目が覚めたら異世界で草生える

魔導学院へ

教会にて

　シグレさんについていくと見えてきたのは、教会というよりは神社とかお寺とかってイメージの強く感じる場所だった。
　外周は少し高い塀に囲まれているけど、正面の門は大きく開いていて、多くの人が自由に出入りしているみたい。
「シグレさん、ここでその、原紙がもらえるの？」
「そうですよ。国が認めた三大宗教の教会であればどこでも同じ推薦書をもらえます。……ああ、とはいえアカネさんが改宗する必要とかはありませんからね。教徒であれば料金が免除されたりもするんですが、今回はわたしが支払いますので。アカネさんが教義を捨てさせられるようなことはないから安心してくださいね」
　いやまあ、わたしの場合はほとんどの日本人よろしく無宗教ってやつだと思うけど。この世界にも宗教はあったんだ。一つの国で三つの宗教を推奨してるあたりはわたしの持ってるイメージとは違うけど、逆に考えればある程度は信仰の自由も保障されてるってことなのかな。
「それでは入りましょうか。変な勧誘に捕まらないように気を付けてくださいね」
「変な？」
「宗教自体への勧誘もあるのですが、酷いものだと犯罪行為に加担されることもありますから……」
「怖っ。わかった気をつける」

　大きな門を抜けると敷地内では多くの人が集まって神様の偶像に祈りを捧げたり、何人かで集まって宗教談義や演説みたいなことをしていたけど、シグレさんはその広間を一瞥もせずに素通りして、神社でいうおみくじとか売ってるような場所に向かって一直線に向かっていった。
　わたしもあまりキョロキョロすると怪しい人に思われちゃうから、できるだけよそ見はせずにシグレさんについていく。
「アカネさん、推薦書はここで購入できます。魔導謄本の写しステータスカードが必要になるので準備しておいてください。……すいませーん！」
「……はい、はいはい。なんでございましょうか？」
　シグレさんが声をかけると奥から出てきたのは、丸メガネをかけたすこし太った感じの男性だった。一応それっぽい神父服を着ているけれど、見た目だけだと神父というより商人にしか思えない。
「こちらのアカネさんに、魔導学院の推薦書を発行してほしいのですが……」
「ああはい！　喜んで！　お代は銀貨5枚になりまっせ！　謄本は持ってきてますかい？　なけりゃあ銀貨3枚でそっちも発行できまっせ‼︎」
「謄本はありますので結構です。まずはこちらが代金です。アカネさん、カードを……」
「はいシグレさん。それにしてもなんというか思ったより……」
　シグレさんはわたしから受け取ったカードを神父服の商人さんに手渡すと、神父（？）さんはメガネを「くいっ」とあげて一瞬にして真面目な顔つきになってステータスカードを確認し始めた。
　ちなみにわたしのカードは名前以外の項目は全て非表示にしておいた。魔力値とか見られて誤解になるのも避けたいし、赤の他人に年齢とかも知られたくないからね。
「……ありがとうございます。間違いなく本物であることは確認できました。機械にかけて照合を行うので、しばらくお待ちくださいな」

　どうやら人の目だけでなく、魔導で動く機械も使ってダブルチェックをするらしい。神父さんがわたしのカードを機械に差し込むと、旧式のパソコンみたいにピー、ガタガタ……と音を立てながら何やら調査が始まったみたい。
「シグレさん、あれって何を調べているの？」
「聞いた話ですが、ほかの地域で既に推薦書を発行していないかとか、あとは犯罪歴とかも調べてるらしいですよ」

　それから特にすることもなく5分ぐらいのんびりしていると、魔導機械の駆動音が止んで、カードと一緒に一枚の紙が出力された。

「お待たせ致しやした！　念のために言っときますが、基本的に再発行はできやせんので、大切に扱ってくだせい」
「ありがとうございます。それではアカネさん、早速ルククさんとの待ち合わせ場所に向かいましょう！」