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2巻
2-1
しおりを挟む第一章 魔界での闘争
平凡な学校で高校生活を送っていた俺――明野樹は、ある日、たくさんの人々とともに異世界へと召喚される。
異世界へ渡る際に、ギフトとしてスキルが配られたのだが、数あるスキルの中からどれを選ぶかは、早い者勝ちだった。
熱狂した大勢の人がギフトを奪い合うのを見ていて出遅れた俺は、結果的に、最後に残されたものを手にする。もちろん、それは最低ランクだったものの、「これでいいか」と割り切ることにした。
そして、異世界に繋がる扉を通り抜けようとしたとき、ラストワン賞として、「聖剣/魔剣召喚」という最強クラスのおまけスキルを貰った。
このスキルを手に入れたことにより、俺の異世界生活は、想像を超えて波乱に満ちたものとなる――
聖剣/魔剣召喚には、使用中の姿が変わってしまうという副作用があった。それにより、天使と悪魔を混ぜた異形の姿になった俺は、そんな俺を魔物と誤解した真の勇者と交戦するが、大敗して魔界へ逃亡する。
ボロボロに傷つきながらも魔界にたどり着いた俺を助けてくれたのは、そこに住む、言葉を話す猫だった。俺を仲間と認めてくれた彼らと話をしていると、どうやら大陸の外から来た鬼の魔物に苦しめられていることが分かった。
事情を聞いた俺は、猫たちのために鬼退治を始めるのだが……
「ふう、これで私たちが見つけていた凶悪種は全部だにゃ。それにしてもすごいにゃ。本当に全部倒してしまうなんて……」
「まあ、これでも俺は、人間界では勇者なんて呼ばれているからな」
猫とともに、魔界に蔓延る魔物を倒していると、気がついたらほぼ丸一日が経過していた。
普通の魔物であれば、高レベルのステータスのおかげで簡単に倒すことができるのだが、鬼と呼ばれる種族は簡単にはいかなかった。
特に、一部の鬼は力が強いだけではなく、特殊な能力も持っている。そういう相手にはどうしてもギフトの聖剣/魔剣召喚に頼る必要があった。短時間であれば、聖化や魔化の影響も最小限に抑えられるし、そもそも制限時間の関係で節約して使うようにはしていた。だが、どうしても大量の敵と戦っていたら、わずかずつでも使用時間が積み重なっていくわけで……
その結果、ギフトの残り時間は聖剣が五秒、魔剣が八秒となっていた。今までは時間を残すことを意識していたのだが、そろそろどちらか片方を使い切ってクールタイムに入り、使用時間を回復させたいところだな。
ただ、レベルが上がったため、使用時間が増えるに比例してクールタイムの時間も増え、今や半日を超えるほどになっている。しかも、その間ずっと聖化か魔化が発動している。
長時間の聖化や魔化は暴走する可能性も捨てきれないのだが、だからといってずっとこのままというわけにはいかない。それになんとなくだが、片方ずつであればなんとかなるような気がしている。
聖化と魔化を何度も経験したことで、その影響に対して慣れてきたのかもしれないし、レベルが上がった結果、耐性のようなものがついたのかもしれない。
いずれにせよ、このままこのギフトを永遠に封印することはできない。
だから、聖剣を発動させた。すると、体が聖化の影響を受けて変質していく。
白い翼が生え、皮膚は白くなり、髪は金色に染まり、身体能力が大幅に向上する。
「んにゃ? 人間!? 敵はもういないのに、いきなりどうしたんだにゃ?」
「(五、四、三、二、一……)よし、剣は消えたな。まあ、あまり気にするな。そういう儀式みたいなものだと思ってくれ……」
猫は、何も言わずに剣を召喚した俺に驚いた様子だったが、俺はそれを無視して聖剣を発動させたまま心の中で五秒間かぞえる。すると、使用時間を使い切った聖剣は消滅し、クールタイムに入った。視界の隅には、240という数字が表示される。
「今度は、剣が消えても見た目が戻らないんだにゃ? 人間ってのは、みんなお前みたいな能力を持っているのかにゃ?」
「いや、すべての人間がギフトを持っているわけじゃないんだが……召喚された勇者なら、何らかの能力を持っている。その中でも俺のは変わっているけどな」
魔界に住んでいるというこの猫にとって、人間を見るのは俺が初めてなのだろう。
ただ、俺のギフトは勇者の持つギフトの中でも特殊なものだ。それに、そもそも勇者という存在自体が人間の中でも特別な存在なのだと思うから、そのあたりだけでも簡単に説明しておこうかな。
「俺たち勇者は、この世界に召喚されたときにギフトってのを与えられたから、みんな大体特殊な能力を持っているんだ。俺のこれもそのギフトの一つなんだが……」
「でも、すげーにゃ! 私たちも敵を倒せば強くなるけど、人間ほど強いのは見たことがないし、しかも特殊能力まで持っているなんて!」
猫が言っている「敵を倒せば強くなる」というのは、経験値を稼いでレベルが上がることではなく、単に戦闘の経験を積めば実力が上がるという意味なのだろうか?
