言霊付与術師は、VRMMOでほのぼのライフを送りたい

工藤 流優空

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攻略!ビルもどきダンジョン

エレベーターの中で

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 エレベーターの扉は、私たちが入ったあとすぐに勝手に閉まった。最初に乗り込んだずんだ餅さんが、声を上げる。

「行き先ボタンがない……?」

 それを聞いて、私とシュウカさんの視線が一気にずんだ餅さんの方に集まる。現実世界では、行き先ボタンや開閉ボタンがある場所……。そこに、ボタンは一つもなかった。

「階数ボタンも、開閉ボタンもないんだけど……」

 これ、最初からどこに行くか、プログラミングされてるとかなのかな。ほっておいても、どこかにたどりつけるのかなぁ。そんなことを漠然と考えていたら。

「え!? 扉しまっちゃったんですけど!! どうするんですか!!!」

 ずんだ餅さんが慌てた様子で言った。私やシュウカさんより動揺している。

「これ、もしかして、空気抜かれて酸欠で死ぬんじゃ……っ!?」
「ずんだ餅さん落ち着いてくださいこれはゲームです」

 私は早口でそう伝えた。すると、シュウさんの声が響く。

『……ずんだ餅、しっかりしてくれ』
「いやいやいや!? シュウさんはこの場にいないから、そんなことが言えるんですよ!!! どうしようどうしよう、こわいこわい」

 ずんだ餅さんが意味もなく、小さなエレベーター内を右往左往している。そんな時だった。

 体がすっと浮く感覚がある。エレベーターが、上に上がっている感覚。現実世界のエレベーターなら、今、どのあたりに到達しているか表示される場所を見た。

 そこには、9階と表示されていた。

「9階!? いきなり9階行くんですか!?」
「そもそもこのビル、何階建てなんだろ」

 入る前に数えてくればよかった、とシュウカさんがぼやいた。

『このダンジョンは、他の冒険者グループとの共闘はできません』

 そう、アナウンスが流れた。それとほぼ同時に、エレベーターが上昇を止めた気配がした。

 扉が静かに開く。エレベーターの中から見える扉の先は、真っ暗で何も見えない。

「うわぁ、行きたくない……」

 ずんだ餅さんが沈んだ声で言う。確かに、真っ暗なダンジョン、しかも洞窟などではない、人工物の暗さは、別の怖さを持っている気がする。

「でも、せっかく来たんだから! 行ってみようよ!」

 シュウカさんが張り切った声で言う。シュウカさんは、まだ見ぬ強いモンスターが出てくることを期待してるんだろうなぁ。

「うん、何かあればシュウカさんが助けてくれるでしょうし、問題ないですよね」

 ということで、と私はシュウカさんの背中を押した。

「シュウカさん、先頭を行って頂けますか」
「任せてっ」

 シュウカさんがぐっと親指をつきだした。そのまま、エレベーターの中から飛び出して行く。

「あ、待ってくださいっ」

 私も慌てて追いかける。さらに後ろから、ずんだ餅さんが続く。新しいダンジョン攻略開始だね!
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