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魔王戦争
再起
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「グラット族に伝わる歌では、『剣』により試練が与えられ、それを乗り越えた者が魔王になれるとされています」
「試練……か。シオリ、その剣っていうのは? 見た目の特徴はわかるか?」
シオリは、俺の質問を聞いて再び本のページをめくり、数秒後に首を横に振った。
「この歌を調べる限り、剣は剣としか書かれていません。フマノの国の首都の地下に封じられし剣の試練と……フマノとは、グラット族にとっての人族のことのようですね。要するに、人間界の王国の地下に、封印されているという情報しかありません」
シオリがそう言って本を閉じ、本棚に差し込むような動作をすると、本はそのまま消滅した。
ネズミの方からも補足の説明はなく、どうやら情報はこれでそろったことになりそうだ。
いずれにせよ、ネズミたちが伝説に従ってたどり着いた場所に、聖剣があったことは事実だ。
すでに赤髪によって持ち出されていたとはいえ、偶然で片付けることはできない。
聖剣 / 魔剣こそが、魔物達の求めている『剣』である可能性は、とても高いだろう。
だとしたら、できるだけ早めにそのことをティナや赤髪に伝えなくては……
そう思って次の行動を考えていると、アカリが腰をかがめてネズミと視線の高さを合わせて質問した。
「ねえ、ネズミさん。私からも質問があるんだけど、良いかな?」
「……」
声かけを無視されたアカリは、何かに気がついたように聞き直す。
「あ、そっか。ねえ、グラット族ちゃん。質問あるんだけど、聞いても良い?」
「ナンダ、劣等種」
「そういうことだったんだ……じゃなくて。グラット族ちゃん達は、この伝説のことをどこまで信じているの? 本当に、私たちの……フマノ国の地下に剣があって、その剣の試練で魔王になれるって。そんなことを本気で信じているの?」
「劣等種、お前は何をわけのわからないことを……? 信じているに、決まっているダロウ!」
質問に対して、ネズミは怒ったような声で反論するが、アカリはそれに、さらにたたみかけるように質問をかぶせていった。
「でもグラットちゃん達は、『剣』の形も『試練』の内容すら知らないんだよね。もしかして、魔王になったらどうなるのかも、知らないんじゃないの? おとぎ話を信じる気持ちは、わかるよ。でも、そんなことに命までかける理由はなに?」
「それは……オレ達の命なんて……」
「君にも家族はいるんでしょ? 君の帰りを待っている人はいないの? おとなしく平和に暮らしていようとは、思わなかったの?」
「おとなしく……平和に……ダト? それができないから、こうしてオレ達は希望を掴むために、戦っているんダ! 劣等種ごときに、何がわかるモノカ!」
「何がわかるか……ですって? 君たちだって、平和に暮らしていたら突然魔物に襲われて、家族や仲間を殺される人の気持ちが、わかるの?」
「家族や仲間? ぬるいな、劣等種! オレ達は、抗わなければ『種』が滅ぶのダゾ! 我らも含め、先祖代々の歴史が、途切れることになるのダゾ! 生き汚い劣等種にはわからないだろうガナ!」
「そんなことを言っても、死んだら何の意味もないのに……」
アカリは、ネズミとの会話がうまくかみ合っていないのに歯がゆさのようなものを感じているようだが、この辺りで一度冷静になるべきだろう。
「アカリ、そろそろ止めとけ。これ以上話しても……」
「そうだね、イツキくん……ごめんね、ちょっと熱くなっちゃった」
「いいさ。それに、アカリのおかげであのネズミたちの状況が少し見えた気がするからな」
ネズミたちは、俺と戦っていたときもそうだったのだが、それぞれが自分自身の命よりも仲間の勝利を優先しているようだった。
これは俺の推測だが、魔界は人間界よりも、遙かに厳しい環境なのだろう。それこそ、仲間を犠牲にでもしない限りは生き残ることもできないぐらいには。
そんな環境で生まれ育ったことで、集団として生き残るためならば、個人の命すらも糧にするような倫理観が育っていったのだろう……
「それよりも、今はティナと赤髪に合流することにしよう。敵の目的が聖剣か魔剣だということは間違いなさそうだ。ということは、魔物共の戦力もティナ達に集中しているはずだ。あの二人が簡単に負けるとは思えないが……」
ネズミたちが現れる前までは、置いていかれたことに少なからず傷ついていたが、今となってはそんなことはどうでも良くなっていた。
聖剣 / 魔剣に選ばれなかったからと言って、俺の存在が否定されたわけではないことに気がついたのもあるだろうし、ネズミと戦い勝利することで、今の俺でも戦いの役に立つぐらいはできるんじゃないかと考えるようになったのもあると思う。
それに……
「そうですね。地上はまだ、魔物の侵攻で混乱しています。私たちにできることをやりましょう!」
「イツキくんと、シオリちゃんの言うとおりだね。勇者には、勇者の役目があるもんね! ……このネズミさんは、どうする?」
