192 / 304
リアルでの活動開始
アイダさんの話を聞くその2
しおりを挟む
「私の特別スキルは、『望めば手が増える』能力です」
「手が増える……?」
「増える……」
アイダさんの言葉に、私とシュウさんは思わず顔を見合わせた。手が増える……。手が伸びる能力を持ってるキャラクターなら数人知ってる。手が増えるキャラクターは、目の錯覚でそう見える技を使えるキャラクターは知ってるけど、本当に手が増える能力は、見たことがないかもしれない。
「ええ、手が増えるんです。そのおかげで、色んなことができるようになりました。最初は子どもに、気持ち悪いって言われましたけどね……」
苦笑いを浮かべながら言うアイダさん。
「サランさんたちが気になっている男性の方から連絡があったのは、数日前です。ゲーム内のメールに連絡が来たんです」
「どういった内容だったんでしょう」
「あなたに与えられた能力は、運営側が間違えて与えた能力なので返してほしいと」
「間違えて与えた能力……」
私に送られてきたメールには、そういったことは書かれていなかったな、と私はふと考える。
「そう言われて、ああそうか、と思いました。そうか、間違えて与えられた能力、そうだよね、と」
アイダさんは少しだけ俯く。
「私はこれといって特別なスキルを与えられるほど、特筆すべき特技も何もありません。あのゲームは、現実世界の自分自身とリンクしていることが多いゲームですから、そんなゲームで何の取り柄もない私に特別なスキルが与えられるのはおかしい、そう思ったんです」
「それは、違います」
気づいたら私はそう切り出していた。
「誰にだって、得意不得意があります。そして、誰よりも優れているかどうかは別として、人より優れた分野が一つは存在していると私は考えています。今までは私も、そうは思えませんでした。でもこのゲームに出会えて変わったんです」
「私も特別スキルを持っています。私の場合は、『言霊・物語付与』のスキルです。それは、現実の私自身とリンクしたスキルでした。アイダさんに与えられたスキルも、現実世界でのアイダさんにリンクしたスキルだったんじゃないですか」
私が言うと、アイダさんは何やら思い当たる節があったようで、はっとした表情を浮かべた。
「そう、そうです。……確かに必要な時だけ急激に集中力があがって、〆切前だけすさまじい勢いで仕事をこなせる。それは、私の長所でした」
それを聞いて、私は確信した。
「それは、運営が間違ってアイダさんに与えた能力などではありません。最初から、アイダさんのために、ゲームが与えた能力だったんです」
「手が増える……?」
「増える……」
アイダさんの言葉に、私とシュウさんは思わず顔を見合わせた。手が増える……。手が伸びる能力を持ってるキャラクターなら数人知ってる。手が増えるキャラクターは、目の錯覚でそう見える技を使えるキャラクターは知ってるけど、本当に手が増える能力は、見たことがないかもしれない。
「ええ、手が増えるんです。そのおかげで、色んなことができるようになりました。最初は子どもに、気持ち悪いって言われましたけどね……」
苦笑いを浮かべながら言うアイダさん。
「サランさんたちが気になっている男性の方から連絡があったのは、数日前です。ゲーム内のメールに連絡が来たんです」
「どういった内容だったんでしょう」
「あなたに与えられた能力は、運営側が間違えて与えた能力なので返してほしいと」
「間違えて与えた能力……」
私に送られてきたメールには、そういったことは書かれていなかったな、と私はふと考える。
「そう言われて、ああそうか、と思いました。そうか、間違えて与えられた能力、そうだよね、と」
アイダさんは少しだけ俯く。
「私はこれといって特別なスキルを与えられるほど、特筆すべき特技も何もありません。あのゲームは、現実世界の自分自身とリンクしていることが多いゲームですから、そんなゲームで何の取り柄もない私に特別なスキルが与えられるのはおかしい、そう思ったんです」
「それは、違います」
気づいたら私はそう切り出していた。
「誰にだって、得意不得意があります。そして、誰よりも優れているかどうかは別として、人より優れた分野が一つは存在していると私は考えています。今までは私も、そうは思えませんでした。でもこのゲームに出会えて変わったんです」
「私も特別スキルを持っています。私の場合は、『言霊・物語付与』のスキルです。それは、現実の私自身とリンクしたスキルでした。アイダさんに与えられたスキルも、現実世界でのアイダさんにリンクしたスキルだったんじゃないですか」
私が言うと、アイダさんは何やら思い当たる節があったようで、はっとした表情を浮かべた。
「そう、そうです。……確かに必要な時だけ急激に集中力があがって、〆切前だけすさまじい勢いで仕事をこなせる。それは、私の長所でした」
それを聞いて、私は確信した。
「それは、運営が間違ってアイダさんに与えた能力などではありません。最初から、アイダさんのために、ゲームが与えた能力だったんです」
20
お気に入りに追加
615
あなたにおすすめの小説

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
バグった俺と、依存的な引きこもり少女。 ~幼馴染は俺以外のセカイを知りたがらない~
山須ぶじん
SF
異性に関心はありながらも初恋がまだという高校二年生の少年、赤土正人(あかつちまさと)。
彼は毎日放課後に、一つ年下の引きこもりな幼馴染、伊武翠華(いぶすいか)という名の少女の家に通っていた。毎日訪れた正人のニオイを、密着し顔を埋めてくんくん嗅ぐという変わったクセのある女の子である。
そんな彼女は中学時代イジメを受けて引きこもりになり、さらには両親にも見捨てられて、今や正人だけが世界のすべて。彼に見捨てられないためなら、「なんでもする」と言ってしまうほどだった。
ある日、正人は来栖(くるす)という名のクラスメイトの女子に、愛の告白をされる。しかし告白するだけして彼女は逃げるように去ってしまい、正人は仕方なく返事を明日にしようと思うのだった。
だが翌日――。来栖は姿を消してしまう。しかも誰も彼女のことを覚えていないのだ。
それはまるで、最初から存在しなかったかのように――。
※第18回講談社ラノベ文庫新人賞の第2次選考通過、最終選考落選作品。
※『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しています。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生した元日本人ノエルは、父の急死によりエトワール伯爵家を継承することになった。
亡くなった父はギャンブルに熱中し莫大な借金をしていた。
さらに借金を国王に咎められ、『王国貴族の恥!』と南方の辺境へ追放されてしまう。
南方は魔物も多く、非常に住みにくい土地だった。
ある日、猫獣人の騎士現れる。ノエルが女神様から与えられた生産スキル『マルチクラフト』が覚醒し、ノエルは次々と異世界にない商品を生産し、領地経営が軌道に乗る。

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。
どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる