上 下
210 / 304
作ってみよう!物語のアイテム

抜け道?

しおりを挟む
 シュウさんは、先頭に立った。そして何か考えるそぶりを見せる。

「どうしたんですか」
「いや……、この扉の出口に行くにはコツがあるんだ」

 なるほど、この扉に逃げ込んだからって、必ずしも男性から逃げきれたってわけじゃないんだろうね。

「失敗すると、先ほどの場所に戻されてしまう。一回きりの勝負になる」

 そう言うと、シュウさんは何やら呟き始めた。

「……確かこの辺にメモしておいたはずだが……」

 そして、私たちの方に向き直る。ほぼ同時に、シュウさんからチャットが飛んでくる。

「左に3歩、右に6歩、前に1歩」

 ……ん? これは一体何だろう……。

「……これが、出口に繋がる歩き方だ」
「いかにも抜け道って感じですね」

 昔、裏技でそんなことができるゲームがあったなぁと思い出す。ストーリーには直接関係ないんだけど、とある場所から一定の操作をすることで、本来はたどり着けない場所に出られるという裏技。

 その裏技で、本来通常では入手できないものが入手できたりするから、みんなこぞって挑戦したんだけど、失敗してそのままの状態でセーブすると、ゲームをリセットするしかなくなるっていう恐ろしい代物だった。まぁ、裏技でありチートに近い技だったんだろうから、当然といえば当然のペナルティだったのかもしれない。

 今回私たちがやってきたこの場所も、似たような感じなんだろう。

「ちなみに間違った手順を踏むと、さっきの場所に逆戻りだ」

 シュウさんの言葉に、私とアイダさんは固まる。さっきの場所に逆戻りってことは……。あの男性の待ち受ける場所に戻されちゃうってことだよね!?


 あの男性が既にあの場所からいなくなっていれば問題ないけど、そうじゃなかったら……。考えただけで寒気がする。


 私がブルッと身震いすると、シュウさんが静かな声で言う。

「……慰めにしかならないが。時間制限は、多分ない」

 いやいやいや!! 多分って!! もし制限時間があったらどうしたらいいの!!

「と、とにかく、ゆっくりやりましょう。それしかありません」

 ゆっくり、慎重に。こうなったら、やるしかない!!

「……何かあってはいけない。こちらは最後に手順を踏もう」

 シュウさんの言葉に頷く。もしアイダさんか私が失敗した場合は、一緒にもとの場所に戻ってくれるつもりなんだ。または、制限時間切れが来ちゃう場合を想定してか。

 私は、ごくりとつばを飲み込む。アイダさんをみた。アイダさんも静かに頷く。

 仕方ない。やろう!
 
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

こわぁい話

ホラー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:9

【完結】シュゼットのはなし

恋愛 / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:27

処理中です...