悪役令嬢に転生したけど記憶が戻るのが遅すぎた件〜必死にダイエットして生き延びます!〜

ニコ

文字の大きさ
上 下
11 / 19

11.

しおりを挟む
 スパイさんに連れられ帝国へ入った私。めちゃくちゃ静かに馬に揺られております。

「ねぇ、もう逃げないの~? もしかして知らない所だから緊張しちゃった?」
「……」

 相変わらず面白そうにこちらを覗き込んでくるスパイさん……いや、変態さん。私が初めての場所で緊張していると思っているようだ。ま、んなわけないけどね!

 そう! フレヤにとってははじめての場所でも、前世の小説の記憶がある私はこの国についてはある程度知っている。そして、小説ではこの国には秘密の通路が沢山あるのだ。それは以前この土地は別の民族の物だったからである。そして、私達が今歩いている地面の下にも通路があったと記憶している!
 
 つ・ま・り! 静かにしておいて油断した隙に逃げよう作戦‼︎ 
 この通路は今は誰も知られておらず、私だってどこに行き着くのかは知らないが、小説でチラリと書いてあった。多分フラグ回収しようと思って書いたのに、忘れていたんだと思う。

 ふははははは‼︎ 油断した後に後悔するがいい!

「なぁ~んか企んでるよねぇ?」
「めっそうもない」

 ええ、ええ、企んでおりますとも! バッチリね‼︎

 この後、ちょっとシナリオからズレたけど帝国は王国に宣戦布告をして攻め込む事となっている。その時敗北してしまうのだが、私はそれに巻き込まれたくない! スパイさんには申し訳ないがせっかく逃げれたのにまたもや命の危険を晒すのは絶対したくないのだ‼︎


「あの~、ちょっとお花を摘みに行っても?(訳:トイレ行きたい)」
「あー、じゃあちょっと休憩しよっか~」

 めんどくさそうに答えるスパイさん。ちょっと離れた場所でクルリと後ろを向いて耳を塞いでくれた。どうせ私が逃げてもすぐ捕まえる事ができるからこんな事ができるんだろうけど……

「今日の私は一味違うのよ!」

 聞こえたらヤバイので、アッカンベーをしながら小声で叫んでやった。そのまましゃがみ込み、ガサゴソと地面を探ると。

 おー! あった‼︎

 見事にビンゴ! 通路の入り口の取手を見つけ、持ち上げる。この通路の入り口はカラクリになっており、仕掛けがわからないと見つけることはもちろん入ることすらできない。私はまぁ小説で見つけ方と開け方知ってるし?

「さよ~なら~」

 ニヤニヤとスパイさんの後ろ姿に手を振って私は通路の中に入ったのだった。勿論入り口もきちんと閉めたよ!



【王子とユリア】



「クソッ‼︎ フレヤを捕まえられなかった、だとぉ⁉︎」
「はい」

 ドンッと苛立ちもあらわに机を叩きつける王子。向かい側には王子直属の騎士団である騎士団長が気まずげに報告していた。

 アイツは俺のものだぞ⁉︎ 痩せたのも俺に釣り合うように痩せたんだろ! 何故逃げたんだ‼︎ クソッ! 

「おい、どこに行ったか徹底的に調べろ。見つかり次第フレヤは俺の別荘に閉じ込めておけ」
「了解しました」
「戻ったら俺が直々に躾けないとなぁ」

 目をギラギラと光らせ欲望を隠そうともしない王子は、フレヤを捕まえた後のことを想像し、楽しそうに歪んだ笑みを浮かべたのだった。




 一方ユリアも王子と同じように怒り狂っていた。





「あの豚女が逃げたですってぇ⁉︎ 役立たず! 何してんのよ‼︎ しかもあのイケメンも取り逃がすってどういうことなの⁉︎ ユリア、いっぱいあのお方とお話ししたかったのにぃ‼︎ 豚女は見つかり次第殺して頂戴! そうねぇ、餓死でいいと思うわ! イケメンは見つけたらユリアに教えて! 逃さないでね‼︎」
「は、はい!」
「はぁ、何でこんなに早く死んじゃったのかしら。もし、もう少し長く生きていればあのイケメンの名前が分かったかもしれないのにぃ~! スパイも欲しかったけどアレは敵だもん。私の命を脅かすのは排除しなくちゃね! ああ、早く私の王子様に会いたいわ!」

 フリフリとリボンやフリルをふんだんに使用したピンクの可愛らしいドレスを見に纏いユリアは恋する乙女の表情であの日ぶつかったイケメンを思い出し、うっとりと目を細めるのであった。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの悪役令嬢に転生しましたが、トラウマ級の幼馴染を撃退したい。

