言霊付与術師は、VRMMOでほのぼのライフを送りたい

工藤 流優空

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特別スキルレベルアップ編その2

アイテムを使って

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 私がまず引っ張り出したのは、二つのアイテム。『魅惑の毒スプレー』と、『ネムネムバクダン』。前にシュウさんと平原を探索したときにアイデアを得て作ったアイテムだね。

 どんどん迫ってくる黒い物体。私は、その方向に向かって、スプレーを噴射してみようとする! 効果は試したことないけど、きっと大丈夫!

 でも、なぜかスプレーが噴射できない。まるで、何かスプレーのスイッチに挟まっているかのように、押せない。なんで!?

 ポップアップ画面が立ち上がって私ははっとする。

『このアイテムは、ボスモンスターとの戦闘では使用できません』

「シュウさん、このモンスター、ここのボスです!」
「……となると、やはり一度、あの何もない部屋に入ってスイッチを押すのがルートだったということだな」

 シュウさんの声が返ってくる。

「のんびり言ってる場合ですか!? ボス級モンスターに進路ふさがれてるんですよっ!?」

 遠くから、フリントさんの声が聞こえてくる。元気だなぁ。

「ボス級モンスターにも使用できるアイテムもありますから! 任せてください!」

 私はそう言って、今度は『ネムネムバクダン』を取り出す。これも、シュウさんと平原に行った時に作ったアイテムだけど、スキルを使い切れないときなどに作り足しておいた。カンナさんのお店にも、バクダンの実は置いてたからね。今度からはちゃんと最安値のお店で仕入れて作りたいところだけど。

「これでもくらえっ」

 私は、黒い物体に『ネムネムバクダン』を投げつける。すると、ほどなくしてすっごい音がした。ちょうど、大きな物体が床に倒れた時のような。

「……どうやら、動きを封じたようだな」

 シュウさんの声を近くに感じた。彼は立ち止まって、物体がいた方向を見ている。

「おそらく、モンスターごとに拘束時間は違うと思います。ボス級モンスターなら、おそらくそう長くは動きを封じられないと思います」
「……だろうな。逃げ回りながら、多少の準備はできた」

 私とシュウさんは、物体の方へと急いで走り寄る。後ろから、フジヤさんとフリントさんもやってくる。

 黒い物体の正体は、武者の格好をした大きなネズミだった。今は気持ちよさそうに寝息を立てている。うん、この状態ならかわいいんだけどな。

「おー、ネズミ将軍ってところですかね」

 私が感心して言うと、フリントさんはその脇を通りすぎながら嫌そうに言った。

「ぐずぐずしてると、すぐ動き始めますよ」

 私たちは、ネズミ将軍の隣を通り過ぎて、ネズミ将軍が走ってきた方向へと向かった。多分、ネズミ将軍が最初にいた場所に、ダンジョンの出口か、宝箱とか、何かがあるはずだ。

 シュウさんは、通り過ぎるときに、床に触れた。きっと何か罠か何かの準備をしてくれてたんだと思う。
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