208 / 304
作ってみよう!物語のアイテム
脱出経路
しおりを挟む
ステータスの読み取りが完了したことを確認してから、シュウさんにチャットを送る。
『シュウさん、脱出経路を教えてください。脱出しましょう』
私のチャットにすぐ返信があった。
『……では、出口を開く。ちょっとだけ待ってくれ』
うん? 出口を開く? 出口って最初から開いてるわけじゃないのか。私は頭をひねる。
すると、視界の端でシュウさんが建物の扉を引っ張っているのが見えた。いやいやいや、この扉ってオブジェクトじゃないの?
ゲームによっては、ストーリー進行に関係のない建物の扉は開かないように設定されているものがある。これもそういうものだと思った。
でも、扉は開かない。やっぱりあれは、オブジェクトであって開くものじゃないんじゃ……。
私がそう思っていると、シュウさんは何かリズムを刻むように取っ手を何度か引っ張った。すると、さっきまでの出来事が嘘のように、扉がごく自然に開いた。
そして、扉の向こうはなんだか、渦を巻いた不思議な空間。
『行くぞ。この出口は30秒しかもたない』
それは早く言ってほしかったかな! 私とアイダさんは慌ててシュウさんの方へと走る。30秒以内にあそこまでたどり着かないと、私たち永遠にこの場所に閉じ込められたままになっちゃう!
がむしゃらに走って、扉の中へと飛び込んだ。私たちが飛び込んだあと、シュウさんは扉の前に立つ。
「おや、また君もついてきたのかい。……そしてなぜ、出口のことを知っている」
男性の言葉に、シュウさんがふっと笑う。
「……さあな。そちらとどこかで会ったような気がしていたが……。どこで会ったのか、やっと思い出せたよ」
シュウさんの言葉に、男性は怪訝そうな顔をする。
「何のためにこんなことをしているのか、聞く気はないが……。この辺でやめておいた方がいい。運営側は、そちらを本気で探し始めるぞ」
「構わないね。ぼくには、このゲームで手に入れた特別スキルがある」
男性が鼻を鳴らす。シュウさんは落ち着いた声で続ける。
「……特別スキルがあったところで、このゲームは、この世界はゲームを運営する会社が作り上げたものだ。特別スキルだって、運営が本気を出せば奪い返されるかもしれない」
「そんなことは、ぼくがさせない」
男性が勢い込んで言う。
「ここは、ぼくの居場所だ。この場所は絶対に奪わせない」
居場所。この人もまた、このゲームが私と同じように居場所になってるんだ。悪いことをしている人かもしれないけど、その考え方にだけは同意できる。
『シュウさん、脱出経路を教えてください。脱出しましょう』
私のチャットにすぐ返信があった。
『……では、出口を開く。ちょっとだけ待ってくれ』
うん? 出口を開く? 出口って最初から開いてるわけじゃないのか。私は頭をひねる。
すると、視界の端でシュウさんが建物の扉を引っ張っているのが見えた。いやいやいや、この扉ってオブジェクトじゃないの?
ゲームによっては、ストーリー進行に関係のない建物の扉は開かないように設定されているものがある。これもそういうものだと思った。
でも、扉は開かない。やっぱりあれは、オブジェクトであって開くものじゃないんじゃ……。
私がそう思っていると、シュウさんは何かリズムを刻むように取っ手を何度か引っ張った。すると、さっきまでの出来事が嘘のように、扉がごく自然に開いた。
そして、扉の向こうはなんだか、渦を巻いた不思議な空間。
『行くぞ。この出口は30秒しかもたない』
それは早く言ってほしかったかな! 私とアイダさんは慌ててシュウさんの方へと走る。30秒以内にあそこまでたどり着かないと、私たち永遠にこの場所に閉じ込められたままになっちゃう!
がむしゃらに走って、扉の中へと飛び込んだ。私たちが飛び込んだあと、シュウさんは扉の前に立つ。
「おや、また君もついてきたのかい。……そしてなぜ、出口のことを知っている」
男性の言葉に、シュウさんがふっと笑う。
「……さあな。そちらとどこかで会ったような気がしていたが……。どこで会ったのか、やっと思い出せたよ」
シュウさんの言葉に、男性は怪訝そうな顔をする。
「何のためにこんなことをしているのか、聞く気はないが……。この辺でやめておいた方がいい。運営側は、そちらを本気で探し始めるぞ」
「構わないね。ぼくには、このゲームで手に入れた特別スキルがある」
男性が鼻を鳴らす。シュウさんは落ち着いた声で続ける。
「……特別スキルがあったところで、このゲームは、この世界はゲームを運営する会社が作り上げたものだ。特別スキルだって、運営が本気を出せば奪い返されるかもしれない」
「そんなことは、ぼくがさせない」
男性が勢い込んで言う。
「ここは、ぼくの居場所だ。この場所は絶対に奪わせない」
居場所。この人もまた、このゲームが私と同じように居場所になってるんだ。悪いことをしている人かもしれないけど、その考え方にだけは同意できる。
20
お気に入りに追加
615
あなたにおすすめの小説
Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷
くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。
怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。
最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。
その要因は手に持つ箱。
ゲーム、Anotherfantasia
体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。
「このゲームがなんぼのもんよ!!!」
怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。
「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」
ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。
それは、翠の想像を上回った。
「これが………ゲーム………?」
現実離れした世界観。
でも、確かに感じるのは現実だった。
初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。
楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。
【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】
翠は、柔らかく笑うのだった。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO
無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。
名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。
小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。
特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。
姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。
ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。
スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。
そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる