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魔王戦争
SSランクの勇者達
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将軍のことはアカリに任せて、俺は周りの元勇者、元魔物に目を向ける。
彼らの姿はすでに、元の形が人なのか魔物なのかもわからないほどに膨れ上がっている。
だが、この異形が『魔化』による影響なのだとしたら、それだけを破壊することで元の姿に戻し『魔剣』を取り除くことができるのではないだろうか……
可能性は高くないかもしれないが、試すだけの価値はある。
だがそのためには……
「さすがに、この剣で戦うのは無理か」
召喚によって生み出した剣は、普通に戦う分には問題ない性能を持っているが、これだけの数の魔化物を相手に、しかもその外殻だけを破壊するとなると、難しい。
むしろこれは邪魔になるからどこかに置いておきたいのだが、そのあたりに放置するのは……
どうしたものか。最悪、地面に突き刺しておけばあとから回収するときにわかりやすいか?
そんなことを考えていると、不意に「召喚した剣なのだから、召喚を解除できないか?」という考えが思い浮かぶ。
聖剣や魔剣の召喚を解除していた時と同じような感じで召喚した剣に意識を向けると、確かな手応えがある……どうやら、うまくいきそうだ。
召喚された剣は光の粒になって消滅し、手の平から俺の中に溶け込んでいく。
回収できている……ということは、この剣の召喚に使ったポイントがいくらか還元されていると信じたいところだが、その確認は後回しだ。
右手にソラワリを、左手にコトワリを装備すると、何でもできそうな気分になってくる。さすがは伝説の剣。
一度普通の剣を使ったからよくわかるのかもしれないが、この剣は正しい方向に斬りつけることで、それこそ名前の通り、空気……いや空間さえも切り裂くことができそうだ。
そして、コトワリ……こっちには切れ味は特にない。一見するとただの棒だ……が、少なくともソラワリの斬撃でも傷一つつかない程度には頑丈なようだ。
無謀に突撃してくる魔化した勇者や魔物の勢いを止めるのであれば、むしろこっちの方が使いやすいかもしれないな。
勇者や魔物の本体にはできるだけ傷をつけず、浮き出した膿だけを取り除く……
暴れ回る患者の身体にメスを入れて外科手術をするような荒療治だが、俺がやらなければ将軍の道具として使い潰される運命になるのだから、やるしかない。
気合いを入れる意味も込めて一度深呼吸をすると、アカリと将軍の方から金属が砕けるような、バキッと言う鈍い音が聞こえてきた。
周りへの警戒を解かないまま視界を向けると、魔剣を振り下ろしたまま勝ち誇った笑みを浮かべる将軍と、真っ二つに砕け折れた剣を放り捨てながら距離をとるアカリがいた。
「ヌハハハハッ! どうだ、これが魔剣の……我の力だ!」
「アカリ、大丈夫か!」
「大丈夫! でもイツキくん、ごめん……手加減はできないみたい。もしかしたら将軍さんを……殺しちゃうかも」
アカリはそう言って、俺の返事を待たずに剣を投げ捨てた。
そして腰に差してあった短剣を取り出す。
刀身に巻き付けられていた包帯のような布を丁寧に取り外していくと、夕日のように綺麗な、橙色の刀身が現れる。
「アカリ、その剣は……」
「この剣はね、イツキくん。とある村で村人さんに託されたの。強すぎるから使わずにいたけど、今はそんなこと言ってられないみたいだから。つまり、奥の手ってやつだよ! すごいでしょ!」
村人から託された?
