言霊付与術師は、VRMMOでほのぼのライフを送りたい

工藤 流優空

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特別スキルレベルアップ編その1

どちらにしよう。

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 とりあえず、冒険者以外のジョブに就かないと。エンチャンターかヒーラーかぁ。

「初期ジョブは、基本的にお客様の現実世界での性質等を加味して決まっています」

 突然、さっきまで対応してくれていた男性とは別の声が聞こえてきて、私は用紙から顔を上げた。明らかに、性別まで変わっていた。

 顔を上げて目に入ったのはさっき、クレーマー男性を撃退した自称責任者と名乗った少女だった。

 彼女は私ににっこり笑いかけて言う。

「ですから、お客様に関してはどなたかと一緒に行動することで、初めて本領を発揮できる、そんな性質をお持ちという事になりますね」

 そう言われて、私は少しがっかりする。やっぱり私、一人では何にもできないんだ。

 私が落ち込んでいるように見えたのだろう、少女は少しだけ不思議そうな顔をする。

「どうして、そんなに落ち込んでしまわれるのです」
「だってそれって、一人では何もできないってことの裏返しじゃないですか」

 私の言葉に、少女は少しだけ考えるそぶりを見せた。それからぽんと手を打つ。

「なるほど。お客様は、自分に自信がないのですね」

 今の私の感情に効果音をつけるとするなら。まさしく、『ガーン』という音がふさわしいと思う。

「自信がなくていらっしゃるから、自分が今なれるジョブに不満をお持ちでいらっしゃる」

「まあ、間違ってはいないです」

 私が渋々肯定すると、彼女は私の顔を覗き込んできて言った。

「けれど、これだけは言えますね。誰しも、一人では生きていけないのだと。あなたは、人を援助する方に特化しているだけであって、それは悪いことではありません」

「でも、一人では戦えないんですよ」

 私の声に不満が混じっていたのだろう、少女はくすっと笑う。

「忘れてはいけません。これはゲームです。本気の命の取り合いではありません。ですから、人と協力して戦うことは難しいことではないはずですよ」

 そう言われてはっとする。そうだ、これはゲームだ。ゲーム内で死んだとしてもいくらかの財産を失う程度で済む。もちろん、現実とゲームの世界が密接な関わりがあって、ゲーム内の死が現実での死と結びつくゲームの話を聞いたことはある。

 でも、このゲームは多分、そうじゃない。もちろん、ちゃんと確かめたわけじゃないから、確実なことは言えないけど。でももしそうならとっくにニュースになってるし、ゲーム自体の破壊や回収が話題になるはず。

「あなたは、人をサポートするのが得意。であれば、サポートされるほど強くなるような人と仲良くなればいいだけの話じゃないですか。適材適所というヤツです」

 少女の言葉に、私は自然と頷いていた。

「申し遅れました、わたくし、このジョブ申請所の責任者を務めております、ココアと申します。今後とも、何卒よろしくお願いします」

 少女……――、ココアさんは私にとびっきりの笑顔を向けた。

「みたところ、お客様はすでにサポートすべき人を見つけていらっしゃる様子。でしたら、その人をサポートするのには、どちらのジョブが役立ちそうかという基準で選んでみてはいかがでしょうか。後からジョブはいつでも変更できますから、直感で選んで頂いても問題ありません」

 そう言われて、私の決意は固まった。幅広く扱えそうなエンチャンター。これを一度、試してみよう。
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