「約束通り、逃がしてやろう。できるだけ早く、ティナと赤髪の元へ向かいたい。こんなやつに、これ以上時間をかけるのはもったいないからな!」
まあ、二人の前で格好悪いところは見せたくないって気持ちも、多少はあるのかもな……
「試練……か。シオリ、その剣っていうのは? 見た目の特徴はわかるか?」
シオリは、俺の質問を聞いて再び本のページをめくり、数秒後に首を横に振った。
「この歌を調べる限り、剣は剣としか書かれていません。フマノの国の首都の地下に封じられし剣の試練と……フマノとは、グラット族にとっての人族のことのようですね。要するに、人間界の王国の地下に、封印されているという情報しかありません」
シオリがそう言って本を閉じ、本棚に差し込むような動作をすると、本はそのまま消滅した。
ネズミの方からも補足の説明はなく、どうやら情報はこれでそろったことになりそうだ。
いずれにせよ、ネズミたちが伝説に従ってたどり着いた場所に、聖剣があったことは事実だ。
すでに赤髪によって持ち出されていたとはいえ、偶然で片付けることはできない。
聖剣 / 魔剣こそが、魔物達の求めている『剣』である可能性は、とても高いだろう。
だとしたら、できるだけ早めにそのことをティナや赤髪に伝えなくては……
そう思って次の行動を考えていると、アカリが腰をかがめてネズミと視線の高さを合わせて質問した。
「ねえ、ネズミさん。私からも質問があるんだけど、良いかな?」
「……」
声かけを無視されたアカリは、何かに気がついたように聞き直す。
「あ、そっか。ねえ、グラット族ちゃん。質問あるんだけど、聞いても良い?」
「ナンダ、劣等種」
「そういうことだったんだ……じゃなくて。グラット族ちゃん達は、この伝説のことをどこまで信じているの? 本当に、私たちの……フマノ国の地下に剣があって、その剣の試練で魔王になれるって。そんなことを本気で信じているの?」
「劣等種、お前は何をわけのわからないことを……? 信じているに、決まっているダロウ!」
質問に対して、ネズミは怒ったような声で反論するが、アカリはそれに、さらにたたみかけるように質問をかぶせていった。
「でもグラットちゃん達は、『剣』の形も『試練』の内容すら知らないんだよね。もしかして、魔王になったらどうなるのかも、知らないんじゃないの? おとぎ話を信じる気持ちは、わかるよ。でも、そんなことに命までかける理由はなに?」
「それは……オレ達の命なんて……」
「君にも家族はいるんでしょ? 君の帰りを待っている人はいないの? おとなしく平和に暮らしていようとは、思わなかったの?」
「おとなしく……平和に……ダト? それができないから、こうしてオレ達は希望を掴むために、戦っているんダ! 劣等種ごときに、何がわかるモノカ!」
「何がわかるか……ですって? 君たちだって、平和に暮らしていたら突然魔物に襲われて、家族や仲間を殺される人の気持ちが、わかるの?」
「家族や仲間? ぬるいな、劣等種! オレ達は、抗わなければ『種』が滅ぶのダゾ! 我らも含め、先祖代々の歴史が、途切れることになるのダゾ! 生き汚い劣等種にはわからないだろうガナ!」
「そんなことを言っても、死んだら何の意味もないのに……」
アカリは、ネズミとの会話がうまくかみ合っていないのに歯がゆさのようなものを感じているようだが、この辺りで一度冷静になるべきだろう。
「アカリ、そろそろ止めとけ。これ以上話しても……」
「そうだね、イツキくん……ごめんね、ちょっと熱くなっちゃった」
「いいさ。それに、アカリのおかげであのネズミたちの状況が少し見えた気がするからな」
ネズミたちは、俺と戦っていたときもそうだったのだが、それぞれが自分自身の命よりも仲間の勝利を優先しているようだった。
これは俺の推測だが、魔界は人間界よりも、遙かに厳しい環境なのだろう。それこそ、仲間を犠牲にでもしない限りは生き残ることもできないぐらいには。
そんな環境で生まれ育ったことで、集団として生き残るためならば、個人の命すらも糧にするような倫理観が育っていったのだろう……
「それよりも、今はティナと赤髪に合流することにしよう。敵の目的が聖剣か魔剣だということは間違いなさそうだ。ということは、魔物共の戦力もティナ達に集中しているはずだ。あの二人が簡単に負けるとは思えないが……」
ネズミたちが現れる前までは、置いていかれたことに少なからず傷ついていたが、今となってはそんなことはどうでも良くなっていた。
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それに……
「そうですね。地上はまだ、魔物の侵攻で混乱しています。私たちにできることをやりましょう!」
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「約束通り、逃がしてやろう。できるだけ早く、ティナと赤髪の元へ向かいたい。こんなやつに、これ以上時間をかけるのはもったいないからな!」
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