夜乃トバリ
恋愛
 私こと佐藤 澪(さとう みお)は、ただの幼馴染である北小路 レイナ(きたこうじ れいな)に殺されて異世界に転生した――。  え?ここってレイナが好きだった乙女ゲームの世界??この顔って、もしかして悪役令嬢??? レイナから散々聞かされた悪役令嬢の末路は、婚約者の心を奪ったヒロインに嫉妬して闇の力に目覚めて魔王となり、ヒロインと婚約者に殺される運命――それも回避したいけど、それよりも気になる事が……レイナ、いるよね?この世界に……――。  攻略対象の王太子さまは殺され仲間のあの人で……私は決心した。アイツを撃退して今度こそ穏やかな日常を手に入れるのだと……。    ※    ※    ※  何番煎じな感じですが、悪役令嬢ものです。一応、ざまぁになる……はず。  短編設定から中編、長編には至らないと思っていたのですが、予想以上の文字数になってしまったので、長編へと変更させて頂きました。変更2021.02.14  当初不定期更新の予定でしたが、何とか安定的に更新出来ている状況です。今後更新『時間』は不定期になります。また更新のお休みが事前に分かっている時は、告知を入れる事にしています。  色々と申し訳ありませんが、宜しくお願い致します。2021.02.14

私が悪役令嬢だからって、乙女ゲームに関わると思ったら大間違いよ?

たなか
恋愛
悪いお姫様は正義のお姫様と王子様に成敗されてしまいましたとさ………めでたしめでたし なんて物語嫌いなの。 因果応報なんて大っ嫌い。 勧善懲悪なんて反吐が出る。 どんな悪事もバレなければ良いのよ。 ほら、よく言うじゃない? 美しい花には棘があるって。 まあ私は、そもそも悪事なんて働かないけれどね? 興味無いしつまらなそうだもの。

悪役令嬢ってこれでよかったかしら?

砂山一座
恋愛
第二王子の婚約者、テレジアは、悪役令嬢役を任されたようだ。 場に合わせるのが得意な令嬢は、婚約者の王子に、場の流れに、ヒロインの要求に、流されまくっていく。 全11部 完結しました。 サクッと読める悪役令嬢(役)。

えっ、これってバッドエンドですか!?

黄昏くれの
恋愛
ここはプラッツェン王立学園。 卒業パーティというめでたい日に突然王子による婚約破棄が宣言される。 あれ、なんだかこれ見覚えがあるような。もしかしてオレ、乙女ゲームの攻略対象の一人になってる!? しかし悪役令嬢も後ろで庇われている少女もなんだが様子がおかしくて・・・? よくある転生、婚約破棄モノ、単発です。

醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とある侯爵家で出会った令嬢は、まるで前世のとあるホラー映画に出てくる貞◯のような風貌だった。 髪で顔を全て隠し、ゆらりと立つ姿は… 悲鳴を上げないと、逆に失礼では?というほどのホラーっぷり。 そしてこの髪の奥のお顔は…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴットハンドで世界を変えますよ? ********************** 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです! 転生侍女シリーズ第二弾です。 短編全4話で、投稿予約済みです。 よろしくお願いします。

ヤンデレ悪役令嬢は僕の婚約者です。少しも病んでないけれど。

霜月零
恋愛
「うげっ?!」  第6王子たる僕は、ミーヤ=ダーネスト公爵令嬢を見た瞬間、王子らしからぬ悲鳴を上げてしまいました。  だって、彼女は、ヤンデレ悪役令嬢なんです!  どうして思いだしたのが僕のほうなんでしょう。  普通、こうゆう時に前世を思い出すのは、悪役令嬢ではないのですか?  でも僕が思い出してしまったからには、全力で逃げます。  だって、僕、ヤンデレ悪役令嬢に将来刺されるルペストリス王子なんです。  逃げないと、死んじゃいます。  でも……。    ミーヤ公爵令嬢、とっても、かわいくないですか?  これは、ヤンデレ悪役令嬢から逃げきるつもりで、いつの間にかでれでれになってしまった僕のお話です。 ※完結まで執筆済み。連日更新となります。 他サイトでも公開中です。

身分違いの恋に燃えていると婚約破棄したではありませんか。没落したから助けて欲しいなんて言わないでください。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるセリティアは、ある日婚約者である侯爵令息のランドラから婚約破棄を告げられた。 なんでも彼は、とある平民の農家の女性に恋をしているそうなのだ。 身分違いの恋に燃えているという彼に呆れながら、それが危険なことであると説明したセリティアだったが、ランドラにはそれを聞き入れてもらえず、結局婚約は破棄されることになった。 セリティアの新しい婚約は、意外な程に早く決まった。 その相手は、公爵令息であるバルギードという男だった。多少気難しい性格ではあるが、真面目で実直な彼との婚約はセリティアにとって幸福なものであり、彼女は穏やかな生活を送っていた。 そんな彼女の前に、ランドラが再び現れた。 侯爵家を継いだ彼だったが、平民と結婚したことによって、多くの敵を作り出してしまい、その結果没落してしまったそうなのだ。 ランドラは、セリティアに助けて欲しいと懇願した。しかし、散々と忠告したというのにそんなことになった彼を助ける義理は彼女にはなかった。こうしてセリティアは、ランドラの頼みを断るのだった。

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

処理中です...