もしかしたら、猫や魔物にもレベルと似たような概念があって、それで強くなっているのかもしれないが……このステータスカードは召喚者専用という話を聞いたことがある。そのあたりのことを確認するのは、難しそうだな。
「それにしても、猫の話だと、あの鬼は魔王の部下なんだよな? 何か目的があってここにいるというよりは、何かを待っているような感じだったんだが……一体どういうことなんだ?」
「それは……私たちにもよくわからないのにゃ。この先には、魔力を持つ魔物には通り抜けられない結界があるから、あいつらがいくら集まったところで、先には進めないはずなのにゃ……」
「結界?」
初めて耳にする情報が出たので聞き直すと、猫は「そう、結界にゃ」と言って、何かを思い出したように言葉をつなげた。
「……そういえばボスは、あれのことを『人間界に接する結界』とか言ってたにゃ」
「ということはまさか、魔王の目的は人間界の侵略なのか?」
俺が聞いても、猫は「だから、そんなことは知らないのにゃ!」と言って、首を横に振っているが……まあ、あまり深く考えても仕方がないか。
少し前に、人間界はある敵に襲撃され、大きな被害を受けている。
あれが魔王軍による攻撃だったとするならば、魔王は人間界への進出を目指していることになる。だとすると、ここに魔王の配下である鬼が集まっているのは、人間界へ侵略するための準備、とも考えられる。
そういえばあのとき、あの魔人は「結界がきつい」と言っていた。そうしたら、まずは結界を破壊するのが目的ということも、十分にあり得るのではないだろうか……
しばらく歩いて猫の住処までたどり着くと、「にゃーにゃー」と鳴き声を上げながら、言葉を話せない猫たちが俺たちを出迎えてくれた。
聖化で見た目は変わっていても、猫たちは変わらない態度で俺に接してくれる。聖化の影響で精神は苛立っているけれど、猫たちの可愛さに癒されることは変わらないな。
「人間、私たちの住処に着いたにゃ!」
「にゃー、にゃー!」
猫たちは、俺と言葉を話せる猫に対して何かを訴えているようにも見える。そしてその猫語を聞いた猫は、慌てたように俺の方へ振り向いた。
「人間、大変にゃ! 強大な力を持った何者かが、地下から上がってきているらしいにゃ!」
「地下……まさか、俺が通ってきた洞窟を? ということは、まさかアカリとシオリが?」
あの二人なら、俺を追って魔界まで来ても不思議ではない。そして、その可能性が一番高い。
どうやって俺の居場所を調べたのかは分からないが、地上に俺がいないことから、俺が魔界に向かったと推測したのだろう。
もし俺が、アカリとシオリの立場だったとしたら、同じように魔界まで追いかけてでも助けるぐらいはしたはずだ。だから、二人が来てくれるのは、ある意味では「当たり前」のことなのかもしれない。だが、それでも危険を顧みずに魔界まで来てくれるのだとすれば、二人に会えたらまず最初に「ありがとう」と言おう。照れくさいが、まあそれぐらいは我慢しようかな。
「……人間、その顔は心当たりがあるのかにゃ?」
「いや、まだ確証はない。だがもしかしたら俺の知り合い……仲間かもしれない」
「そうかにゃ……とにかく確認しに行くにゃ! だけど場合によっては……」
「わかってる。もし来たのが魔物だったら、俺が全力で倒す。それが俺の役割だからな!」
猫たちに案内されて、強大な力を持つ何者かが現れるというところに来た。少し離れた位置から茂みに隠れて見たその場所は、やはりというか、俺が人間界から通ってきた地下洞窟の出入り口だった。
この洞窟の出入り口には、俺が洗浄の力で修復した巨大な扉がある。この扉を開けるには、魔力をうまく流す必要があり、野生の動物や魔物が通り抜けるのは難しいはずだ。
ということは、ここから現れるのは俺と同じ勇者の誰かである可能性が高いのだが、そうでなくて正体が魔物だった場合、それはかなり知能の高い魔物ということになる。
だから決して気を抜くことはせず、気配を殺しながらしばらく待っていると、いくつかの人影が姿を見せた。
「ふう。ようやく地上が見えた。思ったよりも長い道のりであったの……」
「お館様、ここが魔界でござるか?」
「やっと着いた! でも、ここからさらに、今度は地上を歩いて帰らなきゃいけないんでしょ?」
洞窟から顔を出したのは、アカリとシオリではなく、忍者と真の勇者の老人と……あと一人は知らない少年の三人だった。
少年も、真の勇者や忍者と親しげに話をしている様子だから、低ランクの勇者ではないだろう。ということは、まだ俺が会ったことのないSレアの、錬金術師か吸血鬼である可能性が高い。
耳を澄ませて話を聞いている限りだと、どうやらあの三人も、俺と同じように人間界からこの洞窟を通ってここまで来たようだ。
