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特別スキルレベルアップ後その1
職場へ戻る
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私と月島部長は、とことこと歩いて会社へと戻る。月島部長の職場であり、将来私の職場にもなる予定の、ナイトメアソフトウェアのあるビルへ。
「こちらが、えすえぬえす、を使えるようになるのは、仕事上必要なことだ。だから、休憩時間としてではなく、勤務時間で消化しよう」
そう、月島部長が言うので私はそれに従ってビルへとついてきたんだ。どちらにせよ、田尻課長から書類をもらう必要があるし。
戻ると、私にお茶を出してくれた受付嬢さんに、月島部長が声をかける。
「……すまないが、お茶の用意を頼む」
「はい。あ、あと田尻課長からこちらを預かってます」
受付嬢さんは月島部長に茶封筒を渡す。小首をかしげた彼に、受付嬢さんは続ける。
「おそらく、朝宮さんにお渡しする書類かと思います」
「田尻課長は」
「休憩に入られました。当分、帰ってきませんね」
受付嬢さんは、肩をすくめる。
「……つまり、細々した手続きを、こちらに任せる気だな」
「そういうことになりますね」
くすっと笑う受付嬢さん。月島部長が幸せが逃げてしまいそうな、大きな大きなため息をついた。
「……まぁいい。こちらは、朝宮さんに職場を案内がてら、少し仕事を手伝ってもらうつもりだ」
「承知しました。では、田尻課長がお戻りになりましたらお知らせします」
「頼む」
月島部長は歩き出す。私は受付嬢さんに会釈をして通り過ぎる。
「……田尻は、自由気ままなヤツだ。振り回されるのも、覚悟しておいた方がいい」
「分かりました」
そして、最初に田尻課長と面接らしきものをしたカフェテーブルへと戻ってきた。月島部長に促され、私は椅子に腰を下ろす。
「それでは、改めて。……SNSの、何をお教えしたらよろしいんでしょう」
私が声をかけると、月島部長は難しい顔をした。
「……何を、と言われると……」
すると、後ろから声がかかる。
「何もかもですよ。アプリの入れ方から、DMの送り方やコメントの仕方など、すべてでしょうか。……結構な時間がかかると思った方がよろしいかと」
振り向くと、先ほどの受付嬢さんがお茶を載せたお盆を持って立っていた。
「月島部長は、ゲームでの働きはすごいですが、SNSに関しては全くと言ってよいほど無知です」
「承知しました。それでは、アプリの入れ方からやってみましょう」
私は、月島部長のタブレットを向かい側から覗き込む。
「……本気で最初から教える気ですか?」
受付嬢さんが驚いた顔をする。私は、間髪入れずに頷く。すると、徐々に受付嬢さんの表情が嬉しそうな顔に変化した。
「月島部長のこと、よろしくお願いしますね。必要なときは、頼りになる人だし、恩は倍以上にして返すと思いますのでっ」
そう言うと、受付嬢さんはスキップをしながら自分の席へと戻って行った。
「こちらが、えすえぬえす、を使えるようになるのは、仕事上必要なことだ。だから、休憩時間としてではなく、勤務時間で消化しよう」
そう、月島部長が言うので私はそれに従ってビルへとついてきたんだ。どちらにせよ、田尻課長から書類をもらう必要があるし。
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「はい。あ、あと田尻課長からこちらを預かってます」
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「おそらく、朝宮さんにお渡しする書類かと思います」
「田尻課長は」
「休憩に入られました。当分、帰ってきませんね」
受付嬢さんは、肩をすくめる。
「……つまり、細々した手続きを、こちらに任せる気だな」
「そういうことになりますね」
くすっと笑う受付嬢さん。月島部長が幸せが逃げてしまいそうな、大きな大きなため息をついた。
「……まぁいい。こちらは、朝宮さんに職場を案内がてら、少し仕事を手伝ってもらうつもりだ」
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「頼む」
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そして、最初に田尻課長と面接らしきものをしたカフェテーブルへと戻ってきた。月島部長に促され、私は椅子に腰を下ろす。
「それでは、改めて。……SNSの、何をお教えしたらよろしいんでしょう」
私が声をかけると、月島部長は難しい顔をした。
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「月島部長のこと、よろしくお願いしますね。必要なときは、頼りになる人だし、恩は倍以上にして返すと思いますのでっ」
そう言うと、受付嬢さんはスキップをしながら自分の席へと戻って行った。
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