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トワとオリビアと共に、私はナルバ帝国に向かっていた。
私が逆行前に散々お世話になった国だ。
魔の森を挟んで睨み合う2大国とは違い、そこまで魔の森に執着していない。
広大で肥沃な土地をもつ農業国、どちらかと言うとのんびりした人々が多いのがナルバ帝国の特徴だ。
そして私たちはオリビアの浮遊魔法で空を飛んでいた。
「空を飛べるのは楽しいですね」
「そうだね。まさかオリビアが飛べるなんて知らなかったよ」
「お褒めいただきありがとうございますわ。リン様のお力のおかげです」
ニコッと笑う東洋美人。そんな姿に見惚れながらも私は魔の森に不穏な気配を感じた。
「うーん、空気弾」
こっそり、脅しの意味も込めて適当に放っておく。
「リン様?」
「どうかしましたか?」
私の様子がおかしいことに気づいた2人が心配そうに私を見ていた。
ありゃ、楽しい旅が台無しになっちゃう。
「ああ、ちょっと気になってたことがあってね! オリビア! 私リンって呼び捨てしていいって言ったのになんで様付けなの? それに敬語使ってる!」
グルンと空中でオリビアの方を向き、質問する。
「それは……」
「それは?」
「慣れてしまったもので……直せないんですよ」
あら、そうなの?
「じゃあ仕方がないね。オリビアは私のお母さんみたいなものだから……」
「ありがとうございます。オリビアはそう言ってもらえて嬉しいです」
「へぇ、じゃあオリビアさんは元々人間だったんですか?」
トワが不思議そうにオリビアを見ている。そりゃ大聖女が元人間だったなんてトワ達からしてみれば信じられないのだろう。
なんせ聖女ですら神族が作り出した新種族なのだから。劣化版といった方が分かりやすいけど……
「オリビアは私のスキルで大聖女に進化? したの。私の恩人なのよ」
「なにを言いますか! リン様こそ私の恩人ではないですか」
憤慨したように言い返すオリビアにニコッとトワが笑いかける。
「リン様が大好きなんだな。俺と同じだ」
「あら、よく分かってるじゃないですか」
今、オリビアとトワの中で何かが繋がったようである。私は知らん。聞いてないぞ。
絶対入ったら面倒なことになると思った私は、キョロキョロと辺りを見回していた。
そろそろ、城壁が見えてきても良さそうなんだけど……
「あ、あった! 見えたわ‼︎」
ついに、私の視界に入った懐かしい城壁に思わず声を上げる。
「……私にはまだ見えませんね」
「俺はちょびっと点みたいなのが見える」
遠すぎたようだ。
しばらく飛び続けていると、オリビアやトワもしっかり見えてきたようで、
「あ、あれですね! 立派な城門ですねぇ」
「ありゃあ、特殊な土を使ってますね。知りたい……」
などと歓声をあげていた。
「そろそろ降りて、歩こうか」
荷台を宙に浮かせて運ぶ者達なんて、怪しい者以外何者でもないだろうからね。
「分かりました。あそこに少し空間があるのでそこに下ろしますね」
「うん、お願い」
フワッと降り立つオリビアとそれに続く荷台と私とトワ。
「おお~なんかふわふわする」
「俺もしますね」
「長く宙に浮いていたからでしょうね。さ、行きましょうか?」
フードを被り直し、コクンと頷く。
こうして私たちはナルバ王国へ気を新たに向かったのだった。
私が逆行前に散々お世話になった国だ。
魔の森を挟んで睨み合う2大国とは違い、そこまで魔の森に執着していない。
広大で肥沃な土地をもつ農業国、どちらかと言うとのんびりした人々が多いのがナルバ帝国の特徴だ。
そして私たちはオリビアの浮遊魔法で空を飛んでいた。
「空を飛べるのは楽しいですね」
「そうだね。まさかオリビアが飛べるなんて知らなかったよ」
「お褒めいただきありがとうございますわ。リン様のお力のおかげです」
ニコッと笑う東洋美人。そんな姿に見惚れながらも私は魔の森に不穏な気配を感じた。
「うーん、空気弾」
こっそり、脅しの意味も込めて適当に放っておく。
「リン様?」
「どうかしましたか?」
私の様子がおかしいことに気づいた2人が心配そうに私を見ていた。
ありゃ、楽しい旅が台無しになっちゃう。
「ああ、ちょっと気になってたことがあってね! オリビア! 私リンって呼び捨てしていいって言ったのになんで様付けなの? それに敬語使ってる!」
グルンと空中でオリビアの方を向き、質問する。
「それは……」
「それは?」
「慣れてしまったもので……直せないんですよ」
あら、そうなの?
「じゃあ仕方がないね。オリビアは私のお母さんみたいなものだから……」
「ありがとうございます。オリビアはそう言ってもらえて嬉しいです」
「へぇ、じゃあオリビアさんは元々人間だったんですか?」
トワが不思議そうにオリビアを見ている。そりゃ大聖女が元人間だったなんてトワ達からしてみれば信じられないのだろう。
なんせ聖女ですら神族が作り出した新種族なのだから。劣化版といった方が分かりやすいけど……
「オリビアは私のスキルで大聖女に進化? したの。私の恩人なのよ」
「なにを言いますか! リン様こそ私の恩人ではないですか」
憤慨したように言い返すオリビアにニコッとトワが笑いかける。
「リン様が大好きなんだな。俺と同じだ」
「あら、よく分かってるじゃないですか」
今、オリビアとトワの中で何かが繋がったようである。私は知らん。聞いてないぞ。
絶対入ったら面倒なことになると思った私は、キョロキョロと辺りを見回していた。
そろそろ、城壁が見えてきても良さそうなんだけど……
「あ、あった! 見えたわ‼︎」
ついに、私の視界に入った懐かしい城壁に思わず声を上げる。
「……私にはまだ見えませんね」
「俺はちょびっと点みたいなのが見える」
遠すぎたようだ。
しばらく飛び続けていると、オリビアやトワもしっかり見えてきたようで、
「あ、あれですね! 立派な城門ですねぇ」
「ありゃあ、特殊な土を使ってますね。知りたい……」
などと歓声をあげていた。
「そろそろ降りて、歩こうか」
荷台を宙に浮かせて運ぶ者達なんて、怪しい者以外何者でもないだろうからね。
「分かりました。あそこに少し空間があるのでそこに下ろしますね」
「うん、お願い」
フワッと降り立つオリビアとそれに続く荷台と私とトワ。
「おお~なんかふわふわする」
「俺もしますね」
「長く宙に浮いていたからでしょうね。さ、行きましょうか?」
フードを被り直し、コクンと頷く。
こうして私たちはナルバ王国へ気を新たに向かったのだった。
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