言霊付与術師は、VRMMOでほのぼのライフを送りたい

工藤 流優空

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「そもそもこのゲームは、ぼくが作り出した世界だ。ぼくの世界なんだ」

 男性がむっとした表情で言う。この人、頭大丈夫かな。

「だから、この世界に存在している特別スキルを作り出したのも元々はぼく。そして、その持ち主もぼくであるべきだ」

 うん、会話できる相手じゃないのかも。私はそう思うことにした。

「最初はね、特別スキルを持ってしまった人たちをぼくが雇ってあげようと思ったんだ。だけど、誰も雇われてくれない。だから仕方なく全ての特別スキルをぼくの元へ戻させてもらうことにしたんだ」

 にっこりと笑っている男性。怖い。

「さてと。特別スキルを渡す気がないのなら、ぼくにも考えがあるよ」

 そう言いながら、男性はこちらに近づいてくる。

「ぼくの特別スキルは文字通り、他の特別スキルとはくらべものにならないほど、特別なんだ。君と、そして君の友達の特別スキル、どちらもありがたく頂戴するよ」

 私と、アイダさんを見て彼は言った。私の方へとさらに近づいたところで、私はアイダさんに向かって声を上げた。

「今です!」

 その瞬間、アイダさんの手が増えた。背中から別のおててが生えてくる感じ。その増えた手と、元々あった手でがっちりと男性を取り押さえる。

 男性は、一瞬何が起きたかよくわからないと言った顔をしていた。そして、私に向かって言う。

「おかしいな。君が、『手が増える特別スキル』を持った人間だろう。そして、そっちにいるのが、前にぼくから逃げのびた特別スキルの持ち主……」
「それはどうでしょう」

 私は鼻を鳴らす。これこそが、私とアイダさんの作戦。大鍋奉行さんに作ってもらったアイテムの効果。

 男性やシュウさんには、今私とアイダさんの姿はそれぞれ相手の姿に見えている状態。私がアイダさん、アイダさんが私の姿になっている状態。

 子どもの頃に読んだ児童向けファンタジー小説に出て来たアイテム。それは、
『自分の姿を、なりたい別人の姿に一定時間変えることができるアイテム』
だったんだ。

 万が一、アイダさんに危険が及んだら申し訳ない。そう思って私が考え出した苦肉の策。それが、お互いの姿を入れ替えることだった。そうすることで少なくとも最初は、相手の目を欺けると思ったんだよね。

 とりあえず、相手を拘束することを目標としていた私たち。チャンスが来たらアイダさんの手で相手を拘束してもらう作戦だった。ここまでは順調。

 だけど、私とアイダさんの姿が入れ替わっているんだってことはおそらくもう、ばれてしまうと思う。ここからが大変だ。
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