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閉じ込められた世界で

パソコンは、できた

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「【ここではないどこかの文明技術】。それは、別の世界では当たり前に使用されている、文明の力によって生み出された機械。それは、人々に情報を一瞬にして得る力と、情報を発信する力を与えた。しかし、便利さは同時に人を怠惰にする。使いすぎには注意である」

 アイテムの説明欄に表示される文言を、『言霊・物語付与』のスキルで作り上げていく。

 文言を作り上げている間に、アイテムに変化が起きつつあることに気付いた。羊皮紙はそんなに変わった様子は見えない。だけど、木の板には少しずつ変化が。

 キーボードらしく、文字が浮かび上がってきた。たくさんのボタンを表している四角い記号の中に、アルファベットが記載されていく。

 その様子を、ずんだ餅さんは興味深げに見ていた。

「すごい! 見た目はアレですけど、キーボードっぽくなってきました」

 見た目がアレっていう言い方は気になるけど。そんなに安っぽく見えてるのかなぁ。確かに、ただの木の板に文字を書いてるだけだからなぁ……。

 でも今は見た目がどうこうと言っている場合じゃない。必要な行動ができればそれでいい。

「現実世界と同様に使用することが可能。SNSやメール、情報収集などに使うことができる。ただ、使いすぎには、くれぐれも注意せよ」

 そうしめくくり、パソコンもどきを見た。すると、羊皮紙と木の板がぶつかりあった。そして二つのアイテムが淡い光に包まれる。

 光が収まった時には、羊皮紙がぺらぺらな感じではなくなっていた。現実世界で言う厚紙のように、少ししっかりした材質のように見える。

 それが、木の板にぴったり貼りついている。持ち上げてみると、普通のパソコンより、軽い。モバイルパソコンなんて高度なものは、現実世界でも持ってなかった。

 これは、モバイルパソコンと同等かそれ以上の軽さだ。持ち歩きに便利。

「うん、いい感じ。これで調べ物を……」

 と言いかけて、あることに気付いた。『アレ』がない。

「しまった、パソコン作業なら、アレが必要だ……」

 『アレ』は、なくてもなんとか作業はできる。『アレ』なしでパソコンを使う人もいると思う。だけど私は、『アレ』がある方がいい。その方が効率よくパソコンを扱える。

 前に、『アレ』が電池切れで急に使えなくなって、パソコンについているもので代用したことがあった。だけど、不便だった。有線のものと無線のものがあるけど、有線は電池切れにならないけど、線が邪魔。無線は使いやすいけど、電池切れに注意しないといけないところがあるんだよね。

「今度はアレ、作らないと」
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