言霊付与術師は、VRMMOでほのぼのライフを送りたい

工藤 流優空

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閉じ込められた世界で

電話代わりのアイテムを作成するために

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「電話代わりになるものかぁ……」
「電話まで作れるんですか」

 ずんだ餅さんが聞き返してくる。

「作れないことはない……とは思います」

 私の言葉に、ずんだ餅さんが目を輝かせる。

「すごいですねっ! 何でも作れちゃうんじゃないですか」
「まぁ、条件つきではありますけどね……」

 そう言いつつ、あんまり条件というほどの条件もないよなぁと思う。あくまで作成回数の制限はあるけど、なんだかんだで自分が作りたいと思ったものが作れなかったことはないような気がする。

 しかし、今回の電話の代わりのアイテムは、作るのが難しそうではある。具体的に、どういったことができたら便利かまで考えながら作成しよう。

「まず、通話できる機能が必要ですね。他に、どんな機能があれば便利でしょう……」

 シュウさんが力になってくれようとしている。そして、必要なら電話してきてもいいと言ってくれている。こんなに心強いことはない。

 シュウさんだって、暇人じゃない。だから、シュウさんの貴重な時間を頂戴する以上は、こっちだってシュウさんにメリットのある情報なりなんなりを提供できる状態を整えなきゃ。

『シュウさんへ 心配して頂いて、本当にありがとうございます。おかげさまで、なんとか、この世界でもやっていけるような気がしてきました。早速なのですが、ボイスチャットができるような、電話代わりのアイテムを作成しようと思います。確認なのですが、本当に、迷惑ではありませんか……?』

 送信してから、思わず考え込んでしまう。送ったものの、シュウさんがやっぱり迷惑だからやめてくれって言ってきたらどうしよう、というマイナスの思考がぐるぐると頭の中をかけめぐる。

「ああ、送るんじゃなかった……かも」

 そう思わず漏れ出た言葉にまるで呼応するかのように、メールが来たことを告げる通知音が鳴る。

『迷惑などしてない。むしろ、こちらのせいで面倒なことに巻き込んでしまったのではないかと反省はしているが。……何にせよ、こちらが心配しているのは本心だ。安心してほしい。文面で伝えたところで、本心には聞こえないだろうが。協力できることは協力する、言いにくくなければ言ってくれ』

 本心には聞こえないだろう、そうシュウさんは言うけど。なんとなく文章の構成で本心なんだろうということは伝わってくる。

 頼って、いいんだと思う。

『ありがとうございます。それではまずは、電話代わりとなるアイテム作成に力を貸してください。シュウさんにとって、どんな情報が必要になってくるのか教えて頂ければ、それに応じた機能をつけた電話代わりのアイテムを作れるか試しみます』
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