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大平原

大地の魔力

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 結局私の魔力漏れが収まった頃には、辺り一面が青々とした草原に書き換わっていた。まあ馬達が美味しそうに草を食んでいるからよしとしようかな。
 魔力の影響は均一に広がった感じじゃなくて、影響が濃い場所には木が生えたり逆にあまり影響のない場所ではあまり草も生えなかったりしてたけど、お陰で魔馬たちだけでなくさまざまな動植物にとって住みやすい環境が整ったのかもしれない。
 こんな力じゃどうやっても戦いには使えない気がするんだけど、でもこれで馬達の食料問題は解決できそうかな……。

 しばらく呆然としていると、群れの離れた場所から『おい、何事だ⁉︎ ……お前が話に聞いてた人間か?』とか、『この美味い草を生み出したのは誰だ~!』とか言いながら魔馬たちも魔力の発生源を辿って私のもとに集まってきた。

『お主よ、草を生やすことができるのはわかったから、他にも試してみぬか?』
『そうだぜ! 俺が使ってた時は身体強化とかが比較的やりやすかったぜ。流石に俺には生態系を変えるなんて発想はなかったがな……』
「じゃあ、身体強化? ジャンプ力が強くなるイメージを試してみようかな……」
 魔導を使う感覚というのはよくわからないけど、体に流れ込んできて足の裏から大地に流れ出ていたエネルギーを少し堰き止めて下半身の筋肉に浸透させてみて……軽くその場でジャンプしてみると、ふゎあ。という音が聞こえてきそうなぐらいなんの感触もなく体が3メートルぐらい浮き上がった。
「うわぁお……」
 想像してたより10倍ぐらい高い。地面が遠いし、てかこの高さから落ちても大丈夫なの? ジャンプして着地失敗して、大怪我とかはちょっと笑えないんだけど。
 そんなことを考えていてもできることは特になく、重力に従って体が地面に引き寄せられていく。せめて着地の衝撃を和らげようと全身を使って衝撃を吸収……しようとして失敗したけど、それでもほとんどダメージはなかった。
 まだ足に魔力が残っていたからなのかな、なんにしても助かったよ……。

『お主よ、無事か? 思い切り着地を失敗したように見えたが……』
「お馬さん、私は問題ないよ。でもこれダメ。加減が全くできそうにないもん!」
『我の知る限り、貴族どもの扱う魔力はそこまで威力が高くないのだがな……』
 ヒサメくんに魔力を借りてた時もそんな感じだったしね。理屈はわかんないけど私はこういう魔力と相性がいいのかも?
「それで、どうするの? 私はこれでお馬さんたちに強化の魔導を使えばいいの?」
 そんなことをしたら、お馬さんたちもポンポン飛び跳ねることができるようになるのだろうか。そんな状態ならいくらお馬さんでも危なくて乗りたくないけど……。
『……そ、そういえば俺は聞いたことがあるんだが、人間たちのルールには「土地の決まりは貴族が決める」みたいなのがなかったか? だったらお前さんが「馬狩りを禁止」っていえば済む話なんじゃねえの?』
『そ、そうだな。お主の強化に頼るまでもなくお主が土地の権利を得た時点で問題は解決しておるのかも知れぬ。盗賊どもが好き勝手に暴れておるのも、それが半ば合法化されているからで、こちらから禁止してやれば手を引いてもらえるかもしれぬぞ?』

 そんなに私の強化魔導を受けるのが嫌なの……?
 とはいえ確かに、考えが違うからといっていきなり戦争をするのはおかしいのも事実だよね。私としてはとりあえず、テントとランプを返してもらえればいいし、長さんや魔馬たちも人間が襲ってこないようになれば文句は言わないでしょ。
「だったら……とりあえず交渉に向かってみる?」
『そうだな。まずは少し暴れて人間の群れを纏めている親玉を引っ張り出す必要があるな』
『そうだぜ! 交渉するにもまずは対等な関係であることを示してやる必要があるからな! 頼みましたぜ、!』

 いや姉御はやめてよ。せめてもう少し可愛らしい呼び方にならない? って言っても無駄なんだろうなぁ。向こうもわかってて言ってるんだろうし……。
 とりあえず言葉の通じる馬達に群れのことはお任せすることにして、私たちの魔馬の群れに向かって来ている人間の群れに向かうことにした。
「その前にシグレさんに事情だけ説明したいんだけど、それぐらいは大丈夫?」
『問題なかろう。むしろあの人間も連れて行ったほうがいいかもしれぬぞ。なにせお主は記憶喪失で人間界の常識が欠けておるからの!』
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