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再び、ログイン。

ログインする前に

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 ログインする前に、母親に伝えておかなくっちゃ。隣の部屋で寝ている母親のところへ行く。

「お母さんお母さん」
「……何よ」

 お母さんが機嫌悪そうにベッドから顔をちょこんと出す。そりゃあそうだよね、せっかく寝てたのに邪魔されたら誰だって怒るよね。

「私今からまた、ゲームにログインするけど、会社にまた欠勤連絡入れておいてほしいんだ。ニュースになってるゲームをしてたって伝えておいてくれたら、少なくとも3日後までは休んでも問題にはならないと思うし」
「えー、3日も休むの。文句言われるんじゃない?」
「そもそも、ゲーム内に閉じ込められてログアウトできませんでしたって言えば通用するし、そもそもあの会社、あと少しでやめるから問題ないし」

 もちろん、前までの私なら考えられないことだ。他の会社に行ったっていらないもの扱いされるし、どこでも必要とされてないから、この会社で続けるしかないって思っていたころなら。周りにどう思われるか心配で、クビになるのが怖くて続けていたあの頃なら、絶対にこんなことはしなかった。でも今は違う。

 あの会社に残り続ける必要性がなくなったし、新しい会社では私を必要としてもらえている。だから、今の会社に未練なんてない。これから行く会社のために、何ができるか。その会社の自分の直属の上司のどんな役に立てるのか、それが大事。

「……変わったわね」

 お母さんが眠そうな目をこすりながら、口の端だけ上げる。

「仕方ない、電話だけならしておいてあげるわよ。ゲームのことはお母さん、よく分からないけど。気を付けてね」
「うん。……おやすみ」

 そして自分の部屋に戻ってヘッドギアをかぶる。私や、私以外にも同じように感じている人たちのために。できることをしよう。
 ゲームのアイデアを考えたムトウさんだけじゃない。私たちにとってもあのゲームの世界は、大切な居場所なんだから。

 ゲームの中にログインする前に、アイダさんに連絡を取る。自分は先にログインしていること。アイダさんも準備でき次第ログインしてほしいこと。それだけ送ると、今度こそゲームにログインした。

 カンナさんのベッドの上で目覚める。さっそく、シュウカさんにチャットを送る。

『シュウカさん、今、ゲームにログインしました。シュウさんと連絡を取りますね』
『了解。フレンドサーチ機能で、サランちゃんがどこにいるかは分かってるから、そっちに向かうね』

 私がチャットを送ると、すぐにシュウカさんからチャットが返ってくる。それを確認して私は『どこかの世界の通信技術』、電話もどきを身に着ける。

 片眼鏡と片方のイヤリングを組み合わせて作った『どこかの世界の通信技術』に向かって、話しかける。

「シュウさんに連絡を取りたいです」

 すると、現実世界と同じ、相手へ電話をつなぐ時の音が数回する。そのあと。

『……無事にそちらにログインできたようだな』

 シュウさんの冷静な声を聞いて一安心。どうやら無事にログインできたし、そしてシュウさんにもつながったみたいだ。
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