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閉じ込められた世界で

ずんだ餅さん

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「え……っ!?」

 思わず、ずんだ餅さんの顔を凝視する。すると彼は、そっぽを向きながら、聞こえるか聞こえないくらいかの大きさの声で続ける。

「僕は、嘘はついてませんよ。だって聞かれませんでしたし。あなたはナイトメア・ソフトウェアの社員さんですか、とか……」
「えっと、ちょっと待って下さい。頭が追い付いていかないんですけれど……。ずんだ餅さん、ナイトメア・ソフトウェアの社員さんだったんですか」
「だから今、そう言ったじゃないですか」

 さも当然、といった表情でずんだ餅さんが私を見る。

「ええ……。それなら、さっき私が社員としての契約を結んだ話をしたところで、自分もナイトメア・ソフトウェアの社員だってお話してくれればいいじゃないですか……」
「いやいや、個人情報をそんな簡単にあかしたら危ないじゃないですか」

 ずんだ餅さんの言葉に、納得する。確かに。

「確かに、そうですよね。……でも、ありがとうございます」

 そう言うと、ずんだ餅さんが目を見開いた。

「なぜあなたにお礼を言われなくてはいけないのです?」

 不審そうに眉をひそめる彼を私は笑って見つめる。

「だって、今そのことを言う必要ないじゃないですか。今まで黙ってたんですから、これからも黙ってたってよかったはずです。でも今、ずんだ餅さんは正直に私に話してくれました」

「まぁそうですね」

 まだ何か言いたそうな表情のずんだ餅さん。そこに言葉を付け足す。

「今まで黙っていた情報を今、話してくれた。それってつまり、少しは見ず知らずの私を信用してくれたと考えてもいいのかなと思ったんですよね」

 今でも、黙っておいた方がずんだ餅さんにとっては、よかっただろうから。でも、ちゃんと教えてくれた。

 それって、最初に出会ったときよりは、今の方が信頼されてるってことだと思ったから。

「だから、ありがとうございます。……信用してくださって」
「いや。……サランさんが先に信用してくださったから、こっちも信用したというだけです」

 それから彼は、バツが悪そうに頭をかいた。それから、でもと真剣な表情をする。

「自分が社員であるという情報や、スキルの詳細について話す相手は、十分に選んでくださいね。悪用されないとも限りません」

 そう言われて、はっとする。スキルや社員であるという情報は、かなり危険度の高い情報になる。個人情報に匹敵するレベルかもしれない。

「まぁ今回、僕があなたに自分の話をする気になったのは、サランさんが僕に自分のことを話してくれたからなわけで。そういった意味で、サランさんはちゃんと人を見て話してくれたのだと信じますよ」

 そう言いつつ、ずんだ餅さんはぽつりと話し始めた。

「……では、あまり聞きたくないかもしれませんが、僕の話をしましょう」
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