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「リン様……全て説明してもらいましょうか‼︎」
「あた⁉︎」
べしっと軽く叩かれる。恐る恐るマーサを見ればビキリと額に青筋を浮かべていた。
「リン様の説明を聞いている限り、確証のない危険な行為をなさったと私は認識しましたが? どうなんです? それからリン様の髪色と、グルの進化の理由。きっちり教えてもらえますよね?」
「はい、勿論ですとも!」
無論、お怒りモードのマーサに逆らう選択は無かったので、正直に話した。
○○○
「まさか、リン様が進化なさるとは……しかも、元フェンリルなんて災害級の魔物ですよ⁉︎」
「魔獣だけどね」
「そこじゃありません! 少なく見積もってもS級に値するほどの大物! それをスキルで眷属化したと言うのですか⁉︎」
「うん」
「そしてグルは貴方様の進化に伴い、レベルアップしたと捉えてもよろしいですか?」
「全くその通りでございます」
へへぇーと平伏する私。ギルを含めた眷属化した仲間達が変な目で私を見ている。マーサを怒らせたら怖いんだよ! 謝れるうちに謝っとかないと後が怖いんだ‼︎
「ふぅ、リン様が私のためを思って頑張ってくださっているのは分かっています。ですが今後、このような危険な行為はおやめください。それで? スキルもレベルアップしたのですか?」
その言葉に私はガバッと起き上がり、マーサに報告する。
「そう! 出来るようになったの‼︎」
今回進化の過程で獲得したスキル。聖上級使徒化。これはマーサを私と同じとはいかないものの、聖女として覚醒させる事が出来るのだ。眷属ではない。同族と言った方が正しいだろう。
「ではマーサも聖女になるのですか?」
「いや、マーサは大聖女よ。そこからは多分進化すれば私と同じようになれると思う。もしかしたらマーサの方が強いかもね」
その方がいい。私が強いのではなく、マーサが強くなってくれた方が。
「分かりました。では、お願いします」
「了解! 聖上級使徒化・対象マーサ」
【主人様の願いにより、世界に大聖女が誕生しました。祝福として、スキルを授けます】
「あら? 体が動かしやすいですね」
スキルを発動させた後、マーサは劇的に変化していた。いや、マジで誰⁉︎ ってレベル。
「美、美女がいる⁉︎ マーサの髪が茶色から黒に変わってるよ⁉︎」
「本当ですね。それにちょっと伸びました」
サラッと髪に手を通すマーサ。肩まであった茶髪は腰まで伸び、艶やかになっていた。マーサの面影を残しつつも誕生した美女。
分かりやすく言えば、世界最高峰の東洋美人? 垂れ目なのに切れ目、まつ毛長すぎ。
「……私が男だったら即嫁にしてるわ」
「まあ、リン様は冗談が上手ですね」
冗談抜きでなんだけど……ま、いいや。
グルリと周りを見れば、洞窟に入りきらなかった眷属達が呆然と立っていた。私と目が合った瞬間、ワッと駆け寄ってくる。
「すごいです‼︎」
「奇跡だ!」
「リン様バンザーイ」
うむ、よく分からないが、くるしゅうないぞ。適当に頷いて置いて、ギアを呼ぶ。
「ギア! ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」
「なんでしょうか?」
「うん、ここってみんなが住むには狭いじゃない? 実はココを掘り進めたら地底湖に行き着くんだけど元ドワーフっていないかな?」
S級冒険者の時は時間があったので探索ついでに掘っていたのだが、今はそんなこと言っている場合ではない。
でも、そんな都合の良い話はないかな?
