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大平原

盗賊団は本日をもって……

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「見えて来たぞ、あれが俺らの家族マーダーだ。リーダーのところまでは案内してやるが、そこから先はそっちで勝手にやりな!」
「アカネさん、いよいよ盗賊団のボスと対面ですね。緊張します?」
「なんか大ごとになっちゃってるしね……。私は私の荷物を返してもらって、旅の安全だけ保証してもらえればそれでいいんだけど……」
 私たちが最初に出会った盗賊は、盗賊団の中でも下っ端だったみたいで、話の流れで彼らの親玉のもとまで案内されることになってしまった。え、なに? このまま私が矢面に立って交渉する感じなの? 本当は交渉ごととかは長さんに任せたいぐらいなんだけど、長さんの言葉が分かる人間は私だけみたいだから、どちらにせよ私が間に立たないとダメなのか。
 などと考えている間にも事態は進んで、「呼んでくる」と言って走って行った盗賊さんが走って戻って来た。
「お待たせしました、リーダーが話を聞きたいと。連れてってやるから俺について来な!」
 なんか偉そうな態度が鼻につくけど、まあいいや。盗賊さんについていくと、左右から盗賊どもの荒々しい視線が私たちに降り注ぐ。交渉を優位に進めるためにわざとやってるんだろうけど、正直なことを言うとむっちゃ怖い。今すぐ帰りたい……。
 そうして辿り着いたのは、地面に打ち付けられた杭とロープで区切られただけの謎の空間だった。正方形に区切られた結界の真ん中には、他の人と比べたら多少豪華に見えなくもない服装をしたおじさんが偉そうに座っている。

「オヤジ! 客人を案内したぜ!」
「ご苦労、お前は下がれ。さて客人よ、我ら大草原盗賊団にいかな用事かな?」
「いや、え? 用事っていうかとりあえずテントとかを返して欲しいん……」
「聞いた話によるとあなたがたはこの土地の貴族様なのだとか。ということは我々を取り締まるのが目的ですかな?」
「いやだから、それ以前に……(シグレさん、この人全然こっちの話が通じないんだけど!)」
「(お任せください、アカネさん!)やい貴様ら! アカネさんはこの土地の貴族である! アカネ様からの命令に従わねば、この土地の法に則って裁きが下ると知れ!」
「え、いや、え⁉︎」
 違う、シグレさん。そうじゃないよ! 私はもっと穏便にまとめて欲しかったんだけど、どうやらシグレさんも権力に酔っちゃってるみたい? ……これがハロー効果ってやつか。

「待ってくれ、なにが目的だ? まさか盗賊団を解散させるのが目的か⁉︎ だが待ってくれ、突然解散と言われても困る。俺たちだって家族を守るために仕方なくやってたんだ!」
 なるほど、盗賊行為で生計を立ててた人の言い分はそうなるんだ。でも、そんな言い訳を思いつくということは逆に言えば……。
「でも悪いことだってことは君達もわかってるんだよね。だったらやめなよ、こんなこと。あ、あとそうだ。この土地の馬たちを追い回して殺し回るのもやめてね。むしろそっちの方が本題かな……」
「そんな! いいか、馬狩りは俺たちに代々伝わる行事で……」
 盗賊の言い分を聞くには、この馬狩りはこの平原の一族に代々伝わる伝統的な狩りで、この狩りで生計を立ててる人もいて、今まで禁止しようという試みは何度かあったけど全て跳ね除けてきたらしい。つまりだからどういうこと? それを聞いて私が「仕方ないね、じゃあOK」っていうとでも思ったの?

「……うん、わかった。今日から馬狩りは禁止ね!」
「おい、俺の話を聞いてたか? 俺たちの言い分も……」
「うんだからそれは、君たちの言い分でしょ。私が納得する理由にはならないじゃん。裁量権が私にあるなら私の結論は変わらなかったし。従わないなら地震……神の裁きでもなんでもやってでも止めさせてもらうから!」
 てか、話を聞かないのはそっちの方でしょ。
「おいあんた。あんた人間と馬のどっちが大切なんだ?」
「そりゃ今の状態ならお馬さんたちの味方かな。君たちはうるさいけどお馬さんたちはうるさくないし、君たちよりもお馬さんの方が話が通じるからね!」
 なんてことを言ったところでこの人が私のいうことを聞くとはとても思えないんだけど。ていうかやっぱり普通に逆上するだけだよね。お馬さんが睨みを聞かせてくれてるおかげか、さすがに襲いかかっては来ないけど。
 なんていうか、平行線というよりはねじれの関係に近いのかな。そもそも話の軸が違うからわかり合うとかは無理な感じ。

『お主よ、もはやこれになにを言っても無駄だと思うぞ』
『俺もそう思う。そうだ、こんな奴ら放っておいてお前が馬の群れを率いてくれないか? ……いや、それは無茶か』
「なに、馬の国でも作って私が王様になれってこと?」
「アカネさん! それです。それですよ! アカネさんが国を作って王様になればいいんです!」
「はぇ? シグレさん、どゆこと?」
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