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大平原

商人さんとお話とか

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 ちなみに余談だけど、こっちの魔馬ではない普通の馬も、野生の魔馬と同じように言葉を話すことはできないみたい。なんでもお馬さんや仔馬さんには発声器官がないから魔力に思念を乗せて話しているんだけど、普通の馬の魔力ではそれもできないらしいから。
 ただ、人間にしっかり調教されているからなのか、こっちが話したことを大まかに理解ぐらいはしてくれるらしい。

『お主よ、これの治療は我に任せても問題ないぞ』
「そっか。じゃあ私はお客さんをもてなすことにしようかな」
 とりあえず馬の治療はお馬さんに任せることにして、私はこの商人さんをもてなしてあげることにした。
 とはいっても茶葉もコーヒーもない現状では、出せるのは水だけなんだけど。せめて火で温めたものを出そうかな。
「どうぞ、白湯さゆですが」
「これはどうも。治療のほうはどうですか?」
「ええはい。お馬さんに任せてるので大丈夫ですよ」
「お馬さん? それってさっきの? 馬が馬を治療するんですか⁉︎」
「何をそんなに驚くんです? 人間だって人間を治療するでしょう?」
 実際のところお馬さんによると、『馬の感覚は人間よりも馬自身の方が詳しいというか他人事じゃないから、簡単な治療をするだけだったら馬が治療した方が効率がいい』らしい。特に回復魔導の場合、感覚重視な面も大きいらしいから……。下手に人間の感覚で回復魔導を使ってしまうと逆に調子を崩してしまうこともあるんだとか。
 まあ私には魔道を使えないから関係ないんだけどね!

「それよりもえっと、商人さんは、一体どこへ向かってたんですか? かなり急いでいるようでしたけど」
「あら私、まだ名乗ってなかったかしら。私はシグレと申します。どうぞお見知り置きを……」
「あ、はい。私はアカネです、こちらこそよろしく。それでしぐれさんは何か急いで大陸を渡らなきなさやいけない理由でもあったんですか?」
「はい。私、実は魔導学院への入学を目標に勉強しておりますの。ですが魔導の勉強をするのにもお金がかかりますでしょう? ですのでこうして各地を回って見地を広げながら路銀を稼いでおりましたの!」
「それは、大変そうだね。それにしても魔導学院かあ。私の目的地も一応学院そこなんだよね」
「ということはアカネさんも学院の入学試験を受けるのですか? 馬屋を営みながら勉強もするなんて、アカネさんは凄い方ですね!」
「いやそういうわけじゃ……。それに、凄さだったら行商人をしながら勉強してるシグレさんの方がすごいですよ!」

 そういえば私は、魔導学院のある都市に着いたらどうするつもりだったんだろう。
 私の学籍がないことは確かだろうし、それは海外の魔導学院まで調べたところで結果は多分変わらないと思う。だとしたら本当に学院に入学するのを目指してみるのもいいのかもしれない。魔力がなくても入れる学科があればだけど……。
『お主よ、治療が終わったぞ……』
『パパ、お姉さん! 大変です、人間の群れがすごい勢いで近づいてくる! しかもかなり殺気立ってる‼︎』
「アカネさん、馬達が騒ぎ出してますよ。何かあったんでしょうかね?」
「シグレさん、大変! お馬さん達によると『殺気立った人が押し寄せてる』らしい。何か心当たりある?」
 報告のためにこっちに駆け寄ってきた仔馬さんに、すべての魔馬がぴったり着いてきたからこの辺りはてんやわんやの大騒ぎになってしまった。
 シグレさんを見ると、わたしの翻訳を聞いて何かを察したような顔をして顔が引きつっている。体も震えているし、何かを怖がっておるように見えなくもない。
「アカネさん、おそらくそれは盗賊団です。今すぐこの場から逃げましょう!」
『お姉さん! あいつら私の家族を殺して私を誘拐した奴らだよ! ということは目的は私たちなのかも!』
『お主よ。奴ら、人の灯りがあるにも関わらず殺気に満ちておる。ここは一度群れを率いて離脱すべきだ』
「さあアカネさん! 荷物よりも命が大事です! 逃げましょう!」
「はい! シグレさんの馬も快調に戻ってるらしいので、一緒に逃げましょう!」

 みんなに急かされたので仕方なく、私は魔導鞄に荷物を適当に詰め込んで、テントや作りかけの料理は無視してお馬さんの背中に飛び乗った。
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