彼を知り己を知る

將能而君不御者勝

　最後の一つ。
「將能而君不御者勝」
　翻訳すると
「将能にして君御せざる者は勝つ」
　先入観って怖いね。

　よくあるのは「優秀な奴に任せて、偉いやつは口出すな」みたいな。
　それってあなたの感想ですよね。いやまあ、確かにそうとも解釈できるけども。

　冷静に考えて。その次に来るのが「知彼知己者百戰不殆」だよ？
　彼を知り己を知れば、云々という。
　つながらないでしょ、明らかに。
　たぶん勘違いした人は、普段から「あの上司うぜえんだよな」ってストレスが溜まってる人。かわいそう。

　そもそも、これって孫子がどこかの偉い人に言ったのよね？
　偉い人を前にして「偉いやつは口出すな」なんて、言える？　私なら無理。だって殺されそう。
　つまり違うわけよ。そうじゃない。

　きっとこれは上司と私の関係ではなくて、あくまで個人の話。
　将っていうのは、武将とか。自分自身を率いて最前線で戦う自分。
　君っていうのは、主君とか。国の代表的な。多分これは、あなた自身のこと。
　どんな人でも、自分の中には『武将』と『主君』がいる。
　その二つを正しく使えば、勝つことができる。という話。

　将能にして……つまり、ちゃんと自分を上手く働かせて。
　君御せざる……つまり、偉そうにしないこと。

　せっかくやる気になったのに、見栄や外聞を気にしてしまう人がいる。
　恥知らずに何でもやろうって無鉄砲なのに、上手くやる気になれない人がいる。

　そうじゃなくて、両方が必要。
　やる気を出せよ。やると決めたら突っ走れよ。
　それができるやつが勝つんだよ。できないやつは、勝手に自滅するんだよ！

　なんか、孫子って思ったよりも、暑苦しいこと言ってるんですね。