「人間、お前の言っている知り合いとは、あいつらのことかにゃ?」
「ああ。あの小さいやつは初めて見るが、ひげの生えた老人と、その隣の男は会って話をしたことがある。味方と言えるかどうかはわからないが、敵ではない……はずだ」
そもそも俺が魔界に逃げ込むことになったのは、聖化と魔化を重ねがけしたとき、あの真の勇者に魔物と間違えられて襲われたのが原因だった。だから、聖化の影響で見た目が変わっている今の俺だと、もしかしたら襲われる可能性もある。
聖化していない、元の姿なら、事情を聞いてくれるだろうし、理解してくれると思う。
あいつらが出てくるとわかっていたなら、聖剣の時間を残しておいて、聖化していない状態で話をしたかったところなのだが……今更後悔してもどうにもならない。
とりあえず、事情を説明するのは元の姿に戻ってからの方がいいだろうし、となると再会は八時間後か……
そんなことを考えながら観察を続けていると、三人組は洞窟を出てすぐの場所で立ち止まる。それから真の勇者が振り返って「安全なようじゃ。来るがいい」と言って、出入り口に向かって手招きをした。
どうやら、真の勇者たち以外にも、魔界に足を踏み入れた人がいるらしい。
彼らに続くようにぞろぞろと、十人……いや、二十人近くの男女が洞窟から顔を出す。
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そして最後に、ようやく見知った二人が姿を見せた。
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「ああ、あそこにいる二人なんだが……」
アカリとシオリを指さして説明すると、猫はそちらに視線を向けながら、ふむふむと頷いた。
「そういうことなら、私に任せるにゃ!」
「任せる? 何を?」
「私たちは、気配を消して行動するのが得意なのにゃ! だから、その人間どもに伝言を伝える仕事は、私に任せてほしいのにゃ!」
気配を消したところで、真の勇者をごまかせるとは思えないが……だが、そうか。猫なら、近づいても怪しまれない可能性は高いか。
だとすると、猫に伝言してもらうのも悪くないのかもしれないな。
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「わかった、任せるにゃ!」
そう言って猫は気配を消して、アカリとシオリのもとへと走っていった。
猫が通りがかった瞬間、真の勇者がピクリと姿に反応したが、どうやらただの猫だと勘違いしているようだ。猫はそのまま他の勇者に気づかれることなく、無事に二人のもとへたどり着いた。
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その後、抱きかかえた猫が突然喋り出したため、シオリが驚いて投げ捨てそうになりつつも、ここからでは耳を澄ませても聞こえないぐらいの小声で話し合いを始める。そしてそれが終わると、猫はシオリの腕からぴょんと抜け出して、その場から離れていった。
シオリは名残惜しそうに、今まで猫を抱いていた両腕を見つめている。
「人間、あの人間と話をしてきたにゃ!」
しばらく待つと、顔を手でゴシゴシと毛繕いしながら、猫が歩いて戻ってきた。
「お疲れ。シオリはなんて言ってた?」
「とりあえずイツキが生きていると伝えたら、お前と直接会って話をしたいと言っていたにゃ。待ち合わせ場所はこちらが決めて、案内は私たちが引き受けるにゃ」
「詳しい話はそのときにってことか。……とにかく、助かった。本当にありがとう」
「このぐらい、お安いごようだにゃ!」
「待ち合わせ場所は、猫たちの住処でもいいか?」
「問題ないにゃ!」
勇者たちはまだ、俺がここにいることに気づいていないようだが、いつまでもここにいたら、いずれ誰かに見つかるだろう。
アカリとシオリの案内は猫たちに任せることにして、俺はこの場を離れて猫の住処に戻ることにするか。
「俺はもうこの場を離れるから、二人の案内は猫、お前たちに任せるぞ……」
「わかったにゃ! 私はここで見張りを続けるけど、お前は一人で帰れるかにゃ?」
「ああ、問題ない。それじゃあまた後で……」
「――その前に少しだけ話を聞きたいのでござるが……お主、イツキ殿で間違いないでござるな?」
「「んにゃ!?」」
その場から立ち去ろうとした瞬間。
ついさっきまで気配もなかった場所から突然声が聞こえたせいで、喉の奥から変な声が出てしまった。まさか、猫の鳴き声とのハモリを経験することになるとは……
「すまぬ、驚かせるつもりはなかったのでござるが……我らを監視する目が気になったのでござる。ところでお主、雰囲気から察するにイツキ殿とお見受けするが、いかがでござろう」