……なるほど。俺がオニビ達から受け取り、脱出用にと村人に託した短剣は、めぐり巡ってアカリの手に渡ったわけか。
アカリが短剣を正面に構えると同時に、無数の精霊が召喚され、アカリの周りがキラキラと輝き出す。
白い精霊、青い精霊、緑の精霊、赤い精霊。様々な色の光の球が、何もない空間に突如現れる。
前に見た時の、優しい感じがした精霊とは違う。今までのが『精霊』だとしたら……そうか、これこそが『神霊』か。と、納得できそうなほどに強力な精霊達だった。
淡いパステル色ではなく、原色に近いような強い光を放つ精霊達は、ただ存在するだけで周りに影響を与えるのか、台風のように風が吹き荒れる。
その中心にいるアカリは、上昇気流に髪を巻き上げられながら、目を閉じて祈るように精霊達に語りかける。
「精霊さん……!」
精霊達はアカリの合図に応じるようにゆっくりとした動きでオニビの短剣に集まり、吸い込まれるようにして消えていく。
神霊と言っても過言でないほどの精霊を吸い込んだ短剣は、透き通るような半透明の刀身を伸ばしてロングソードに変貌した。
俺も、将軍さえも、あまりの神々しさに身動きが取れないようだった。
全ての精霊が短剣に宿ったとき、突如として風が吹き止んで凪のような状態になり、アカリがゆっくりと呟いた。
「……出来た! 名付けるなら『神霊剣』っていうところかな?」
より正確に名付けるなら、オニビの短剣が核になっているのだから『神霊オニビ剣』なのだろうが、野暮な口出しはしないでおこう。
橙色の刀身を軸に、半透明で白い、幅広の刀身が伸びている。
その威圧感は本物の聖剣や魔剣、俺の持つソラワリやコトワリに勝るとも劣らない。
オニビという、元々精霊に近いような種族が生み出した剣だから、アカリの召喚する精霊との相性も良いのかもしれない。
魔剣を持つ将軍も強敵だが、今のアカリなら、任せても大丈夫……だろう。
「アカリ、負けるなよ!」
「もちろん……イツキくんもね!」
将軍が指揮する魔化した勇者や魔物は、いつの間にか俺達を取り囲むようにじりじりと移動していた。
俺の仕事は、最低限こいつらの足止めをして、可能であれば……
こいつらを救う方法がないか、試行錯誤をすることだ。
彼らの姿はすでに、元の形が人なのか魔物なのかもわからないほどに膨れ上がっている。
だが、この異形が『魔化』による影響なのだとしたら、それだけを破壊することで元の姿に戻し『魔剣』を取り除くことができるのではないだろうか……
可能性は高くないかもしれないが、試すだけの価値はある。
だがそのためには……
「さすがに、この剣で戦うのは無理か」
召喚によって生み出した剣は、普通に戦う分には問題ない性能を持っているが、これだけの数の魔化物を相手に、しかもその外殻だけを破壊するとなると、難しい。
むしろこれは邪魔になるからどこかに置いておきたいのだが、そのあたりに放置するのは……
どうしたものか。最悪、地面に突き刺しておけばあとから回収するときにわかりやすいか?
