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旅3

適当なこと言ってたら舎弟ができた

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「アカネさんはその、いつから旅を続けているんですか?」
「え?旅を始めたのはついさっきだけど?」
「いえ今回の旅という意味ではなく、……そもそも一番最初に一人で旅に出たのはいつ頃だったんですか? やはり15歳成人と同時に独り立ちするのが普通なのでしょうか……」
「えっと……」

 どう、なんだろう。
 私の場合記憶喪失(もしくは異世界転移)してるからあてにはならない気がするんだけど、私の記憶上はこうして一人旅をするのは初めての経験……かな。
 って、そもそも悩んでも仕方ないか。ありのままを話すことにしよう。

「えっと、いきなりこんなこと言われても戸惑うと思うけど私、じつは記憶喪失みたいなんだ。あんまり自覚はないけど。
 だからさっきの質問の答えは『私の記憶上は今回が初めての旅』で間違ってない、かな」
「記憶……喪失……ですか? それってある日、今までの記憶を突然失うってことですよね。それって怖くないんですか?」
「う~ん? まあ、言葉とか私の名前とかは覚えてるみたいだし、案外怖さとかはないかな。まあ、この先なにが起こるか分かんないっていうドキドキはあるけど、多分それは記憶を失っていなくても感じることができるものなんだよね」

 まあ、私の場合はそもそも記憶喪失じゃない可能性があるわけだけど。
 こんな私の適当な発言に感銘を受けちゃったのか、ヒサメくんは目から鱗がボロボロ落ちたように……って、泣いてる⁉︎ なんで?

「ど、どしたの? なんか辛いことでもあった?」
「いえ。ただボクは今まで『独り立ちが怖い』ってことばっか考えてたんだけど、そんな考えもあるんだって。それで急に肩の荷が降りたような気がして。泣く気はなかったんですけど、すいません」
「いや、泣きたい時は泣けばいいと思うよ。別に涙は恥ずかしい現象じゃないからさ」

 なんか家庭の事情でもあったのかな。
 まあ、まだ若いっていうか幼いぐらいだもんね。怖いのはしょうがないよ。
 てか私だったら中学卒業と同時に独り立ちとか考えらんないし。そういう意味で偉そうなことを言ったつもりはなかったんだけど。
 今は成り行きで高校生にして一人旅してるけど、もともとそんなつもりはなかった……ような気がするし。

「まあ、あんまり深く悩まなくていいんじゃないかな。人生なるようにしかならないっていうし」
「そう……ですね。ありがとうございます、そのアカネ……姉さん」
「姉さん⁉︎ へ、へえ、そんなふうに思ってたんだ、へぇー!」

 私は一人っ子だったから「姉さん」って呼ばれるのは新鮮だけど、それにしても急だよね。さっきまでは普通に名前呼びだったのに。
 あれかな、これが噂に名高いチョロインというやつかな? いや私のことじゃないよ! 別に私は姉さんって言われたぐらいで心が揺らいだりはしないけど⁉︎
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