家々で入ることができます。そして、大浴場なのですがーー」

 リン様の記憶にありました"銭湯"というものに心惹かれて作ってみました! そう言われて案内されたのは何処か歴史にありそうな旅館風の建物。露天風呂なんかも完備されていた。

「ああ……貴重な神聖水を!」

 オリビアが顔を真っ青にして何か言っているが、知らんぷりする。

「君達、よくやった‼︎」

 案内してくれた茨木童子の美少女マナちゃんをぎゅっと抱きしめる。

「ああ、リン様がハグ……!」

 私より少し背の低いマナちゃんはとても可愛かった。そんなマナちゃんだが、実は3メートルはあろうかという大木を軽々と担げる。
 つまりは見た目で判断してはいけないのだ。

「これはみんなで造ったの?」
「ええ、そうです」

 銭湯から出て、綺麗に敷き詰められた石畳の道を歩く。瓦もしっかり作られており、色も本物とそう変わらない。

 なんだか時代劇の中に飛び込んだような感覚を覚えたのだった。

 この後、呉服屋なるものに案内され着せ替え人形になったのは割愛させていただく。

「こちらです! ずうっとぐるぐる結界の周りを回ってるんで……」

 新作の着物? を着せられ案内されたのは聖結界を張っている場所だった。

 促されて結界の外を見れば、そこには見覚えのある3人組がいた。

「あ、空気弾の!」

 まだ生きていたんだね、という言葉は飲み込む。この魔の森は様々な魔物が現れる。ここまで進んできたと言うことは、相当レベルの高い猛者なのだろう。

「どうします?」

 オリビアが手に魔力弾らしきものを発現させながら聞いてくる。空気弾より数百倍ヤバい代物である。

 今すぐにでも撃ちそうな勢いであった。

「いや、魔力弾はやめよう!」

 慌ててオリビアを止めにかかる。

「ですが、コイツらはリン様を殺そうとしたガレア王国の手先ですよ! しかも、残虐と名高い3珠士ではないですか‼︎」

 え? マジで?

 全く知らなかった情報に肌が粟立つ。私、攻撃してしまったんだけど……?

 3珠士さんにその事がバレたらヤバいよね? 即死フラグだ! ダラダラと冷や汗が流れる中、私は決断した。

「ちょっと交渉してくる‼︎」
「はい?」

 呆けた様子のオリビアを放って私は聖結界から出たのだった。
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