言霊付与術師は、VRMMOでほのぼのライフを送りたい

工藤 流優空

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ムトウさんを追って

異変

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 その時だった。頭の中が、ぐわんぐわんとかき回されるような感覚があった。私は思わず、片手で頭を抑える。……うん、触った感じは、何も変わったところはない。 
 
 目の前にいる、ずんだ餅さんも同様のようで、頭を押さえていた。だけど、私たち二人に飲み物を運んできてくれたカンナさんは、不思議そうに首をかしげている。

 それから数秒後、けたたましい警報音のような音が頭の中で反響した。

『緊急事態発生、緊急事態発生。Wonderland Fantasy Online内と現実世界とのリンクが解除されました。緊急事態発生、緊急事態発生……』

 機械的に繰り返される警告音。私は思わず、ずんだ餅さんと顔を見合わせた。

「こんな警報音、このゲーム内で聞いたことがないですね……」

 私が思わず言うと、ずんだ餅さんも頷いた。

「僕も、聞いたことがありません……」

 嫌な予感がする。ゲーム内と現実世界のリンクが解除された、そうアナウンスは繰り返していた。ゲームと現実世界のリンクが解除される、それって一体……。

 その時、警報音が一度止み、メールが来たことを告げる通知音が鳴り響いた。メールの件名は、たった一言。

『大丈夫か』

 なんだか、上京した娘を気遣うお父さんの文言みたいなこの文章。差出人なんて、見なくたって分かる。

『今、全社員に一斉メールが送付された。ゲーム世界と、現実世界をつなぐヘッドギアのアプリに、ウイルスが侵入したそうだ。そしてそのウイルスは現在、ゲーム世界にダイブしているプレイヤーをゲーム世界に閉じ込めているらしい』

 私はそのメール内容を見て、ようやく事の重要性を理解した。つまりは、私たちは、ゲームの世界に閉じ込められたということ。誰かがウイルスを排除しないと、私たちは、下手をすると永遠に、ゲームに閉じ込められたままになる。

 まさに、ゲームや小説ではよく目にしてきたこと。ただ、まさかそれが自分の人生の中で起きるなんて。

「どうしましたか」

 ずんだ餅さんが心配そうな顔をして私の顔をのぞきこんでくる。ずんだ餅さんもまだ、この警告アナウンスに関して、そこまで深刻にとらえてないかもしれない。

 とはいえ現状、この情報はナイトメアソフトウェアの社員しか知らない事実だ。まぁ、警告内容を突き詰めて考えれば、分かる範囲の情報だけど。

 初対面に変わりはないこのずんだ餅さんにも、私の知っている情報を伝えておくべきだろうか。それとも、隠しておくべき……?

 一瞬迷ったものの、私は大きく息を吸い込んで言った。

「……ずんだ餅さん。落ち着いて聞いてくださいね。……どうやら私たち、この世界に閉じ込められてしまったようです」
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