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山越え
雨音を聞きながら
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濡れていない服に着替えた私はパチパチと火花を散らす焚き火に当たりながら洞窟の外を眺めているけれど、一向に雨が止みそうな気配はない。
仕方がないから、まだだいぶ早い時間だけど今日の昼食の準備をしようかな。
山の天気は読めないけれど、どちらにせよ服が乾かないことにはどうしようもないし、それに次にいつこんな時間が取れるかもわからないしね。
まな板の上で野菜を切って、鞄から取り出した鶏肉を少し火で炙ってパンに挟めば簡単なサンドイッチの出来上がり。
お馬さんには乾いた場所に干し草と水の入ったバケツをを置いてあげて。
「それじゃあ、いただきます」
『我も今のうちにいただいておくことにしよう。だがお主よ、服ももうじき乾きそうであるし、食事が終わったらすぐに出発するぞ?』
「え、でも雨降ってるけど……?」
『何を言う。レインコートは雨が降った時のためにあるのであろう?』
「レイン……コート?」
なにそれ、そんな便利な物があるの?
なんてことはなくて私も存在は知っていたんだけど、残念ながら私の鞄の中にはないよ?
『お主よ、まさか買っておらぬのではなかろうな』
「お馬さん、そのまさかだよ。そんな物が必要だなんて思わなかったんだもん!」
『……』
いや、そんな呆れたような顔でこっちを見ないでよ! 確かに前のキャンプ場では「耐水コート」って名前の商品も売ってたけどさ! でも普通、この万能型のコートがあれば十分だと思うじゃん。
『致し方ないな。それでは即席でレインコートを作成することかの。店売りと比べたら品質は落ちるが、山を越えるぐらいであれば保つであろう』
「え、そんな簡単に作れる物なの? こういっちゃなんだけど私、工作は素人だよ?」
『問題なかろう。とはいえ素材がなければこれから我が獣狩りに行く必要があるのだが、鞄の中を見せてもらえるか?』
お馬さんに言われたので、鞄の中に入っているものの名前を一つ一つ読み上げていく。
前の使用者のおじさんが「もう使わねえから、今入ってるものも全部やるよ!」って感じで気前が良かったから、私の知らない素材の名前もいっぱいあるけど、とりあえず書いてある通りに読み上げる。
『なるほどな。それだけ素材が揃っておればなんとかなりそうだぞ。まずは魔兎の毛皮と水属性の魔石を取り出して、毛皮に魔石をよく擦り付けるのだ。そうすると魔兎の毛皮が少しずつ青味を増していくからな。ある程度青く染まったら火で軽く炙ってやれば属性が安定するから、それで耐水装備の完成である』
「えっと、魔兎の毛皮……これ、本当に兎? デカくない⁉︎」
お馬さんに言われて取り出した魔兎の毛皮は、熊の毛皮ぐらいのサイズの巨大な毛皮だった。
これに魔石を満遍なくこすりつけるのか。思ったよりも重労働になりそうだぞ! でも、レインコートを買わなかった私の自業自得だから「面倒だからやらない」とも言い出せないジレンマ……。
「ご馳走様でした」
魔石で毛皮をこすると、こすった箇所が一瞬だけ青くなって、すぐに溶けるように色が薄まっていく。これをあと何回繰り返せばいいんだろう……。愚痴ってもしょうがないか、この際だから、どうせやるなら徹底的にやってやろうかな!
仕方がないから、まだだいぶ早い時間だけど今日の昼食の準備をしようかな。
山の天気は読めないけれど、どちらにせよ服が乾かないことにはどうしようもないし、それに次にいつこんな時間が取れるかもわからないしね。
まな板の上で野菜を切って、鞄から取り出した鶏肉を少し火で炙ってパンに挟めば簡単なサンドイッチの出来上がり。
お馬さんには乾いた場所に干し草と水の入ったバケツをを置いてあげて。
「それじゃあ、いただきます」
『我も今のうちにいただいておくことにしよう。だがお主よ、服ももうじき乾きそうであるし、食事が終わったらすぐに出発するぞ?』
「え、でも雨降ってるけど……?」
『何を言う。レインコートは雨が降った時のためにあるのであろう?』
「レイン……コート?」
なにそれ、そんな便利な物があるの?
なんてことはなくて私も存在は知っていたんだけど、残念ながら私の鞄の中にはないよ?
『お主よ、まさか買っておらぬのではなかろうな』
「お馬さん、そのまさかだよ。そんな物が必要だなんて思わなかったんだもん!」
『……』
いや、そんな呆れたような顔でこっちを見ないでよ! 確かに前のキャンプ場では「耐水コート」って名前の商品も売ってたけどさ! でも普通、この万能型のコートがあれば十分だと思うじゃん。
『致し方ないな。それでは即席でレインコートを作成することかの。店売りと比べたら品質は落ちるが、山を越えるぐらいであれば保つであろう』
「え、そんな簡単に作れる物なの? こういっちゃなんだけど私、工作は素人だよ?」
『問題なかろう。とはいえ素材がなければこれから我が獣狩りに行く必要があるのだが、鞄の中を見せてもらえるか?』
お馬さんに言われたので、鞄の中に入っているものの名前を一つ一つ読み上げていく。
前の使用者のおじさんが「もう使わねえから、今入ってるものも全部やるよ!」って感じで気前が良かったから、私の知らない素材の名前もいっぱいあるけど、とりあえず書いてある通りに読み上げる。
『なるほどな。それだけ素材が揃っておればなんとかなりそうだぞ。まずは魔兎の毛皮と水属性の魔石を取り出して、毛皮に魔石をよく擦り付けるのだ。そうすると魔兎の毛皮が少しずつ青味を増していくからな。ある程度青く染まったら火で軽く炙ってやれば属性が安定するから、それで耐水装備の完成である』
「えっと、魔兎の毛皮……これ、本当に兎? デカくない⁉︎」
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「ご馳走様でした」
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