言霊付与術師は、VRMMOでほのぼのライフを送りたい

工藤 流優空

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攻略!ビルもどきダンジョン

企画書の作成日

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 暗がりの中。さっきまで光は確かに、私たち3人のたいまつ分だけだった。しかし今、4つ目の明かりが確かに、存在している。光の発生源は、少し離れたデスクの上の、パソコン画面。

「私、何かまたやらかしたんでしょうか」
『いやむしろ、事はいい方向に傾いてると言えるんじゃないか』

 シュウさんが言う。

『何らかの条件が達成されて、再びフラグが立ったということだろう。これ自体が、ストーリー進行に必要かどうかは、まだ分からないがな』
「そうですね」

 私、一級フラグ建築士になれそうだ。そんなことを考えながら、パソコンのディスプレイの明かりが出ているデスクまで戻ってきた。ここは、さっき企画書を調べることができたデスクだ。【マーキング・パウダー】の丸マークが残ってる。

「これって実際にパソコンがいじれるとか、そういう感じでしょうか……」

 そう呟きながら、パソコンに触れた時。勝手にディスプレイ上に、一つのフォルダが表示された。

「うわぁ、勝手に画面が立ち上がった!」
『……つまりは、そっちでは操作できなさそうということだな』
「はい。多分」

 そう言いつつ、置いてあるマウスに触れてみるけど、反応がない。やっぱり、こっちで操作するんじゃなくて、あらかじめ動きがプログラミングされてるのかも。

「ということはやはり、フラグを立てないとこのパソコンは立ち上がらない仕組みになっているんでしょうね」

 そう言いながら、画面を眺める。今画面には、企画書フォルダが表示され、その中にはいくつかのWord文書が並んでいる。それぞれにタイトルがつけられていた。

 Word文書にはそれぞれ、作成日が表示されている。

「あ、VRMMOものの企画書作成の日にち、書いてあります。これで、こちらの企画書が出来た日にちは把握できました」

 そうシュウさんに報告するつもりで声を上げる。すると、また別の場所から物音が響いてくる。

 顔を上げると、光がまた一つ増えていた。それも、パソコンのディスプレイの光。

「……なんだか、相手の思惑通り動いてるって感じがして少し嫌ですね」
『……それが相手の狙いなら、付き合ってやるしかないだろう』

 シュウさんは冷静だ。私は、新しく電源が入ったパソコンの方に向かう。ディスプレイがついているパソコンのデスクは、やっぱり2つめの企画書を手に入れたデスク。

 そしてそのパソコン画面に映し出されているのは、やっぱり企画書フォルダ。その中には、このデスクで見つけた企画書と同タイトルのWord文書がある。

「最初に見つけた企画書の方が、先に作成されたもののようです」
『みたいだな』

 シュウさんの声が聞こえたのと、ほぼ同時。

「プラグ、全部接続完了したよ!」

 シュウカさんの声が響いた。いつの間にかシュウカさん、全部のプラグを見つけてくれてたんだね。

『オメデトウゴザイマス。9カイエリア、クリアデス。ログアウトスルケンリヲ、アタエマス』

 どこからか、機械音声が響いてきた。クリア! とりあえずクリアしたんだね!
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