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ムトウさんを追って

シュウさんに再び連絡

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 シュウさんに早速メールしてみる。もう夜遅いから、返事は明日になるかもしれない。だけど、とりあえず公式メールに関してだけは確認しておかないと。

『シュウさん。夜分遅くに失礼いたします。サランです。もしかしてナイトメアソフトウェアの公式メールにログインできるアカウントのIDやパスワードって、ご存知ですか? もしご存知だとしたら、どのくらいの範囲でそのIDとパスワードが知れ渡っているのか、知っている範囲でご教授頂けないでしょうか。ムトウさんは元々、公式のIDとパスワードを知っていて、公式のメールアドレスを使ってメールを送っていた可能性があります』

 そういえば私も、仕事を辞めようとする前は、仕事のメールが夜中にも来ることが多かった。むしろ、夜中でもメールが来ることを見越して、いつも職場から支給されたスマートフォンを気にしながら持ち帰りの仕事やってたっけ。

 そんなことを考えていると、すぐに返信があった。

『IDとパスワードは知っている。ただ、知っている範囲に関しては、全社員というわけではないと思う。詳しくは明日仕事場で確認してくる。現時点で思うのはおそらく、WFOの制作に関わった人間やこれから関わる予定の人間に限定されているのではないか、ということだ』

 公式の問い合わせメールアドレスはいくつかに分かれていて、ゲームごとになっていた。多分、たくさんのゲームを発売しているナイトメアソフトウェアだから、一つのメールアドレスに集中したら、どれが重要でどれが重要でないかの判断がつかないし、対応が追い付かないからだと思う。

 そうなってくると確かに、WFOの開発に関わった人間やシュウさんのようにゲーム開発そのものには関わっていなくとも、ゲーム世界で活動をする人たちなんかにも、IDやパスワードが共有されていても不思議じゃない。

『承知しました。ではお手数ですが、一度ログインして受信ボックスおよびゴミ箱に、ログイン通知がないか見てもらってもよろしいですか』

 私はすぐに返事を書いて送信する。公式のメールアドレスのドメインは、仕事場でよく用いられる有名どころのアドレスだ。ここのメールは、いつもと違う端末でログインしようとすると、ログイン通知が受信ボックスに届く。

 ただ、メールアドレスなんかが表示されるわけじゃないから、役に立つかどうかは分からない。

『社員に支給されている端末は、PCとオレンジ社のタブレット端末だけだ。だが、オレンジ社のものでない端末でのログイン通知がゲーム発売日の日付で見つかった』

 返信は数分待たずに返ってきた。きっと公式のメールアドレスなんて、すごい量のメールが来ているだろうに、シュウさん、さすが仕事が早い。

『そうしましたら、送信メールの中に、ムトウさんが送ったと思われるメールが残っていたりしませんか。もし残っていたらそのメールの送り先を確認してみてください。BCCかCCで自分のメールアドレスにも送っているかもしれません』
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