うーんと考え込むギアを見る限り、いないのだろう。
「ごめんなさい。無理を言ったわ。皆んなでコツコツ掘り進めましょう」
その言葉にパッと顔をあげるギア。
「います! 思い出した‼︎ ドワーフは最後まで魔素に抵抗できていた種族です。私が魔素に飲み込まれる前に知っている場所であればご案内します」
「なんてありがたい! 嬉しいわ‼︎ お願い!」
「ではマーサはここにみんなと残っておりますね。何故か今すごく力が湧いてきているんです」
にっこりと穏やかな笑みを浮かべるマーサ。美女である。
「うん、ありがとう! あ、そうだ‼︎ ねぇマーサ。この機にマーサも別の名前にしない?」
「別の名前ですか⁇」
「あ、もし大切な名前だったら変えなくていいよ?」
「いえ、そうですね。リン様から一文字いただいてオリビア。なんてどうでしょう?」
「うん、いいと思う! オリビア、行ってきます‼︎ あ! それから私はもう貴族とは縁を切ったからオリビアと同じ身分よ! 敬語は無し‼︎」
「はいはい、いってらっしゃい」
「うん、行ってきます‼︎」
洞窟から眷属達と一緒になって手を振るオリビアに、ブンブンと振りかえす。この世界で本当のお母さんが出来たような、そんな気持ちになった。
「さ、国づくりには建築技術も必要だし。ギア、行きましょう!」
「はい‼︎」
こうして私たちはドワーフを求めて4度目の魔の森へ潜ったのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
リンがいなくなった瞬間、オリビアは表情を鋭くした。
「招かれざる者がいるようですね……リン様にとって害悪となる存在は滅んで頂きます」
どうもリン様のお陰で大聖女になった自分は人外の力を手にしたようだと、マーサは呆れ返る。
「本当にお人好しすぎます」
だからこそ、私がしっかりしなければ。リン様はまた壊れてしまう。
「グル。今から私と一緒に来てもらえますか?」
「うん、行くわ」
スッと、集団から出てきたのは初めにリンが眷属化したグルだった。グルは他のゴブリン達とは違い、聖魔聖霊となっていた。聖霊とは四大元素の一部を操るモノ。
しかし、聖魔聖霊は闇と光、両方を操る特殊な聖霊だった。特徴として、闇と光が合わさったような灰白銀色の髪と瞳、尖った耳を持っている。見た目は20代前半。
「リン様にご迷惑をかかせるなんて言語道断よ」
とても好戦的な性格をしているのだ。
「では、我らはここで待っております。無事お帰りください」
「ええ、分かったわ」
「行きましょう」
リンの張った聖結界から出ると、グルとオリビアは既に見えなくなっていた。そう、オリビアが獲得したスキルこそ暗殺者。リンを裏から支えたいと言う願いを叶えたスキルだった。
「目標補足。射程圏内に入った。人数は100名ほど」
「グル、半分こしましょうね」
「分かった」
今にも飛び出しそうなグルを宥め、オリビアは目を細めるのだった。
「あた⁉︎」
べしっと軽く叩かれる。恐る恐るマーサを見ればビキリと額に青筋を浮かべていた。
「リン様の説明を聞いている限り、確証のない危険な行為をなさったと私は認識しましたが? どうなんです? それからリン様の髪色と、グルの進化の理由。きっちり教えてもらえますよね?」
「はい、勿論ですとも!」
無論、お怒りモードのマーサに逆らう選択は無かったので、正直に話した。
○○○
「まさか、リン様が進化なさるとは……しかも、元フェンリルなんて災害級の魔物ですよ⁉︎」
「魔獣だけどね」
「そこじゃありません! 少なく見積もってもS級に値するほどの大物! それをスキルで眷属化したと言うのですか⁉︎」
「うん」
「そしてグルは貴方様の進化に伴い、レベルアップしたと捉えてもよろしいですか?」
「全くその通りでございます」
へへぇーと平伏する私。ギルを含めた眷属化した仲間達が変な目で私を見ている。マーサを怒らせたら怖いんだよ! 謝れるうちに謝っとかないと後が怖いんだ‼︎
「ふぅ、リン様が私のためを思って頑張ってくださっているのは分かっています。ですが今後、このような危険な行為はおやめください。それで? スキルもレベルアップしたのですか?」
その言葉に私はガバッと起き上がり、マーサに報告する。
「そう! 出来るようになったの‼︎」
今回進化の過程で獲得したスキル。聖上級使徒化。これはマーサを私と同じとはいかないものの、聖女として覚醒させる事が出来るのだ。眷属ではない。同族と言った方が正しいだろう。
「ではマーサも聖女になるのですか?」
「いや、マーサは大聖女よ。そこからは多分進化すれば私と同じようになれると思う。もしかしたらマーサの方が強いかもね」
その方がいい。私が強いのではなく、マーサが強くなってくれた方が。
