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街2

奥様と、夜のお茶会

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「お待たせしました、お茶菓子も用意しましたよ。さあいただきましょう!」

 テーブルに座って待っていると、宿屋のおじさんの奥さんはティーセットと、美味しそうなクッキーを持ってきてくれた。
 紅茶をカップに移すと華やかな香りが広がって、心が落ち着くね。
 念のために確認したけど、紅茶からもクッキーからも魔力の反応は感じられないから、わたしが口に入れても大丈夫そう……。

「それじゃあ、いただきます。……このクッキーおいしい~! 紅茶にも合いますね!」
「そう? それは良かったわ! 遠慮せずお代わりしてもいいわよ。それよりも聞いたわよ、アカネさん。あなた学生さんなんですって? 凄いわねえ、若いのに!」
「まあ、そうみたいですね。記憶はないみたいなんであてにはならないんですけど……」
「そうそう、それも主人から聞いたわ! 大変ねえ。手伝えることがあったら言ってくださいね」
「いえそんな、もう十分に良くしてもらってますから。……ところで、ご主人とはもう長いんですか?」
「そうなのよ! あの人ったら人族でありながら長命種エルフであるわたしに告白してきたのよ! 『俺と一緒に里を出て暮らさないか』って言ってくれたの! 全く、無謀というか恐れ知らずというか」
「え、でも結婚したんですよね?」
「そうなのよ! わたしも最初は軽い気持ちだったの。飽きたら里に戻ればいいや、なんで考えたりもしてたわ! でもね、あの人が非力不器用なりに頑張ってるところとか、不意に優しくしてくれるところとかを見てたりすると、気づいたら、その……」
「好きになっちゃってたんだ」

 てか、ぱっと見おじさんと奥さんの歳が離れてるなってのは気になってたんだけど、奥さんはそもそも正確には人間じゃなかったらしい。
 エルフ……わたしの記憶だと魔法とか使うイメージだけど、そもそもみんな普通に魔導が使えるぐらいだからそうでもないのかな。

「あ、そういえばエルフといえば、妖精さんと仲が良さそうなイメージがあるんですけど、奥さんは妖精にあったことあります?」
「妖精……? 見たことはありませんが、妖精がどうかしたんですか?」
「いえ、妖精さんにわたしの記憶を取り戻す手がかりがあるかもっていう話もあって……」
「そうでしたか……。 確かにわたしが妖精の話を聞いたのも里にいた頃だったと思います。確か、エルフの森には妖精の集まる湖があるというお話なのですが、それこそそのお伽話と同じレベルの伝説ですよ?」
「そうですか……。まあ、気長に探すことにします。重要な情報を教えてくれてありがとう!」
「いえいえ、お役に立てたようで良かったわ! それで、アカネさんにはいい人、いないの?」
「えっとまあそれはその……、何せわたし、記憶喪失なもんですから、ははは……」
「そうなの……、じゃあ、どんな人が好みなの?」
「え~っ、急に言われても~……、でも優しい人の方がいいかな。なんていうか、わたしがめちゃくちゃしてても見守ってくれるというか……」
「わかる~! じゃあじゃあ、……」

 あ、知ってる。話が延々終わんない流れだこれ。
 てか明日は早起きしてこの街を出発するつもりだったんだけど、大丈夫かな……。
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