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旅3

明日こそは早起きしたいな!

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 私たちが作った料理は、騎士さんたちにも割と好評で、「素朴な味」「素材の味が生きてる」「当たり外れがあって楽しい」などなど様々な意見が出てた。
 まあ、そもそもが切って煮ただけの簡単料理だから、それぐらいしか出てこないよね。ちなみに「ハズレ」はヒサメくんが切った大きすぎたり小さすぎたりする野菜やお肉で、「アタリ」は私が切ったやつらしい。
 私も別に料理が上手ってわけじゃないんだけど、まあそりゃ、初心者のヒサメくんよりは、ね。
 ちなみに、他の料理も見た感じ、食べられないほどの魔力を持っているのはほとんど無かったので美味しく食べることができた。

「ごちそうさま。美味しかったね、ヒサメくん」
「はい。ですが僕は料理の難しさを実感しました」
「まあ私が言えたことじゃないかもだけど、料理なんてのは経験がほとんどだと思うよ。ヒサメくんも何回か練習すればすぐに上達するんじゃない?」
「だと、良いんですが……」
 そもそもヒサメくんの立場なら別に、料理ができなくてもあまり困ることはないだろうけどね。
 料理ができる男性はカッコいいとは思うけど。

 そんなことを話していたら、いつの間にか日は沈んで辺りはだんだん暗くなってきた。
 テントの中央の魔除の効果がある焚火のおかげで暗くてなにも見えないなんてことにはならないんだけど、都会の明るさを知っている私からすると真っ暗とほとんど変わらない。
 いつもだったらまだまだ起きてるような時間だけど、は早起きして旅立ちたいから、今日は早く寝ることにしようかな。

「ヒサメくん、私はお馬さんに挨拶だけしてもう寝ようと思うけど、ヒサメくんはどうする?」
「僕も、家族に手紙を書いたら今日はもう休むことにします。おやすみなさい、アカネ姉さん」
「うん、おやすみ……」

 ちなみに私のテントはお客様用の良いテントが使われていて、騎士たちはもちろん、ヒサメくんよりも上等な物らしい。
 若干申し訳なくは感じるけど、ここで遠慮してもしょうがないのでありがたく使わせてもらうことにしようかな。

「お馬さん、起きてますか?」
『お主か、もちろん起きておるぞ。何か用事であるか?』
「いや、ただ様子を見にきただけなんだけど。あ、そうだ。明日は朝早くから出発するつもりだから、お馬さんも早めに休んでおいてね」
『うむ、気遣い感謝する』

 お馬さんは騎士さんにしっかり手入れされた後なのか、今日の朝よりも体がピカピカというかツヤツヤになっていた。
 ほんと、騎士さん達にはお世話になりっぱなしだね。

 お馬さんと別れた私は高級テントの中に入って念のために内側から鍵をかけておく。
 このテントは高級品というだけあって空調管理の魔導や浄化の魔導も常に働いているみたいで、中にいるだけで心が安らかになる……気がする。

「さてと、じゃあ明日のために今日はもう寝ようかな」
 ジリリリリ、ジリリリリリリリ……。
「え、電話⁉︎ 誰だろう、こんな時間に」
 そう思って音の発生源を調べると、私のステータスが書かれているカードがブルブルと震えながら音を出しているみたい。
 カードの表面には「発信者:ピピ」と書かれている。

「もしもし? アカネだけど。ピピちゃん? どうしたの、こんな夜中に」
「はい! こちらピピです‼︎ アカネおねーちゃん、今お話ししても大丈夫ですか?」

 カードに触れると通話が始まったみたいで、カードの向こうからピピちゃんの声が聞こえてくる。
「大丈夫だよ。それでどうしたの?」
「よかったです。いえ、実は……」
 どうやらこっちの声もちゃんと向こうに届いているみたいだね。もしかしたら「ただお話をしたかっただけ」という可能性もあるし、それはそれで大歓迎なんだけど、ピピちゃんの声を聞く感じだと何か私に伝えたいことがあって電話した感じなんだよね……。
 悪いニュースとかじゃなきゃいいんだけど……。
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