「分かりました。では、お願いします」
「了解! 聖上級使徒化・対象マーサ」
【主人様の願いにより、世界に大聖女が誕生しました。祝福として、スキルを授けます】
「あら? 体が動かしやすいですね」
スキルを発動させた後、マーサは劇的に変化していた。いや、マジで誰⁉︎ ってレベル。
「美、美女がいる⁉︎ マーサの髪が茶色から黒に変わってるよ⁉︎」
「本当ですね。それにちょっと伸びました」
サラッと髪に手を通すマーサ。肩まであった茶髪は腰まで伸び、艶やかになっていた。マーサの面影を残しつつも誕生した美女。
分かりやすく言えば、世界最高峰の東洋美人? 垂れ目なのに切れ目、まつ毛長すぎ。
「……私が男だったら即嫁にしてるわ」
「まあ、リン様は冗談が上手ですね」
冗談抜きでなんだけど……ま、いいや。
グルリと周りを見れば、洞窟に入りきらなかった眷属達が呆然と立っていた。私と目が合った瞬間、ワッと駆け寄ってくる。
「すごいです‼︎」
「奇跡だ!」
「リン様バンザーイ」
うむ、よく分からないが、くるしゅうないぞ。適当に頷いて置いて、ギアを呼ぶ。
「ギア! ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」
「なんでしょうか?」
「うん、ここってみんなが住むには狭いじゃない? 実はココを掘り進めたら地底湖に行き着くんだけど元ドワーフっていないかな?」
S級冒険者の時は時間があったので探索ついでに掘っていたのだが、今はそんなこと言っている場合ではない。
でも、そんな都合の良い話はないかな?
うーんと考え込むギアを見る限り、いないのだろう。
「ごめんなさい。無理を言ったわ。皆んなでコツコツ掘り進めましょう」
その言葉にパッと顔をあげるギア。
「います! 思い出した‼︎ ドワーフは最後まで魔素に抵抗できていた種族です。私が魔素に飲み込まれる前に知っている場所であればご案内します」
「なんてありがたい! 嬉しいわ‼︎ お願い!」
「ではマーサはここにみんなと残っておりますね。何故か今すごく力が湧いてきているんです」
にっこりと穏やかな笑みを浮かべるマーサ。美女である。
「うん、ありがとう! あ、そうだ‼︎ ねぇマーサ。この機にマーサも別の名前にしない?」
「別の名前ですか⁇」
「あ、もし大切な名前だったら変えなくていいよ?」
「いえ、そうですね。リン様から一文字いただいてオリビア。なんてどうでしょう?」
「うん、いいと思う! オリビア、行ってきます‼︎ あ! それから私はもう貴族とは縁を切ったからオリビアと同じ身分よ! 敬語は無し‼︎」
「はいはい、いってらっしゃい」
「うん、行ってきます‼︎」
洞窟から眷属達と一緒になって手を振るオリビアに、ブンブンと振りかえす。この世界で本当のお母さんが出来たような、そんな気持ちになった。
「さ、国づくりには建築技術も必要だし。ギア、行きましょう!」
「はい‼︎」
こうして私たちはドワーフを求めて4度目の魔の森へ潜ったのだった。
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リンがいなくなった瞬間、オリビアは表情を鋭くした。
「招かれざる者がいるようですね……リン様にとって害悪となる存在は滅んで頂きます」
どうもリン様のお陰で大聖女になった自分は人外の力を手にしたようだと、マーサは呆れ返る。
「本当にお人好しすぎます」
だからこそ、私がしっかりしなければ。リン様はまた壊れてしまう。
「グル。今から私と一緒に来てもらえますか?」
「うん、行くわ」
スッと、集団から出てきたのは初めにリンが眷属化したグルだった。グルは他のゴブリン達とは違い、聖魔聖霊となっていた。聖霊とは四大元素の一部を操るモノ。
しかし、聖魔聖霊は闇と光、両方を操る特殊な聖霊だった。特徴として、闇と光が合わさったような灰白銀色の髪と瞳、尖った耳を持っている。見た目は20代前半。
「リン様にご迷惑をかかせるなんて言語道断よ」
とても好戦的な性格をしているのだ。
「では、我らはここで待っております。無事お帰りください」
「ええ、分かったわ」
「行きましょう」
リンの張った聖結界から出ると、グルとオリビアは既に見えなくなっていた。そう、オリビアが獲得したスキルこそ暗殺者。リンを裏から支えたいと言う願いを叶えたスキルだった。
「目標補足。射程圏内に入った。人数は100名ほど」
「グル、半分こしましょうね」
「分かった」
今にも飛び出しそうなグルを宥め、オリビアは目を細めるのだった。
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