落ち着いてから改めて見ると、そこにはいつの間にか忍者がいた。距離が離れているし、他の勇者が気づいた様子はないのだが、こいつには普通にバレていたらしい。さすがは忍者というところか。
「あ、ああ。よく分かったな。確かに俺だ。イツキだ。忍者か、久しぶりだな」
「やはりイツキ殿でござったか。隠れて出てこなかったのは、その容姿が原因でござるか?」
猫たちは、俺の姿が変わっても特に何も言わなかったから、もしかしてそこまで姿が変わってないのかとも思いはじめていた。しかし忍者の反応を見る限り、人間視点だと俺の体はかなり変化しているようだ。
「まあ、そういうことだ。事情があってこんな姿になっている。誤解を与えるのも悪いと思うから、元に戻るまでは一人で行動しようと思っているんだが……」
忍者は「ふむ」と言いながら、俺の全身を上から下までざっと観察すると、改めて何かに納得したかのように口を開いた。
「なるほど、これがあの二人が話をしていた『変身』というやつでござるな。見た目から察するに、それは聖化……ということは、魔化の変化はまた別のパターンでござるか?」
「……まあそうだが、あの二人はお前にそんなことまで話していたのか?」
「これは拙者が盗み聞きをしただけでござる。誰にも話しておらぬから安心するでござる!」
盗み聞きって……。さすが忍者。でもこいつが、モラルを守ってくれる忍者でよかった。
「人間、こいつは何者にゃ? さっきから、目の前にいるのに全く気配を感じないにゃ!」
「ああ、こいつは忍者だ。名前は……まあいいや。だが忍者、勝手に抜け出して俺のところに来たりして、大丈夫なのか?」
「安心せよ、これは拙者の分身でござる。本体は今も本陣で仮拠点の設営をしているし、この分身には誰も気づいていないでござる! そして拙者の名前はハルトでござるよ、イツキ殿!」
「忍者? 分身……? 人間の言っていた通り、人間はみんな変なやつばっかりだにゃ」
猫は、俺と忍者をひとまとめにして「変なやつ」であるかのように言うが、失礼な。
確かに忍者が変なやつなのは間違いないが、俺はせいぜい武器を出したり物を綺麗にしたりできるだけの普通の人間のはずだ。
「……まあ、いいか。ところで、せっかく来てくれたなら、お前たちがこんな場所まで来た理由を教えてくれないか? 俺一人のために、あれだけ大勢の勇者を連れてくるってのは、さすがにおかしいしな」
「そのあたりのことは、アカリ殿とシオリ殿も交えて話しておきたいでござる。猫殿との話を聞いていた限り、二人とは合流するつもりなのであろう? まずは集合場所に行くでござるよ!」
猫とシオリの話まで聞いていたのか……こいつの前で隠し事をするのは、もう無理かもしれないな。
忍者を連れて猫たちの住処へ向かうと、そこで待機していた普通の猫たちは、異常に気配の薄い忍者を見て、さっきの繰り返しのように不審に感じて警戒心を強める。そこで俺が「こいつは大丈夫だ」と言うと、なんとか落ち着いてくれた。
そのまま二人で洞窟の中に入るが、猫たちはそれでも不気味がって忍者には近寄ろうとしないから、自然と俺のもとへと集まってくる……これはこれで、まあいいか。
猫と戯れながら待っていると、洞窟の外から何かが近づいてくる足音が聞こえてくる。
「イツキ君……? いる?」
案内役の猫に連れられてきたのは、アカリだった。どうやら無事に、他の勇者に気づかれることなく、ここまで来られたらしい。
「アカリか? 入ってきて大丈夫だぞ」
「失礼しまーす……って、誰? まさか、イツキ君?」
「ああ、俺だ。聖剣の……聖化の影響で見た目が変わっているがな」
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「確かに今のイツキ殿は、北欧風な雰囲気が漂っているでござるな……」
「うんうん、そうそう……って、忍者君? なんでここに……君はいつも突然現れるよね」
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「シオリちゃんは、向こうに残ってるよ。私たち二人が同時にいなくなると、さすがに怪しまれちゃうからね」
まあ確かに、ここが魔界である以上、誰にも言わずに勝手に抜け出すのは要らぬ心配をかけることにもなりかねない。それと、ばれかけたときに誤魔化しというか、言い訳をするやつが残る必要があったということか。
俺の事情については、シオリにも聞いておいてほしかったのだが……あとでアカリから伝えてもらうことにしよう。
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