言霊付与術師は、VRMMOでほのぼのライフを送りたい

工藤 流優空

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攻略!ビルもどきダンジョン

敵の出現

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「なんだか、VRMMOのダンジョンというより、RPGのダンジョンを彷彿とさせますよね」

 私が言うと、シュウカさんも頷く。

「そういえば。このゲームのダンジョン、結構回ってきたつもりだけど、こういうダンジョンは初めてかも」

 私は、この前シュウさんたちと一緒に行ったダンジョンしか行ったことがないから分からない。だけど、シュウカさんがそう言うんだから、そうなんだろう。

『……ダンジョンにも様々な種類がある。経験値稼ぎを目的とした、モンスターがわんさか出てくるものや、レア素材などが見つかりやすいダンジョンなど、目的に合わせたダンジョンが多数用意されていると思ってもらえると分かりやすい』

 ちなみに、シュウカやこちらがよく行くのは、経験値稼ぎ目的のダンジョンだ、とつけたすシュウさん。

「時々、武器や防具の生産や強化のために素材系のダンジョンに入ることもあったんだけど、それともなんか、違う気がするよね……」
『基本的に、ダンジョンの形状としては、城系、洞窟系、神殿系が多かったしな。そもそも、ビルの形をしたダンジョンを見たのはこれが初めてだ。……今まで見てきたダンジョンの常識は通用しないかもしれない、注意しろシュウカ』
「分かってるよ」

 シュウカさんはそう言いながらも、書類の束に触れている。

「でもさ、やっぱり気になるなぁ。これだけ書類の山とかデスクの並びとかこだわってるのに、全部触れられないなんて」
「いや、触れるものが、もしかしたらあるのかもしれません……」

 私の言葉に、シュウカさん、そして完全に委縮してしまっているずんだ餅さんが顔を上げる。

「わざわざこれだけこだわって作成したダンジョンですよ? 何かなければおかしいと思いませんか」

 どこか一か所だけ触れられる場所があったりとか、一個だけアイテムが置いてある場所があるとか、あり得そうだよね。

 今までやってきたゲームでも、一つの部屋歩き回れるのに、調べられる場所はたった一つしかないって経験あったもん。

 調べる楽しさ、冒険する楽しさ、プライスレス。そう思っていたら。再び、何かを引きずる音が。

「あれかな、ここのダンジョンのボス的な何かですかね」
「イベント的なやつで、顔見せだけーとか」
「ああ、ありますよね、そういうゲーム」

 イベントシーンとして、一瞬姿を見せるけど、すぐいなくなったりするヤツね。私とシュウカさんが頷きあっていると、ついに、音の主が現れた。

 松明でよくは見えないけど、目の前に立っているのは分かる。それにしても、大きい。松明の明かりだけじゃあ、首までしか照らせないや。どんな顔なんだろ。

 その瞬間、シュウさんが珍しく電話の向こう側で叫んだ。

『そいつと戦ったらマズい、逃げろっ』
「え? なんで、兄ちゃん。どうせ、イベントでしょ」

 能天気なシュウカさんの声に、シュウさんが鋭い声で言う。

『バカ、パラメーターを見ろっ』

 その声で私たちは、後退しながら相手を凝視してパラメーターを見た。

「……敵対状態、一撃必殺、無敵……っ!!?」
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