そんなことを考えていると、不意に「召喚した剣なのだから、召喚を解除できないか?」という考えが思い浮かぶ。
聖剣や魔剣の召喚を解除していた時と同じような感じで召喚した剣に意識を向けると、確かな手応えがある……どうやら、うまくいきそうだ。
召喚された剣は光の粒になって消滅し、手の平から俺の中に溶け込んでいく。
回収できている……ということは、この剣の召喚に使ったポイントがいくらか還元されていると信じたいところだが、その確認は後回しだ。
右手にソラワリを、左手にコトワリを装備すると、何でもできそうな気分になってくる。さすがは伝説の剣。
一度普通の剣を使ったからよくわかるのかもしれないが、この剣は正しい方向に斬りつけることで、それこそ名前の通り、空気……いや空間さえも切り裂くことができそうだ。
そして、コトワリ……こっちには切れ味は特にない。一見するとただの棒だ……が、少なくともソラワリの斬撃でも傷一つつかない程度には頑丈なようだ。
無謀に突撃してくる魔化した勇者や魔物の勢いを止めるのであれば、むしろこっちの方が使いやすいかもしれないな。
勇者や魔物の本体にはできるだけ傷をつけず、浮き出した膿だけを取り除く……
暴れ回る患者の身体にメスを入れて外科手術をするような荒療治だが、俺がやらなければ将軍の道具として使い潰される運命になるのだから、やるしかない。
気合いを入れる意味も込めて一度深呼吸をすると、アカリと将軍の方から金属が砕けるような、バキッと言う鈍い音が聞こえてきた。
周りへの警戒を解かないまま視界を向けると、魔剣を振り下ろしたまま勝ち誇った笑みを浮かべる将軍と、真っ二つに砕け折れた剣を放り捨てながら距離をとるアカリがいた。
「ヌハハハハッ! どうだ、これが魔剣の……我の力だ!」
「アカリ、大丈夫か!」
「大丈夫! でもイツキくん、ごめん……手加減はできないみたい。もしかしたら将軍さんを……殺しちゃうかも」
アカリはそう言って、俺の返事を待たずに剣を投げ捨てた。
そして腰に差してあった短剣を取り出す。
刀身に巻き付けられていた包帯のような布を丁寧に取り外していくと、夕日のように綺麗な、橙色の刀身が現れる。
「アカリ、その剣は……」
「この剣はね、イツキくん。とある村で村人さんに託されたの。強すぎるから使わずにいたけど、今はそんなこと言ってられないみたいだから。つまり、奥の手ってやつだよ! すごいでしょ!」
村人から託された?
……なるほど。俺がオニビ達から受け取り、脱出用にと村人に託した短剣は、めぐり巡ってアカリの手に渡ったわけか。
アカリが短剣を正面に構えると同時に、無数の精霊が召喚され、アカリの周りがキラキラと輝き出す。
白い精霊、青い精霊、緑の精霊、赤い精霊。様々な色の光の球が、何もない空間に突如現れる。
前に見た時の、優しい感じがした精霊とは違う。今までのが『精霊』だとしたら……そうか、これこそが『神霊』か。と、納得できそうなほどに強力な精霊達だった。
淡いパステル色ではなく、原色に近いような強い光を放つ精霊達は、ただ存在するだけで周りに影響を与えるのか、台風のように風が吹き荒れる。
その中心にいるアカリは、上昇気流に髪を巻き上げられながら、目を閉じて祈るように精霊達に語りかける。
「精霊さん……!」
精霊達はアカリの合図に応じるようにゆっくりとした動きでオニビの短剣に集まり、吸い込まれるようにして消えていく。
神霊と言っても過言でないほどの精霊を吸い込んだ短剣は、透き通るような半透明の刀身を伸ばしてロングソードに変貌した。
俺も、将軍さえも、あまりの神々しさに身動きが取れないようだった。
全ての精霊が短剣に宿ったとき、突如として風が吹き止んで凪のような状態になり、アカリがゆっくりと呟いた。
「……出来た! 名付けるなら『神霊剣』っていうところかな?」
より正確に名付けるなら、オニビの短剣が核になっているのだから『神霊オニビ剣』なのだろうが、野暮な口出しはしないでおこう。
橙色の刀身を軸に、半透明で白い、幅広の刀身が伸びている。
その威圧感は本物の聖剣や魔剣、俺の持つソラワリやコトワリに勝るとも劣らない。
オニビという、元々精霊に近いような種族が生み出した剣だから、アカリの召喚する精霊との相性も良いのかもしれない。
魔剣を持つ将軍も強敵だが、今のアカリなら、任せても大丈夫……だろう。
「アカリ、負けるなよ!」
「もちろん……イツキくんもね!」
将軍が指揮する魔化した勇者や魔物は、いつの間にか俺達を取り囲むようにじりじりと移動していた。
俺の仕事は、最低限こいつらの足止めをして、可能であれば……
こいつらを救う方法がないか、試行錯誤をすることだ。
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